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Saturday, February 14

J-WAVEが男性から女性に花を贈る「フラワーバレンタイン」を喧伝しているのを聴いてなんだその酔狂な企画はと思っていたら、渋谷で花束を抱えた男性が鏡を見つめながら身だしなみを整えている姿に遭遇した。まさかのリアル・フラワーバレンタイン。フラワーバレンタインの実践者が現実に存在する事態に感嘆しながら、もしかしたらあの人はJ-WAVE関係者かもしれない、と思う。よく顔を確認しなかったけれど別所哲也かもしれない [1]

松濤美術館で「ロベール・クートラス展 夜を包む色彩」を鑑賞。タロットカードのサイズに切り抜いたボール紙に彩色した作品の数々が、見れば見るほどiPhoneケースに見えてしょうがない。鑑賞中、ずっとiPhoneケースのことばかりを考えていた。松濤美術館の二階の展示室にある、重役会議室にでもありそうなふかぶかとしたソファに腰を下ろし、机に置かれたロベール・クートラス関連の文献をぱらぱらとめくる。

美術館を出て、すれ違う人が全員富裕層に見えることでおなじみの高級住宅地にある松濤MARで昼食。コストパフォーマンのよい店だった。食事をしたあとは、雑事というか所用というか。

Sunday, February 15

雑事といえば雑事といえなくもない所用のおかげで日々の暮らしが大変忙しない状況になっているのだが、いまここで「雑事」の意味を辞書に訊ねてみたならば「本来の仕事以外のいろいろな用事」との記載があり、それは確かにそのとおりだと思いつつ、しかしながら辞書にはつづけて「取るに足らない雑多な事柄」とあるのは、いま忙殺されている出来事の説明としては適切とはいいがたく、取るに足らないどころかこれからの人生において喫緊の課題であることは疑いのない事柄で、となると、現在進行形ではまっている事柄を「雑事」と呼ぶのはあまりふさわしくないと考えなおしもするのだけれど、ここでいっている「雑事」が一体何なのかを明らかにせずに、そして明らかにする気も毛頭ないなかで、読み手側はどこまでも煮え切らないこの文章にさぞ苛立ちがつのっていることだろうと想像でき、書いているこちら側はもはや句点を打つことなくどこまで無内容なことを綴れるかだけに注力しているふしもあり、つまるところ、知的な内容を有するいいたいことなどとりたてて存在しない状況のなかで、何かいいたいことがあるとすれば、わたしはいま忙しいのである。忙しいと高らかに宣言する人間ほど疑わしいものはないことを承知のうえで、疑わしい人間として忙しさを強調する。忙しいのだわたしは。

それはそうと、今週読んだ本は以下のとおり。
・篠田雄次郎『テンプル騎士団』(講談社学術文庫)
・山川偉也『古代ギリシアの思想』(講談社学術文庫)
・ジョナサン・スウィフト『召使心得』(原田範行/訳、平凡社ライブラリー)
・フリオ・コルタサル『八面体』(寺尾隆吉/訳、水声社)
・野田又夫『デカルト』(岩波新書)
・金子遊『辺境のフォークロア ポスト・コロニアル時代の自然の思考』(河出書房新社)

  1. Flower Valentine with J-WAVE 81.3FM []