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Monday, May 27

毎日毎日何かしらを買っていて、きょうもきょうとてコチュジャンを買った。そしてここ数日買いわすれている青梗菜をきょうもまたわすれた。塩ももう少しで切らしてしまいそうだし、リセッシュもそろそろなくなるなーと思っていたらあっという間にシュウシュウいうだけで出なくなってしまった。あっ、にんにくも使い切ってしまったのだった。毎日毎日何かしらを買っている。果てしなく消費し続けている。

この冬、室内で育てている観葉植物のシマトネリコの葉が悲しいくらいに落ちてしまって、春になっても復活の兆しがないのでこのところ毎朝ベランダに出して太陽の光を浴びせている(手引書には室内で得られる光で十分、と書いてあったのだけど)。そしたらだいぶ元気になってきて、葉が豊かになってきて、赤ちゃん葉っぱも成長してくれているようだ。よかった。

夜は、マッシュルーム入りチキンライス、卵とほうれん草のスープ、ビール。

『岩波ホールと〈映画の仲間〉』(高野悦子/著、岩波書店)を読み終える。思い入れの強い映画館はいろいろあるけど、やっぱり岩波ホールはその代表的存在というか、高校生くらいになってだんだん本気になって意識的に映画を観るようになり始めた頃、とりあえず岩波ホールでかかる映画は観ておかなければ、という掟のようなものがあった。最初に岩波ホールに観に行きたい! と思ったのはオタール・イオセリアーニの『田園詩』だった。このときのことは本当によく覚えている。1995年の公開当時、新聞の映画評に、佐藤忠男が

それぞれに無関係な村の日常の断片が、鶏の声、牛の歩み、牧草地のたたずまいとやわらかな日ざしといった、文字どおり田園詩的な悠揚として変わらぬおおらかな情景のなかにつつみ込まれている。
その風景もとくべつにきれいきれいというふうには撮らないし、出演者はほとんど素人らしく、気持ちいいほどそっけない。

と書き、

じつに当たり前のことを描いた変わった映画だなあ。

と結んでいるのを読んで、とても観たくなったのだった(昔からこういう映画が好きなのだ。映画評を細かく引けるのは手元に記事の切り抜きがあるからだ。何でもとっておくものだ)。まあこのとき『田園詩』を観ることは結局叶わず、最初に岩波ホールで観た映画は小栗康平の『眠る男』となった。今回の高野さんの本にはエキプ・ド・シネマ=映画の仲間、特に岩波ホールに関わったスタッフのことについてもかなり書かれていて、いいなと思った。もちろんアンジェイ・ワイダやトリュフォーなどのパーソナルで貴重なエピソードも、高野さんだからこそ書けるものだ。

Wednesday, May 29

本日午前11時、関東地方、梅雨入りとのこと。『美術手帖』(美術出版社)2013年3月号「特集 フランシス・ベーコン」を読む。

ところで現在、我が家にはあろうことか玉ねぎがないのだった。毎日毎日何かを買っているのに肝心の玉ねぎをわすれている。いちばん好きな野菜は玉ねぎなので、絶対に切らさないようにしているのに。この状況はあってはならない、ありえない。夜ごはんは、ごはん+わさび岩海苔、油揚げとミョウガの味噌汁、松坂牛のメンチカツとコロッケ、かぼちゃの煮物、ビール。食後、青梗菜と油揚げとにんじんの煮物をつくっておく。
ここ数日あまりよく寝られていないため、そこまでやってバタンQ、あっという間に夢の中。

Friday, May 31

梅雨の晴れ間。やっと洗濯ができてほっとする。湿度が低く、日陰で風が吹くと寒いくらいで、きょうみたいな日はピクニックによい。夕暮れ時、まだまだ明るい空、夕方の匂い、乾いた風を頬に受けるこの瞬間をなんと表現したらよいだろう。食料品の買い出しの前に空腹を満たすため、パスタ屋でズッキーニのトマトソースパスタを食べる。お酒は飲まず、お腹はいい具合に満たされて、買い忘れや買い過ぎなどしない、聡明な買い物ができそうである(そうか?)。夏野菜! と思ってオクラを買った。素麺や冷や麦や冷やし中華を早く食べたい。あ、冬瓜もそろそろ旬だ。

それはそうとあしたから6月なのだなあ。今年も6月25日がめぐってくるわけです。

Saturday, June 1

朝のラジオで原由子の「あじさいのうた」が流れてきて、大好きな歌だし原由子の曲がラジオで流れるのはわりとめずらしい気がするので嬉しい。朝ごはん、バゲット、スクランブルエッグ、グリーンリーフとミニトマトとコーンのサラダ、ソーセージ、ザワークラウト、ヨーグルト、珈琲。

