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Monday, October 10

新宿御苑、昼も夜も。昼は秋晴れの心地よい芝生のうえでピクニック。プロジェ・ド・ランディなる夫婦ユニットの手による『東京ピクニッケ』という都内各地でのさまざまなピクニックのやりかたを紹介する本をめくりながら、ピクニックをおこなう。というピクニックをめぐる方法論に対してきわめて意識的なスタンスでのぞむ「メタピクニック」とでも呼ぶべき本日のピクニックと相成った。意想外だったのは『東京ピクニッケ』の版元が白夜書房だったことで、奥付をみれば「秋晴れの心地よい芝生のうえ」という状況があまり似つかわしくない末井昭の名前を確認できたりする。

いちど自宅に戻って夕餉。「京樽」の持ち帰り寿司。そしてふたたび新宿御苑。夜の御苑で「森の薪能」。狂言「越後聟」と能「石橋」を鑑賞。舞台の上の静謐と都心の自動車やヘリコプターの喧噪が交差する。

Tuesday, October 11

ところでプロジェ・ド・ランディについてインターネットで調べたら夫婦は去年離婚していた。きのうのピクニックで途中まで読んだ山内昌之『歴史家の羅針盤』(みすず書房)を読了し、夕食は「大日本帝国海軍横須賀鎮守府海軍カレー」。カレー最右翼。

就寝前、栃折久美子『製本工房から』(冬樹社)という70年代終わりに上梓された本を読んでいたら

装幀・造本で定評のあるところと言えば、誰でもすぐ二、三の出版社の名をあげることが出来るだろう。新しいところでは晶文社の仕事に私は注目している。

とあって、流れた歳月を感じずにはいられない。

Wednesday, October 12

宮田恭子『ルチア・ジョイスを求めて』(みすず書房)と山本義隆『福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと』(みすず書房)。みすず書房二連発。

山本義隆の本はたんに山本義隆が何を言っているかを知りたかっただけという理由で手にとったわけだが、もっとも山本義隆が原発事故をめぐって何を言いそうであるかというのはおおよそのところ想像がつくというもので、そしてやっぱり読んでみた結果想像どおりのことを述べていて、やや単線的にすぎるきらいも感じる原発批判本。山本義隆といえば数年前に刊行された写真集、渡辺眸『東大全共闘1968-1969』(新潮社)に寄稿していたけれど、いまだに当時の大学当局に対して怒っていて、その「いまだに本気で怒っている感じ」がすごかったのだが、『福島の原発事故をめぐって』においてもまた原子力発電に対しておなじように怒りを表明しているものの、しかしながらその怒りっぷりに対して条件反射的に「異議なし!」と言いたくなるものではない。

夕食、白米、もやしと豆腐の味噌汁、秋刀魚、大根おろし。

Thursday, October 13

仙台に出張。出張というものが喜ばしいのは移動先の名物料理を堪能できるなどといった類いのことではなく、新幹線に乗車しているあいだに集中して本が読めることで、このたび鞄に詰め込んだ本は土本典昭+鈴木一誌編『全貌フレデリック・ワイズマン アメリカ合衆国を記録する』(岩波書店)という「荷物」という修飾がふさわしかろうものであった。インタビューと評論と編者らの座談とフィルモグラフィで組み立てられた本だけれど、ワイズマン監督へのインタビューがおもしろくて、あとにつづく評論文の論点を否定するようなことをワイズマンが言っていたりする。今月末にはユーロスペースでワイズマン作品が一挙に上映されるし、ワイズマン本人も来日するらしく、東京、神戸、金沢、京都、高知をまわるという「フレデリック・ワイズマン・ジャパンツアー2011」の様相に思いを馳せつつ読んでいた『全貌フレデリック・ワイズマン』は、東京/仙台間の所要時間のうちには読み切れず。

夕食、白米、辛子明太子、葱の味噌汁、鰺の干物。『抵抗』(ロベール・ブレッソン/監督、1956年、フランス)を鑑賞。移動の疲れで映画の三分の一くらい記憶がない。聞くところによると、主人公は最後、脱獄に成功したらしい。

Friday, October 14

土本典昭+鈴木一誌編『全貌フレデリック・ワイズマン アメリカ合衆国を記録する』(岩波書店)のつづき。

夕食、クリームシチュー(牛肉、人参、玉葱、ほうれん草)、赤ワイン。夕餉にアルコールが参入。武田泰淳『目まいのする散歩』(中公文庫)の冒頭「六月の午前七時、久しぶりの好天気に誘われて、山小屋を出る。医師に禁じられた酒をのむと、ついふらふらと無理がしたくなる」という一節に勇気をもらう。世の中の軽薄な言説に氾濫している「勇気をもらう」という科白であるがここでは惜しみなく使いたい。武田泰淳に勇気をもらった。念のために述べれば、わたしは医者にアルコールを止められたわけではない。『UP』(東京大学出版会)を読む。

Saturday, October 15

沛然たる豪雨と強風。雨のやんだ昼どきに鎌倉の和食処。先付(秋刀魚砧巻き、黄味酢掛け、とんぶり・寄り人参)、刺身(本日の二点盛り)、煮物(鰆信州蒸し、さらし葱・紅葉蒸し・刻み海苔)、焼物(馬鈴薯吹き寄せ焼き(銀杏・本志メ地・紅葉麺)、冷鉢(豆腐、蟹・なめこ・万能葱、釜揚げしらす・刻み海苔)、止椀(白味噌仕立て)、食事(土鍋炊込み、香の物)、デザート(時の物)という献立を頂戴する。鎌倉とその周辺に滞在後、東京へ帰還。

夕食、イエローカレー、モルツビール。酒量がぐっと減ったため、すこぶる適度にアルコールを摂取する人になってしまった。『チェスの話 ツヴァイク短篇選』(池内紀/解説、みすず書房)を読む。

Sunday, October 16

昼食、近所のイタリア料理店で昼食。白身魚とトマトソース。商店街と花屋と図書館。料理の幅を広げようと家の本棚にならんだ料理本から抜き出したのは『Love Kitchen 世界のキッチンマニア』(エクスナレッジ)。まず、かたちから入る。

夕食、温かいうどん。牛肉と大根おろしと万能ねぎをのせて。『田舎司祭の日記』(ロベール・ブレッソン/監督、1950年、フランス)と『ミツバチのささやき』(ヴィクトル・エリセ/監督、1973年、スペイン)を鑑賞するものの、『田舎司祭の日記』の半分くらい、『ミツバチのささやき』はほとんど、眠っていたような気がする。『田舎司祭の日記』について、聞くところによると、主人公は最後、死んでしまうらしい。