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Monday, January 14

外は大雪。ベランダから見える大樹の枝が降り積もる雪の重さに耐えきれずに鈍い音を響かせながら地面に落下した様子におののきつつ、家のなかに引き籠もって読書三昧の結果、『哲学の起源』(柄谷行人/著、岩波書店)を読了。柄谷行人がソクラテス以前の哲学について一冊本を書きあげる日が来るとは。とはいえ柄谷行人の仕事が「研究」ではなく「批評」であることにいままでと変わりはないので、柄谷的なロジックで初期ギリシア哲学をぐいぐいまとめてゆくさまは読む者に疑問と圧巻を同時に呼び起こす魅力的な書物になっている。それにしても相変わらず柄谷行人の本って脚注が謎で、なにゆえその本を注釈として採用したの? とインタロゲーションマークが頭のなかにいくつも並ぶのだが。雪の止む気配がないので外出は諦めて、つづけて『批評時空間』(佐々木敦/著、新潮社)を読む。

Thursday, January 17

仕事を定時でさくっと切り上げて、自宅に帰って早々に夕餉を済ませ、それからテオ・アンゲロプロスの映画を観るとして、しかし230分もある『旅芸人の記録』を平日の夜に見終えることは到底難しく、どうしたって二日にわけての鑑賞になってしまう。途中、22時間ほどのインターミッションを挟んだ。

Saturday, January 19

『ku:nel』(マガジンハウス)の特集が「よろず相談」と題していろんな人の持ち掛ける相談事に回答するというちょっと変化球な内容。しかし「牧野伊三夫さんってなにものですか?」という欄があるのだが、それ、相談じゃないだろう。

Sunday, January 20

Bunkamuraザ・ミュージアムで白隠展。白隠の禅画の横に添えてある解説パネルは複数の執筆者で書かれたもの。会場内のパネルには記名がないので誰がどの文章を書いたのかっていうのは明示されていないのだが、展覧会図録を確認するとちゃんと記名があって誰がどの文章を書いたのかがわかる。もっとも、たとえ無記名でも、山下裕二が書いたものがどれなのかはすぐにわかっちゃうんだけど。松濤のアルルで小休止してベルギービールを一杯飲み干してから、ユーロスペースの特集上映「甦る相米慎二|相米慎二監督全作品上映+α」で『雪の断章 -情熱-』を鑑賞。北大は受けるんだ!