Monday, July 31




東急電鉄が開催している「のるるん装飾グランプリ」は今日が投票期日。どの参加駅も趣向を凝らして苦労のあとがしのばれるものも多く、すべての駅に投票したいのはやまやまだけど…、今回わたしがいちばん気に入ったのはのるるんが冷やし中華をふるまっている「ひやしのるるんはじめました」だった。中華料理のコック帽をかぶっているのだが、似合ってる。あとはやはりレゲエミュージシャンに分した菊名駅ののるるんがユニークでとてもよかった、田園調布駅の流し素麺も力作だった。次回も楽しみにしています。

『失われた時を求めて 7 ゲルマントのほう III』(プルースト、吉川一義/訳、岩波文庫)読了。

Thursday, August 3

8月が始まった。この酷暑のピークは、あと半月くらいでなんとかおさまってくれないだろうか。

『対談 日本の文学 素顔の文豪たち』(中央公論新社/編、中公文庫)を読み終える。1960〜70年代に中央公論新社から刊行された全集『日本の文学』の月報対談を再編集したもので、YouTube『哲学の劇場』の注目の新刊コーナーで吉川浩満が取り上げていて興味を惹かれた。対談の中身は、まあこう言ってはなんだがわりと与太話である(褒めてる!「反戦文学の屈折」や「戦後文学を語る」などはとても勉強になった)。そして巻末に編集委員会の様子を写した写真が収められているのだけど、そのメンバーが大岡昇平、高見順、谷崎潤一郎、ドナルド・キーン、伊藤整、川端康成、三島由紀夫。ザ・豪華。

夏目漱石の思い出を語る対談が可笑しくて、けっこう笑ってしまった。漱石はネタにしやすいということか? 関係者の物言いが可笑しいだけ? 夏目伸六(漱石の次男)と中野好夫との対談では

夏目「ぼく、つくづく思うんですが、うちの娘の勉強みてて、つい怒ったりするでしょう、それがもう親父そっくりにどなってるんだな。」
中野「あなたがお父さんからフランス語習ってた時みたいに……。あれ、自分から教えるって言ったらしいね。」
夏目「ええ。それでね、やっぱり変なところが似るもんですね。ぼくが五十になって、親父と同じところへ、肩へね、神経痛かリューマチが出ましてね。」
中野「似てきますな。ぼくらも親父に似てきますからね。」
夏目「まあ、胃だけ似なかったからよかったと思っていますが(笑)。これで胃なんぞ似たらあいませんよ。」
中野「それは似ないほうがいいでしょう(笑)。」
(p.90-91)

笑ってる場合でもないと思うが思わず苦笑してしまう。内田百閒と高橋義孝の対談もくだらなくて可笑しい。

高橋「ところで、本日は漱石先生のお話をひとつ。ずいぶん陳腐な言いぐさで申しわけないんでございますけれども、先生、今までずいぶんお書きになりましたでしょう、漱石先生のことは。」
内田「たくさん書いてありますね。」
高橋「お書きもらしみたいな、もらすというと何かもらすみたいですけど……。」
内田「もらさなくたっていいですよ。」
(p.110-111)

高橋「この間、夏目純一さんにちょっとお目にかかりましたけど、漱石先生という方の背丈はだいたいあんなものですか。」
内田「まあ、あんなものでしょうね。」
高橋「それでは、わりに小柄な方ですね。」
内田「純一さんは、漱石先生そっくりですよ。次男の伸六さんの方は少し大きいですね。」
高橋「顔の大きさなんかも。」
内田「大きさはちょっとわからないけど、純一さんは、表情や味がほんとにそっくりですよ。」
高橋「先生、何かに漱石先生の鼻は少しどっちかへ曲っていたとか書かれておられましたが。」
内田「確かこっちでしたね(鼻をつまんで左にひねる)。」
高橋「左曲り。」
内田「確かね。……ところで、いったいこういう話ばかりでいいんですか。」
(p.116-117)