Monday, August 6
フェンシング男子団体で金メダルを獲って喜んでいる夢を見たあと明け方起き出して、試合をインターネットのテキスト速報で観戦。フェンシングは今回いちばん気がかりな種目だったけれど、惜しくも銀メダル。残酷な夢だった。
そういえばルーマニアの女子柔道選手にカプリイオリウという選手がいて綴りを見るとCaprioriuで親近感をおぼえるなど。
『時の余白に』(芥川喜好/著、みすず書房) を読む。
Wednesday, August 8
『美しい夏』(チェーザレ・パヴェーゼ/著、河島英昭/訳、岩波文庫)を読む。やはり夏には夏の本を。
Thursday, August 9
朝起きたら金メダルが2つ増えていた。きょうはトーベ・ヤンソンの誕生日で、ムーミンの日ということになっている。ヤンソンの本を読もうと思ったけれど図書館の返却期限が迫っていた本があったのでやむなくそちらに差し替え。
昨年の8月はnaomi&goro&菊地成孔のアルバム「calendula」ばかり聴いていたことを今年の夏もまた「calendula」を聴きながら思い出す。
夜、テレビでは新体操の団体戦が放映されているらしく、観戦できないことが歯ぎしりするほど悔しかったためYouTubeにあがっている新体操の演技をイタリア語やスペイン語やロシア語の解説をBGMに観ることに。思い返せば子どもの頃、オリンピックでいちばん楽しみにしていた競技は新体操だった。新体操を観たあとは必ず、割り箸の先端にすずらんテープをつけて手具のリボン(帯状布)をじぶんで作り、くるくる振り回して踊った。ボール(球)は家にあったボウリングの玩具の球を、クラブ(こん棒)はボウリングのピンを用いた。ロープ(縄)は少しばかり地味だったので真似して踊るに至らず、フラフープを持っていなかったのでフープ(輪)もあきらめた。新体操の演技はあまりアクロバティックになり過ぎず、たとえば遠い位置から高々と、優美にリボンとフープを交換させるだけでも十分に楽しめる。アクロバティック至上主義に陥らないでほしい。
Friday, August 10
女子レスリング吉田選手が3大会連続金メダル、女子サッカーは銀メダル。
『フランス日記』(高山なおみ/著、アノニマ・スタジオ)を読む。アヌシーで入ったレストランのマダムがとても親切で、メニューをいちいち丁寧に説明してくれて、「トースト」のことまで「パンを焼いたもの」と教えてくれた、ってエピソードが好き。気取りのない、風通しのいい文章は読んでいて快いけれど、願わくば編集者のことは「編集さん」と呼ばず「編集者さん」と呼んでほしい。それにしても毎日たくさんのブログを読んでまわっていた数年前、高山なおみのサイトで「日々ごはん」を欠かさず読んでいた日々がひどく懐かしくなってしまった。「日々ごはん」また読み始めようと思う。
夜、オリンピックのライブストリーミングでテレビ放映されない種目の中継を見る。「オープンウォーター10km」というマラソンの水泳版ともいえる種目があることを知った。競技はロンドンの中心部にあるハイド・パークの池で行なわれているとのこと。へー! そんなところで。そういえば数日前に同じくストリーミングでカヌー・スプリントをちらっと見たけれど、選手たちの漕ぎっぷりはもちろんのこときらきら光る川面や両岸の緑も綺麗で、とても美しい競技の光景だと思った。
Saturday, August 11
朝、くるみパン、トマトサラダ、ブランデーケーキ、珈琲、オレンジジュース。
図書館で本を18冊借りる。本を入れたトートバッグが破けそうになる。
