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Tuesday, January 7

日本のお正月を愛しているわけではないし、季節の行事に一生懸命取り組む方でも決してないのだけれど、おせち料理とお雑煮に加えて七草粥も毎年なんとなくやっている。これはなんとなく、やっておいたほうがいいな、と思いながらやっている。朝4時半に目が覚め、七草粥をつくって美味しく食べた。

Thursday, January 9

「Soul Searchin’ Radio」の吉岡正晴さんは、毎年初聴きはサム・クックと決めているそうだ。朝ごはんを食べながら録音したラジオを聴いていたら、そう言っていた。毎年聴き初めのアーティストを決めておくというのもいいな。迷わなくて済む。「迷う」ことは好きではない。忌み嫌っていさえする。なぜならじぶんが迷いまくる人間だから。いままでの人生でしたいちばん大きな決断では、一切迷わなかったのだけれど。

おせち用につくった黒豆の煮物とたつくりを、きょう、食べ切った。嬉しい! 昨年はつくり過ぎてだいぶ残してしまったのだ。昨年の半分の量だったとはいえ、嬉しい。達成感がある。

きょうは結局予報されていた雪は降らず。しかしとても風が強い。夕暮れ時、商店街を通ったら居酒屋の赤提灯がぶわんぶわんと大きく風に揺れていた。

Friday, January 10

Amazonからジャック=アンリ・ラルティーグの写真集『A Sporting Life』が届いた。封を開け、早速眺めてみると、なんという躍動感! 幸福感! 素晴らしい。ヴィヴィッドな運動のすべてがここにあるよと言いたくなった。夕方には『花椿』(資生堂)がポストに届く。晩ごはんには久しぶりにトマトとモッツァレラチーズのパスタをつくって赤ワインとともにいただき、食後、ジョナス・メカスDVDボックスから『リトアニアへの旅の追憶』を鑑賞。もちろん赤ワインを飲みながら。

Saturday, January 11

朝ごはん、バゲットと珈琲、あときのうのトマトパスタに使ったモッツァレラチーズが少し余っていたのでトマトとともにカプレーゼにして食べる。ヨーグルトを切らしていたことをわすれていた。

遅ればせながら竹橋の東京国立近代美術館で「ジョセフ・クーデルカ展」を観て、その後渋谷に出て、TSUTAYAへ。ついでに上階のWIRED CAFEでクラムチャウダープレートと珈琲をいただく。古書サンエーとFlying Booksをのぞき、数冊惹かれるものもあったけれど、買うには至らず。恵比寿に移動し、NADiffのG/P galleryで「港千尋 ATLAS 01:equus rising 絵馬の起源」、MEMで「児玉靖枝展 深韻 水の系譜」を観る。

ところでわたしが自慢できる数少ないことのうちのひとつに、晴れ女、というものがあって、少なくとも国内では“傘をさす回数が少ないランキング”の上位に入ることは間違いないと思っているため、傘とかレインブーツとかレインコートとか、雨対策グッズというものにお金をかける気にどうしてもなれなかった。さすがに傘は仕方なく買うとしても、雨や雪の日にしか出番のないブーツを買うなんて本当に気が進まない、ブランド調べて、お店に行って、品を選ぶのもまったく面倒なことだ、と思っていた。ここ数年、毎年のように豪雨や降雪があるため本当はブーツを買うべきなんだよなあ、ひとつあれば事足りて安心なんだし、と頭ではわかっているのだ、でも身体が動かなかった。でもついにギブアップというかなんというか、もういい年なんだしちゃんとしたレインブーツを買うか、と突然、一念発起しました、わたし。というわけで、恵比寿三越に入っているAIGLEにレインブーツを見に行った。なぜAIGLEかというと、レインブーツを買うにあたって候補となるブランドのうち知っているのがAIGLEしかなかったからだ。少し迷ったけれど、無事、足に合うブーツを購入。買ってよかったと思える日が来ることを願いつつ。

夜は、Rue Favartで田舎風パテ、ニース風サラダ、鴨のコンフィ、ピクルス、赤ワインの晩餐。ここに来るといつもいつも、初心にかえるよ。本当に。

Sunday, January 12

このところ毎晩ワインを飲み過ぎて、朝、怠い身体で起き出す。きょうもまた。

重い腰をあげていざ群馬県館林をめざす。あしたで終わってしまう、山口晃の展覧会に行くのだ。パンとおにぎりを買い込み、東武線特急に乗る。車体がレトロな雰囲気で好ましい。車内はとてもきれいで新しそうだった。乗り込んだ車輛の乗車率は4割ほどだろうか、皆おにぎりやお弁当を食べていて、長閑だ。

群馬県立館林美術館で「山口晃展 画業ほぼ総覧 お絵描きから現在まで」を鑑賞。すごい人出だ。チケットを購入し、会場入口でチケットを切ってもらうのを待つ。入口の壁にはタイトルが書かれ、その下に例の漫画タッチの本人と奥様の絵が描かれており、おっ、いいね、盛り上がってきたよ、と思っていたらその壁を見ていた年配女性2人が、「あら、この似顔絵可愛いわねえ」「ほんとね、誰が描いたのかしら、館長さんかしらね?」「そうかもしれないわね、可愛いじゃない」などと話していたのが聞こえてのけぞった。その館長さん、多芸過ぎやしませんか!

展覧会を十分に楽しんで帰京。群馬は遠いなあ……とぐずぐずしていたが、やはり来てよかった。帰りの電車ではすっかり眠くなりうとうと。帰りがけ、日暮里の古書ほうろうに立ち寄り、30分くらい店内をうろついて『キエシロフスキの世界』(和久本みさ子・訳)を買う。訳者の和久本みさ子さんが亡くなったときはショックだった。あれは2010年のことだったのか、そんな前のことという気がしない。

夜は近所のラーメン屋でノンアルコールで夕ごはんを済ませるも、結局家に着いてからビールを飲み、最近買った料理本『きょうのサラダ』(野口真紀)、『野菜の常備おかず』(本田明子)などを捲りながらお煎餅をかじる。本田明子さんという料理家は、知らなかったのだけれど、小林カツ代に師事したそうで、なるほど簡単、効率的かつ大胆ないいレシピがそろってる! と思った。

部屋の中を見渡せば、ビールの空き缶、ワインの空き瓶、ペリエの空き瓶が台所の片隅にたんまりと溜まっている。夏場よりも冬のほうが飲酒量が増える気がする。