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Monday, November 28

マイケル・オンダーチェ『映画もまた編集である ウォルター・マーチとの対話』(吉田俊太郎/訳、みすず書房)を読む。夕食、白米、小松菜の味噌汁、生姜と海苔の冷や奴、鰈の煮付け。

『コード・アンノウン』(ミヒャエル・ハネケ/監督、2000年、フランス/ドイツ/ルーマニア)を鑑賞。ミヒャエル・ハネケの撮るものは怖い。怖いのだが同時に、ちょっと鼻につく。鼻につく怖さ。それはハネケが問題を作成する側のポジションに立ち、鑑賞者は望んでもいないのに回答者の席に座らされているかのような構図(しかも最後まで問題作成者は「答え」を教えない)を強いられる映画だからだろうか。

Tuesday, November 29

『装苑』(文化出版局)。もう1月号の季節が到来という、あっという間の一年間。あけましておめでとうございます。夕食、タンメン(鶏肉、ピーマン、長葱、人参、生卵)。

夜10時すぎ、USTREAMで小沢健二が喋っている様子がパソコンのモニタに映し出され、ひさかたぶりに動いている小沢健二を見たのだけれど、それなりの年齢を重ねたはずの音楽家の相貌はあまり変わっていなかった。椅子の背もたれに片肘をもっていく癖も変わっていない。その後、部屋には小沢健二の歌声がiTunesを経由して流れ、ほんとうにこの人は声量がないなあと流行歌として方々で耳にしていたころとおなじ感想をもつのだけれど、しかしながら歌唱力がないということから歌に魅力がないと直線的に語るわけにはいかなくて、楽器の演奏だと下手なものはどうしようもない感じなのだが、歌声の場合は下手だからといって魅力がないとはかぎらず、そこが人間の声の感興をそそられるところだと思う。

Wednesday, November 30

読みさしの五十嵐太郎『現代日本建築家列伝 社会といかに関わってきたか』(河出ブックス)を読む。戦後活躍した著名な日本人建築家を紹介する本だが、バランスよく建築家の固有名が記憶に残るというより、最後の石上純也大プッシュに読後感をもっていかれるきらいあり。夕食、イエローカレー。

Thursday, December 1

管啓次郎『コロンブスの犬』(河出文庫)。港千尋の写真つきでデビュー作の文庫化。石川達三の綴る1930年代のサン・パウロの報告(『最近南米往来記』)にふれながら、サン・パウロという都市がまったく変わっていないこと書くのだが、そのくだりを読みながら、若書きのテンションは感じられつつも管啓次郎の筆致もまた変わっていないと思うのは、書物にぴったり肩を寄せながらもブッキッシュであることに抗おうとするアンビバレントな態度だとか。変わったのは「明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系教授」という管啓次郎にはまるで似つかわしくない肩書きがついたこと。

夕食、牛肉と茄子とパプリカとトマトのガーリックパスタ。『アメリカの影』(ジョン・カサヴェテス/監督、1958年、アメリカ)を鑑賞。

Friday, December 2

そのむかし講談社文芸文庫で高橋正雄の訳で読んで、あるいは数年前に池澤夏樹編集の「世界文学全集」(河出書房新社)で篠田一士の訳で読んで、そして今年藤平育子の訳で岩波文庫から上梓されたので、本日の読書はウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』。上巻。

夜、TBSラジオで「菊地成孔の粋な夜電波」。菊地成孔が真面目に交通情報を喋っているだけでどうしてこんなにおもしろいのだろう。

Saturday, December 3

雨。朝食、鮭のおにぎり、味噌汁、漬けもの。昼食、牛肉と小松菜とザーサイのチャーハン。注文したベルギービールが届く。佐野洋子が犬養道子の『ある歴史の娘』(中公文庫)について、

私は一頁読むごとに血が頭にのぼり本をたたみにたたきつけるのである。
「自慢すんな自慢」そして又いそいで本を拾っては読みたたきつけては読み、「自慢じゃない表現は出来んのか、自慢じゃない表現は。この様に貴重な歴史的立場に居た運命を自慢たらたらで表現しなかったら、これは大変なもんなんだぞ、その根性の悪さを誰も直してはくれんかったのか、もったいない」と私は叫ぶのである。(『がんばりません』新潮文庫)

と書いているという話を耳にし、ここで私は「本を拾っては読みたたきつけては読み」というくだりに反応して、蓮實重彦『表層批評宣言』(ちくま文庫)のあとがきにある、

嘘か本当かは知るよしもないし、たぶん嘘だとは思うが、この書物の中にその名前が少なからずひかれている現代日本のもっともすぐれた小説家は、目次に蓮實重彦の名前が印刷されているのを見ると、その雑誌を即座にくず籠に放りこんでしまうという。たぶんに誇張されたものであろうこの挿話は、しかし、かりにそれが徹底した虚構であったにしても、たまたま目次を目にした場所がくず籠から遠かったりした場合、その小説家が、書斎の空間を横切って雑誌を投げ飛ばすという、ピンチランナー目がけて牽制球を投げる投手のような仕草を想像させるという意味で、運動論的な感動を波及させてくれる。

という一節を思い出すのだった。

雨がやんだら食材と日用品の買いもの。花屋で大きなポインセチアを購入。室内が途端に12月モード。夕食、ベーコンと小松菜と蛤のパスタと赤ワイン。『カフカの「城」』(ミヒャエル・ハネケ/監督、1997年、オーストリア/ドイツ)を鑑賞。

Sunday, December 4

午前中、「モダン・アート,アメリカン  珠玉のフィリップス・コレクション」(国立新美術館)を鑑賞。デンマーク料理の店「Cafe Daisy」で昼食。「東京ミッドタウン」を漫歩。夕食、白米、葱の味噌汁、秋刀魚の塩焼き、大根おろし。「TSUTAYA」でもらった漫画レンタルタダ券を利用して、よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社)を。