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Monday, October 3

日本人のノーベル賞受賞なるかという報道にふれたときの感触は、乗客に日本人はいない模様という飛行機事故のニュースを聞いたときと似ている。

だがそれにしても、このグローバライズされた地球にあって、人はなお、ノーベル賞受賞者の国籍がたまたま自分と同じであることに悦びを見出さずにはいられないほどはしたない存在なのだろうか。(蓮實重彦『随想』新潮社)

そしてきょうの読書はどうやらずっとノーベル文学賞の候補でありつづけているらしいトマス・ピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』(佐藤良明訳、新潮社)。夜ごはん、ハヤシライス、林檎。

Tuesday, October 4

トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』(佐藤良明訳、新潮社)のつづき。夜ごはん、白米、豆腐の味噌汁、鱈の西京焼、ほうれん草ともやしの炒めもの、野沢菜。

Wednesday, October 5

自宅の本棚から武田泰淳『目まいのする散歩』(中公文庫)を抜きとっていざ読もうと思ったものの、図書館への返却期限が迫っていた司修『本の魔法』(白水社)を先に読まなくてはとこちらからページをめくっていたら『目まいのする散歩』の話がでてくる。シンクロニシティ。『本の魔法』の装丁者を確認してみたならば、あたりまえだが著者自装。ここで装丁が鈴木成一デザイン室とかだったら吃驚だ。

夜ごはん、温かいうどん。鶏肉、卵、葱をのせて。野沢菜。

Thursday, October 6

深井有『気候変動とエネルギー問題 CO2温暖化論争を超えて』(中公新書)。温暖化懐疑論。それにしてもたとえばクライメートゲート事件について、この本とWikipediaに掲載されている記述なんかをならべて読んでいると、もうなにがなにやらという感じ。

午後病院。マーズレンS配合顆粒、ガスモチン錠5mg、ガスターD錠20mg。ページが埋まってゆくお薬手帳。秋のピクニックの季節が到来したので参考文献としてnoyama編『つながる外ごはん』(小学館)を図書館から借りたのだが、これがほんわかした書名に反して本気のキャンプ本で、下ごしらえをして屋外でカレーをつくるとか、いや私は、そこまでのことをやりたいのではないのだった。

夜ごはん、ビーフシチュー、白米、サラダ(グリーンリーフ、トマト、コーン)。『オランダの光』(ピーター=リム・デ・クローン監督、2003年、オランダ)を鑑賞。

Friday, October 7

重田園江『ミシェル・フーコー 近代を裏から読む』(ちくま新書)。「規律」というわかりやすい枠組みでフーコーの思想を「応用」しようという安易な理解と袂を分かち、『監獄の誕生』の読解に特化するかたちで「本当はわかりにくい」フーコー像を呈示する意欲的な試みだが、全体に漂うのは空回りがちの妙なテンション。著者の文章を読むのであれば、この新書より既出の論文のほうがいいような気も。

夜ごはん、白米、人参と葱の味噌汁、鰺の干物、冷や奴、野沢菜。『非情の罠』(スタンリー・キューブリック、1955年、アメリカ)を鑑賞。ネットを逍遥していたらノーベル文学賞のしらせ。乗客にトマス・ピンチョンはいませんでした。

Saturday, October 8

清澄白河→六本木。「ゼロ年代のベルリン わたしたちに許された特別な場所の現在」展(東京都現代美術館)、サクラカフェ、「サイトウマコト/蜜が蜂を呼ぶように。」(小山登美夫ギャラリー)、「池田武史/666 or more malignant songs which should be forgotten immediately after they’re played」(アイ コワダ ギャラリー)、「篠山紀信/Untitled 朝吹真理子」(ヒロミ ヨシイ)、「町田久美展」(キドプレス)、「About A House」(タカ・イシイギャラリー)、「柳幸典展」(ミヤケファインアート)、「リカルダ・ロッガン/Old World」(アンドーギャラリー)、eastendTOKYOBOOKS、しまぶっく、「フィオナ・タン/’Rise and Fall’ and New Works」(ワコウ・ワークス・オブ・アート)、「森山大道写真集『Accident』インスタレーション展」(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム)、「半田真規/六本木モスク」(オオタファインアーツ)、青山ブックセンター。

Sunday, October 9

三年ほど前に数日かけて読んだ菊地成孔+大谷能生『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』(エスクアイア マガジン ジャパン)が河出書房新社から文庫化されて、すべてを読み返そうなどという意思はまるでないものの、いまいちど確認しておきたかったのは高村是州をくわえたマイルスのファッションをめぐる鼎談である。なにしろ高村是州の指摘がすごいのだ。

このジャケットのラペル(下襟)を見てください。カラー(上襟)とラペルの刻みをゴージというんですけど、ふつう、ゴージの角度は上に向かうんです。これが下に向いてるっていうのは、相当細かく注文しないと作れないです。

とか。髪を切りに美容院。時間つぶしに置いてあった『STORY』(光文社)と持参した『みすず』(みすず書房)を読んでいた。ベランダで植物の世話。食材と日用品の買いもの。花屋でバラ(チェリーブランディ)を購入。図書館。夜、『ギャング』(ジャン=ピエール・メルヴィル監督、1966年、フランス)を鑑賞。