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Monday, June 27

隠喩としてのみならず実際の身体的現象においても一滴の汗も流さず生きることを人生の指針としている身としてはつらい高湿度の季節が到来。

アントネッラ・アンニョリ『知の広場―図書館と自由』(萱野有美訳、みすず書房)を読む。冒頭に

電子機器を好まない人はまだまだたくさんいます。そうした人は、今後もきっと手紙や電話、市場やバールでの出会いを通じて人とコミュニケーションをとり続けるでしょう。

とあるので保守反動的な本なのかと一瞬構えたものの読みすすめてゆくとそうでもないようで、

図書館員は優れた専門家なのだという意識を回復しようとすること、現在の職を守ろうとすること、この先、市民の知識の仲介者として認められるだろうと想像すること、そうしたことは止めた方がいい。それは単なる幻想でしかない。

なんていう記述があるくらいだから、現状の図書館のありかたを今日的な意匠を導入して魅力的なパブリックスペースに変えていこうという野心的な筆致が展開されていた。

夜ごはん、白米、葱の味噌汁、豚肉ともやしの蒜醤油炒め、冷奴、シルクヱビス。MacとWindowsを無線LANで繋ごうとする作業に夜の貴重な時間が費やされる。やっとこさなんとか繋がったところで晩酌と音楽。デューク・エリントンとセロニアス・モンクを聴く。

Tuesday, June 28

おなべの具をたべた後、ごはんを入れて、おじやを作るとおいしい。でもおじやは太るのだそうだ。お相撲さんみたいになったら困ってしまう。私がおいしいと思い、たべたいと思うものはみんな太るものだとは、なんと哀しいことだろう。

四十五刷と記された石井好子『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(暮しの手帖社)を自宅の本棚から抜きとって読んでいたところもうすぐ河出書房新社から文庫がでるという報せを聞き、解説は堀江敏幸が担当するのだという。また堀江敏幸。私の読書領域に堀江敏幸包囲網が築かれている気がしてならない。

朝日新聞社の広報誌『一冊の本』が届いたので金井美恵子の連載(原発の問題をめぐる周到なんだか恣意的なんだかよくわからないものの唸らずにはいられないエッセイ)に目をとおす。今号には現在発売中の『日々雑録4』の書評が掲載されているのだが、金井美恵子の書くものはおもしろくとも金井美恵子のことを褒めている文章は大抵おもしろくないと私は思っていて、金井節の磁場が強すぎて評者の腰が引けてしまうのがいけない理由のひとつかもしれないのであるが、このたびの陣野俊史による書評も例に漏れず読む者をがっかりさせるだけでしかない代物で、この書評ページは不要かと。なんていう否定的言辞はさておくとして、『一冊の本』という冊子はほとんど金井美恵子の連載のためにあるのような媒体でほかの寄稿すべてがなくなってしまってもべつに構わないと感じる程なのであるが、となると『一冊の本』などという名称ではなく『月刊 金井美恵子』でもよいはずであるがそれはちょっといやだ。撮影・藤代冥砂とか。いやだろう。

夜ごはん、グリーンカレー。カレーの辛さに舌が麻痺し、シルクヱビスと麦とホップの差異があいまいになる。ビールと間違えるにはカレーを食べればよい。

Wednesday, June 29

ハ・ジン『すばらしい墜落』(立石光子訳、白水社)。出自は中国、アメリカ在住で英文学の教鞭をとる作家による短編集。ある種の現代海外文学を読んでいるとどれもこれも新潮クレスト・ブックスを読んでいる気分になるのだがページをめくる指から伝わる紙の感触でクレスト・ブックスとそれ以外を識別している。

夜ごはん、白米、葱と豆腐の味噌汁、ひじきの煮物、鯵の丸焼き、麦酒。

Thursday, June 30

『ジョルジョ・モランディの手紙』(岡田温司編、みすず書房)を読む。夜ごはん、ラーメン。牛肉と人参、葱をたっぷりのせて。麦酒。

Friday, July 1

電車で女子中学生らしき三人組が『セブンティーン』のモデルがどうのこうのという話をしている。おそらく山口二矢についての話題であろう。夜ごはん、白米、小松菜の味噌汁、海苔と鰹節の冷奴、鯖の西京漬、麦酒。

Saturday, July 2

『特別な一日』(エットーレ・スコラ監督、1977年、イタリア/フランス)を鑑賞したあと新宿まででて昼ごはん、ARMWOOD COTTAGEにて。伊勢丹のバーゲン。セールの時期はセール対象外の商品がこのうえなく魅力的に映る。メンズ館の一階でシャツを三枚、ポール・スミスで八分丈パンツを二本購入。フォーナインズで眼鏡の調整。帰りに紀伊國屋書店に立ち寄って『ローベルト・ヴァルザー作品集2』(鳥影社)を買おうとドイツ文学の棚をさがしたが置いてなかった。しかたがないので池袋まで移動してリブロでヴァルザー作品集を捜索し、無事発見。ついでに無印良品で買い物してさらには池袋西武のセールに足を踏み入れシャツを買ってしまうなどの行為によってクラブオンカードのポイントがどんどん増加してゆくのだが、貯まったポイントでいつか『山尾悠子作品集成』(国書刊行会)を買ってやろうと思う。ポイントで買う山尾悠子。夜ごはんは近所のラーメン屋で。

国書刊行会と入力したら酷暑観光会と変換された。

Sunday, July 3

鎌倉。横山隆一邸跡地のスターバックスで庭を眺めつつぼんやりときどき読書。午前中から稲村ヶ崎で海を眺めながら背徳のオランダビール。昼ごはんにオクシモロンでカレー。鎌倉文学館で「米原万里展/ロシア語通訳から作家へ」。米原万里シールが売っているという謎。庭を散策後、鎌倉駅までバスで戻り4CUPS+DESSERTSのカフェで休息。行き帰りの横須賀線では予習復習とばかりに米原万里『旅行者の朝食』(文春文庫)をひらくも睡魔に惨敗。夜ごはん、月見そば、キムチ、麦酒。