お昼に素麺、枝豆、ビールを食べたあと外苑前へ。トキ・アートスペースで「港千尋+岡部昌生 色は覚えている」、ワタリウム美術館で「歴史の天使 アイ・ラブ・アート12 写真展」、エスパス ルイ・ヴィトン東京で「ペッカ・ユルハ+ハンナレーナ・ヘイスカ+サミ・サンパッキラ AWAKENING」を観る。「AWAKENING」の出品アーティスト3人は1950〜70年代生まれのフィンランドのアーティスト。キュレーターを務めたラウラ・コーニッカは、エスパス ルイ・ヴィトン東京のすべての窓を黒布で覆い、「AWAKENING(目覚め、覚醒)」というテーマに収斂される作品群をブラックボックスのような空間に置くことを提案。この会場の魅力はつねに豊かな光に満たされた白い空間にあると考えていたけれど、当該作品に近づくとセンサーが働いて音楽が再生されるヘッドホンを装着しながらの鑑賞はこのたびの空間に適っていたように思う。
夜、zucca南青山店の上階、cow books隣りのCAFE Z.で厚切りポークサルサソース添え、サワークリームがのったフライドポテト、チェリービール。チェリービールはチェリー味のベルギービール、BELLE-VUE。このカフェは量が多いし本当に味が良くて大好きなカフェで、欧州サイズのフライドポテトの量に限りなく近い分量のポテトが日本で食べられるところだ。前に浅生ハルミン『三時のわたし』を読んでハルミンさんもこのカフェの常連だったと知った。
NHKのサイトにシンクロナイズドスイミングの団体決勝や新体操団体予選などの映像がアップされていたのでやっと演技を観ることができて嬉しかった。
Sunday, August 12
応援していた男子陸上400mリレーは5位。前回の北京オリンピックではこの種目で獲った銅メダルがいちばんぐっときた。実に80年ぶりだったし朝原選手や高平選手は昔からよく見ていたし、五輪期間の終盤で行なわれるからもうそろそろ総括ムード漂うなか最後に煌めいたメダルに感じられたので。 そして男子ボクシングミドル級では48年ぶりに金メダリストが誕生。朝4時5時にインターネットで試合結果をチェックする生活もこれで終わり。これはいままで何度も思ってきたことだし口にしてきたことだけれどオリンピックに興味がある人興味がない人、両者にたいした違いなどない。 ということを今回もまた思った。
朝食は夕べCAFE Z.でもりもり食べたので抜かす。昼、夏野菜とベーコンのパスタ、白ワイン。
『オリンピックと商業主義』(小川勝/著、集英社新書)を読む。近代オリンピックの始まりとなる1896年アテネ大会から大会ごとの経済状態を追い(夏季大会限定)、「近代オリンピックの商業化は1984年のロサンゼルス大会から始まった」と当たり前のように語られる通念の正否を考察。金銭の動きに併せ、IOCという組織や時代時代の商業面でのキーパーソンの功績もおおまかに理解することができて面白い。その一方でオリンピックにおける「アマチュアリズム」の概念についてもっとよく調べてみたいと感じた。続けて『ニッポン五輪メダルプロジェクト』(岡田忠/著、朝日新書)を気軽に手にとってさくさく読み始めるも、1932年のロサンゼルス五輪の馬術で金メダルを獲得し、「バロン(男爵)・ニシ」と呼ばれた西竹一男爵が、第二次世界大戦時、西の功績を称え幾度も投降勧告を呼びかけた米軍に応じることなく殉死したという史実や、近代スポーツの先駆者として結核を煩いながら1912年のストックホルム大会で監督として日本チームに尽力した大森兵蔵など、戦時下でのメダルにまつわる逸話にはページを捲る手をとめ何かを思わずにはいられない。
商店街に買いものに出ると空には秋らしい雲が帯状に流れていた。夜、カレーライス、ベイビーリーフとトマトと赤パプリカとコーンのサラダ、ビール。
夏休みは自宅でジブリ映画祭を開催。まず第一夜は『耳をすませば』(近藤喜文監督、1995年、日本)を上映。何をどうしたって語り尽くせない永遠の青春映画。夏が終わるまでにあと2回は観たいところだけれど……。
『夜と霧 <新版>』ヴィクトール・E・フランクル/著、池田香代子/訳、みすず書房) 、『現代詩文庫122 川田絢音詩集』(思潮社)など読んで就寝。