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Monday, January 27

InterFMの細野晴臣「Daisy Holiday!」を聴いたら、細野さんも三日程体調を崩してノロの疑いありとのこと。

松田青子『スタッキング可能』(河出書房新社)を読む。登場人物たちは「会社」というものに濃淡あれどうんざりしつつ、同時に彼ら彼女らは「会社」というシステムに救われていたりもする。これは一種の「会社員小説」だと思うので、伊井直行『会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって』(講談社)を引きながら気の効いた感想のひとつでも書きたいところだが、いかんせん伊井直行の本をまだ読んでいない。

夜、ベーコンと玉ねぎとバジルとモッツァレッラチーズのトマトソースパスタ、ビール。

石田博『10種のぶどうでわかるワイン』(日本経済新聞出版社)を読みながら、ワインではなくビール缶の二本目をあける。

Tuesday, January 28

『会社員とは何者か?』をもっていないので、かわりに本棚にあった伊井直行の「会社員小説」である『さして重要でない一日』(講談社文庫)を読む。初出は「群像」1989年4月号だから、ここに登場する「会社員」は日本経済の泡が弾ける前の時代を生きている。

夜、鶏肉、小松菜、コーンをのせた海老だし醤油ラーメン、ビール。

Wednesday, January 29

本棚にある伊井直行の本から『星の見えない夜』(講談社)。主人公は出版社勤務のサラリーマン。

夜、白米、わかめと豆腐の味噌汁、焼き魚(かます)、キムチ、肉じゃが、ひじきの煮物、ビール。

Thursday, January 30

『図書』(岩波書店)と『一冊の本』(朝日新聞出版)が郵便受けに届く。

『一冊の本』掲載の鹿島茂「ドーダの文学史」で、冒頭つぎのような記述がある。

外国語の詩を、それもランボーのような超絶技巧を凝らした象徴詩を理解するには、当たり前だが相当な語学力を必要とする。小林秀雄はランボーの前にはボードレールを読んでいたというから読解力はかなりあったと思われるが、しかし、語学というのはいくら明敏な頭脳であっても「質より量」がものいう世界である。フランス語を旧制一高や東大仏文の教室で数年かじった程度の語学力で小林がランボーを完璧に理解しえたとは思えない。小林自身もそのことには自覚的であった。

鹿島茂のこの連載で延々とつづく小林秀雄批判はひとまず置いとくとして、語学は質より量がものいうのだと断言しているのが興味ぶかかった。語学(日本においては特に英語)の勉強法はどういったやり方が最短の道程であるかについて百家争鳴の様態を呈しているけれど、どういうやりかたでも多分それなりのところまでは辿り着くのだろうと思う。時間をかければ。それも膨大な時間をかければ。

夜、ほうれん草とベーコンとトマトのペペロンチーノ、赤ワイン。

Friday, January 31

早朝5時きっかりに起床して、バンホーテンのミルクココアを飲みながら『The Economist』誌を読む。勤勉な生活。

仕事帰りに白金高輪で降りて、Googleマップを頼りにしなければ辿り着ける気がしない場所にあったprint galleryで、スイスのバーゼルを拠点に活動するタイポグラファ・グラフィックデザイナー、ロマノ・ヘニの「Typo Picture Book and more …」を見る。キッチンペーパーに印刷した本がすごかった。

夜、レッドカレー、ビール。

Saturday, February 1

上野から特急フレッシュひたちで水戸へ。車内で読んでいたのはAli Smith『Artful』(Penguin Books)。「アリ・スミスは1962年スコットランド生まれで、現在はイギリスに暮らす。短編の名手として知られているが、最新作The Accidental(2004)がウィットブレッド賞を受賞したほか、ブッカー賞にもノミネートされるなど、長編でも高い評価を受けている」との説明は、木に恋をする物語「五月」が収められている岸本佐知子訳編の『変愛小説集』(講談社)からの抜粋。『Artful』は彼女のユニークな文学講義をまとめたもの。表紙をめくるとリディア・デイヴィスが推薦の言葉を寄せている。

生まれて初めて水戸駅に降り立ち、駅からバスに乗って水戸芸術館に到着。「ダレン・アーモンド 追考」を鑑賞する。移動費を捻出してはるばる水戸まで来た甲斐があった。ダレン・アーモンドについての書籍を読みたくてミュージアムショップでいろいろ物色していたら、『Darren Almond:Terminus』(Holzwarth Pubns)という本がおもしろそうで手にとる。ぱらぱらと読みながら、値段を確認してそっと元の場所に戻す。併設のレストラン「ヴェールブランシェ」で食事をしようと思ったら貸し切りだったので、京成百貨店に移動して「ねぼけ」という店でとんかつを食べる。ふたたび美術館に戻って、ダレン・アーモンド展の関連企画である、「再/生 映像が呼び覚ます第六感覚」と題された5人の日本人作家による映像作品を見た。志賀理江子の悪夢のような素晴らしい作品「CANARY」を見れてよかった。二回も見た。

水戸から特急フレッシュひたちで上野へ。上野から日暮里は近いだろうということで、日暮里で降り、古書信天翁に立ち寄る。稲川方人『反感装置』(思潮者)、Richard Roud『Godard』(Thames & Hudson)、Charles Chaplin『My Autobiography』(Penguin Books)、特集が「本と料理」の2005年の『クウネル』(マガジンハウス)、『メイド・イン・USA』のスクリーンプレイを買う。夕やけだんだんをくだり、大通りを歩いて往来堂書店まで移動し、新刊本を物色。山口晃『すゞしろ日記』『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店)を買う。今度は西日暮里方面まで逆行し、古書ほうろうで吉田健一『東京の昔』(中公文庫)と丸山眞男『忠誠と反逆』(ちくま学芸文庫)を買う。買いすぎた。

山手線に乗るための西日暮里までの帰り道、存在は知っていたけれどいままで訪れたことのなかったTALION GALLERYで石川卓磨「イーサン・ハントのフラッシュバック」を見てから帰宅。

Sunday, February 2

遠出で疲れたので、あんまり頭を使わずによさそうな昨日買った山口晃『すゞしろ日記』『すゞしろ日記 弐』(羽鳥書店)をのんびりと読む。なごむ。が、山口晃の本は字が小さくて情報量が多いので、眼精疲労に陥る。さらには『山口晃作品集』『山口晃が描く東京風景』(東京大学出版会)にも手をだして、むしろひどく疲れる読書をしている気がしてならない。

夕方、近所のカフェでカフェオレを飲みながらAli Smith『Artful』のつづき。

夜、バゲット、トマトとベビーリーフのサラダ、白菜の胡椒煮、しめじとエリンギのバター醤油ソテー、チュロス、赤ワイン。