新宿に出て、文化学園服飾博物館で「ヨーロピアン・モード 2013」展を鑑賞。18世紀ロココ時代から1970年代まで約200年のヨーロッパモードをその流行が生み出された背景とともに紹介する、という展覧会で、オードリー・ヘップバーンがローマの休日で着用したドレスやダイアナ妃が晩餐会などで着たドレスが公開されるのも見どころのひとつ。1920年代のファッションと世相を解説したパネルにはタマラ・ド・レンピッカの写真があった。あとフランス王ルイ14世とスペイン王女マリー・テレーズの婚礼祝賀用ナプキンなんてものも展示されていて驚いた。めちゃめちゃ貴重ではないか。「ヨーロピアン・ファッション 1715-1970」というブックレットが資料として役立ちそうだったので買った。400円で安い。

きのう新宿西口にブックオフがオープンしたという情報を得たので早速行ってみる。けっこうな人出。冨原眞弓『ムーミンのふたつの顔』、ドストエフスキー『白夜』など3冊ほど購入。『ムーミンのふたつの顔』の解説は梨木香歩。冨原さんも梨木さんも好きなので嬉しい。『白夜』は中学・高校生のとき、学校の図書館で、いちばんよく手に取った本のうちのひとつだ。角川文庫の、この妖しげで儚い女性の絵が気になって気になって。そういう雰囲気に弱い子どもだったなぁ。昨年ブレッソンの『白夜』が公開されたときに本当に久しぶりに読み返して、本当に本当に懐かしいと思った。

伊勢丹地下でサンドイッチとペリエを買って、新宿御苑でピクニック。この春にピクニックラグもピクニックバスケットも買い揃えたので、理想のピクニックに近づきつつあってすこぶるご満悦である。お腹を満たしたあとは、草上の読書。きょうはエリック・ホッファー『波止場日記』、中勘助『犬 他一編』、旦敬介『旅立つ理由』、岩波の『図書』6月号、朝日新聞出版の『一冊の本』6月号を持ってきた。寝そべって『波止場日記』をつらつら読む。風が強く吹いて肌寒くなってきたので撤収。帰宅してしばしぐったりと休憩し(野外に長時間いると疲労する)、近所のお気に入りの焼鳥屋で夕ごはん。最近イチオシのこのお店、たしか先週も来たような気がするけれど、このお店の奥さんは、初めて見たときにとても金井美恵子に似ている気がして、密かに「金井美恵子の焼鳥屋」と呼んでいたのだが、足しげく通っているうちにそれほど似てないんじゃないかという気がしてきた。

Sunday, June 2

朝から晴れている。夕べ焼鳥屋で見たテレビの天気予報ではきょうは曇りがちだか雨がちだかで、最低気温は17度とかすごく寒いように言っていたのにあまり寒くもない。少しだけ開けていた窓を全開にして台所仕事。久しぶりに切り干し大根とひじきとにんじんと大豆の煮物をつくったら非常に美味しかった。しばらく食べてなかったからなあ。逆にどんなに好きなものだって食べ続けていれば飽きる(カレーは別)。くるみパン、グリーンリーフと新玉ねぎとコーンのサラダ、ヨーグルト、珈琲で朝昼兼用ごはん。出かける頃になってもまだ晴れている。ははーんこれはわたしの自説が今年も証明されたということかな、梅雨入り宣言した途端晴れる……っていう。

渋谷に出て、Bunkamura ザ・ミュージアムで「アントニオ・ロペス展」。思っていたよりずっとずっと、ずーっとずーっとよかった。ビクトル・エリセの『マルメロの陽光』のイメージがあるからわたしにとっていちばんの目玉はマルメロの木の絵だったのだけど、そのほかの植物画や、室内画が非常に面白かった。室内画でロペスがやろうとしていることはとても難しい。図録を買ったので読んで勉強しなければ。あと素描というものの重要性を思い知った。会場で流れていたインタビュー映像を観ていたら、たしかロペスは「素描とはわずかな造形要素と出かける旅のようなものです」と言っていて、なんて素敵な言葉だろうと思った。

◎特に印象に残った作品:ギリシアの頭像と青いドレス/マリとアントニオ/マリアの肖像/マルメロの木/バラ/スミレ/ルシオのテラス/トイレと窓

カフェドゥマゴにて、ショートケーキと紅茶をいただいて休憩。吹き抜けの空間が気持ちよく、ケーキは美味しい。そのあと東急ハンズのキッチンコーナーで調理器具を物色。ついに(千切りキャベツもつくれる)スライサーを買った。グレーターならずっと愛用しているが(これで薄く細かくカットしたにんじんでつくるにんじんマリネは絶品)、実際、スライサー、どんなもんだろ。使ってみないとわからない。お鍋をいろいろ見ていたら新しいフライパンがほしくなってしまった。あと行平鍋も、親子丼をつくる片手鍋も。

帰り道、だいぶ気温が下がってきたらしく、風が冷たい。部屋の切花がみな枯れつつあるためいつもの花屋に寄って、ムーンワルツという名のダリアとラナンキュラスという名のバラを買う。帰宅して、ベーコン・新玉ねぎ・しめじ・ほうれん草をドバドバ投入したあさりのパスタ、白ワインで夕ごはん。白ワインを飲むのが久しぶりで嬉しくてハイペースで飲んだら酔っぱらってしまって、なんだかいろいろやることがあっただろうにアントニオ・ロペス展の図録をちろちろ眺めただけで寝てしまった。