Monday, August 29
通勤時の読書は『美術手帖』(美術出版社)の名和晃平を特集した8月号。
夕食、白米、味噌汁、肉じゃが、鮭、野沢菜、ビール。『北北西に進路を取れ』(アルフレッド・ヒッチコック/監督、1959年、アメリカ)を鑑賞。DVDについていた脚本家アーネスト・レーマンの音声解説が、要点だけを述べるのかと思いきやまさかの映画を全編フルに流しての解説。
Tuesday, August 30
通勤時の読書は黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)。
帰りに郵便受けをのぞけば『一冊の本』(朝日新聞社)が届いたのを確認。橋本治が連載「行雲流水録」のなかで、
私のこの原稿は「打開策がない」とかなんとか言われるその以前に、「なにが言いたいのか分からない原稿」になってしまっているんじゃないかと思うが
と書いていて、嗚呼本人もさすがに自覚しているのだなあと思うのだけれど、つづけて、
「希望がないから生きて行けない」というのは贅沢な悩みで、かつては「希望があろうとなかろうと生きて行かなければならない」が当たり前だったということを遠回しにいいたいだけなのである。
とあるのを読んだところで、やはりこの「迂回」がなければ橋本治ではないし「迂回」してこその橋本治なのであった。
夕食、サワークリームオニオンライス、ビール。『バルカン超特急』(アルフレッド・ヒッチコック/監督、1938年、イギリス)を鑑賞。DVDについていた淀川長治の解説が、映画の内容にほとんど触れずにまさかのヒッチコック来日時の思い出話で終了。
Wednesday, August 31
通勤時の読書は長谷部恭男『法とは何か 法思想史入門』(河出書房新社)。
憲法学者はあまり法律家らしくない政治思想史や法哲学に関わる研究もします(すべての憲法学者がそうだというわけでもありませんが)。ところが、政治思想史や法哲学の優れた研究者の方々は、それぞれの分野の最前線のご研究で忙しくて、私のような門外漢にとって知りたいことをまとめて教えて下さるような本をなかなか書いていただけません。仕方がない、自分で書くかというわけで書き始めたのが、本書です。
なんでしょう、この執筆動機は。
夕食、白米、味噌汁、鰯の丸焼き、キャベツともやしの炒めもの、胡瓜、冷奴、キムチ、ビール。
Thursday, September 1
新書が文庫化されるというのも妙な話だけれど、2005年に筑摩書房から「ちくま新書」として刊行された吉見俊哉『万博幻想』が『万博と戦後日本』と書名を変えて「講談社学術文庫」に収まって、それにしてもなにゆえ「ちくま学芸文庫」でなく「講談社学術文庫」なのだろうとの考えが一瞬あたまを掠めつつ、そういえば中央公論社から「中公新書」として上梓された同著者の『博覧会の政治学 まなざしの近代』もまた「講談社学術文庫」に入ったことを思い出したりするのだけれど、そんな話はともかく『万博と戦後日本』は「もうひとつの一九七〇年 放射能の雨とアメリカの傘」と題された文庫版に付与された序文を読みたくて手にとる。東京電力や原子力安全・保安院の記者会見の無表情っぷりがオウム真理教の教団幹部たちを思い出させるとか、というか福島第一原発の原子炉建屋がサティアンにそっくりだとか、中曾根康弘や正力松太郎のことや、第五福竜丸の話や、反核や核アレルギーについてや、鉄腕アトムのことや、開沼博の論文のことなどいろいろぎゅっと詰まっている。
夕食、キーマカレー、ビール。『FRIED DRAGON FISH』(岩井俊二/監督、1993年、日本)を鑑賞ののち、就寝前に盛山和夫『経済成長は不可能なのか 少子化と財政難を克服する条件』(中公新書)を半分ほど。経済学(正確には学際的な経済学というより一般向けの経済論評)に喧嘩を売る本であるが、盛山和夫がなんでこんな本を書こうとしたのかが謎。
Friday, September 2
ダグラス・マッカーサーが飛行機から降り立つ写真に「いい国つくろう、何度でも。」というコピーのついた宝島社の広告を目にして、きのう読んだ吉見俊哉『万博と戦後日本』(講談社学術文庫)の序文にある、
今回、大震災と原発事故が発生してからの東京電力の対応はお粗末というほかなく、日本政府も混乱を重ねるなかで、米軍と皇室の対応の機敏さは際立っていた。米軍と天皇が危機対応を先導するとは、まるで一瞬にして六〇年以上前の占領期に歴史が舞い戻ったかのようである。
という記述を思い出す。
夕食、白米、味噌汁、鰹、青梗菜としめじの炒めもの、ひじきの煮もの、胡瓜と味噌。『経済成長は不可能なのか 少子化と財政難を克服する条件』のつづき。じぶんの所説が正しくてそれ以外の所説はまちがっているという立ち位置から発せられる社会科学系の論説ってたいへんだなあという感想。
就寝前に「創刊75周年記念特集号」の『装苑』(文化出版局)。本棚にある「創刊70周年記念特大号」とくらべると「70周年」より「75周年」のほうがずっと薄いのが気にかかるのだけれど、それはただ単純に今回は「特集号」であり「特大号」ではないからか。「特大号」をつくる予算と気力がないという理由でなければよいが。
Saturday, September 3
台風12号の接近により自宅シネマを決め込む。『サクリファイス』(アンドレイ・タルコフスキー/監督、1986年、スウェーデン/イギリス/フランス)、『革命前夜』(ベルナルド・ベルトルッチ/監督、1964年、イタリア)を鑑賞。どちらもVHS。渋谷の「TSUTAYA」でレンタルした『サクリファイス』が驚くほどの画質の悪化ぶりでみんなどれほど『サクリファイス』を見たのかと問いたくなるほどの悪化ぶりなのだけれど、しかしながらこのひどい画質こそがタルコフスキーの映画にはふさわしい気もする。『ノスタルジア』のDVDをもっているのだが、このDVDがまたDVDにもかかわらずVHSよりはましという程度の画質であることを想起する。ところで『サクリファイス』については蓮實重彦が『映画狂人日記』(河出書房新社)で否定的に言及していたと記憶しているがいま手元に本がない。
昼食、蕎麦。雨が降りそうで降らなかったり降らなそうで降ったりで洗濯もの干しがギャンブルと化す。夕方、買いもの。夕食、冷やし中華。赤ワインを飲みつつ映画鑑賞、『アメリカの夜』(フランソワ・トリュフォー/監督、1973年、フランス)。
Sunday, September 4
きょうも自宅シネマ。『ママと娼婦』(ジャン・ユスターシュ/監督、1973年、フランス)。上映時間三時間四〇分。昼食、牛肉と青梗菜のパスタ、赤ワイン。夕方、代々木公園のブラジルフェス。「TSUTAYA」でDVDとVHSのキャッチアンドリリース。
夕食、うどん、ビール。柴崎友香『虹色と幸運』(筑摩書房)を少し読む。