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Monday, October 21

一昨日の夏日から一転、昨日今日は突如冷え込む。朝食、目玉焼き、豚肉のアンチョビソテーと粒マスタード、サニーレタスと紫玉葱と胡瓜とトマトのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。昼食、弁当。

通勤道中の読書は、プルースト『失われた時を求めて 10 囚われの女 I』(吉川一義/訳、岩波文庫)を途中まで。夕食、焼豚と玉子と長葱と小葱と海苔を添えた、蛤だしの塩ラーメン。

読書。近藤絢子『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』(中公新書)を読む。「就職氷河期世代」の当事者としては、目を通さないわけにはいかない。データを元にした研究からは、世間一般に流布する通念どおりの事象もあれば、逆らうものもある。後者のうちで、本書の白眉といえる検証結果は、以下の指摘だろうと思う。

日本における学校卒業時の景気とその世代の家族形成の間にわかりやすい関係性はなく、就職氷河期世代から少子化がより加速したといえるエビデンスはない。

ところで、就職氷河期世代、とりわけ後期の世代(およびその直後世代)では、上の世代と比較して長期にわたって雇用が不安定な状態におかれたため年収が低く、年収格差は就労後15年以上たっても解消していないという指摘は、読んでいて辛くなってくるので、「よなよなエール」を飲む。

Tuesday, October 22

朝食、目玉焼き、鶏ハムとマスタード、サニーレタスと紫玉葱と胡瓜とトマトのサラダ、キャロットラペ、バゲットとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。昼食、弁当。夕食、ハムとほうれん草としらすのパスタ。「サッポロ黒ラベル エクストラモルト」を飲む。

読書。渡邉雅子『論理的思考とは何か』(岩波新書)を読む。既刊の『「論理的思考」の社会的構築 フランスの思考表現スタイルと言葉の教育』(岩波書店)と『「論理的思考」の文化的基盤 4つの思考表現スタイル』(岩波書店)を、読者層を広げる新書として執筆し直したものだろうと推測して買って読んでみたら、実際そのとおりの本だった。ゆえに、著者の論旨自体は読む前から把握済みであるのだが、ビジネス畑方面で無節操に幅を利かせている「ロジカルシンキング(論理的思考力)」なるものを牽制する視点として、あらためて有意義な指摘だとの感想を抱く。

論理的思考に関する書籍や情報が溢れる中で、本書の意義は何だろう。それは論理的思考に関する二つの常識の克服である。ひとつは論理的思考の方法は世界共通でも不変でもないこと、つまり論理的思考には価値観に紐づいた思考の型があること。もうひとつは思考の技術を使いこなすには、目的(そこに価値観が現れる)をまず特定してその目的に合った思考法を選ぶことである。

本書を最近読んだ本と関連づけてみるならば、川添愛『言語学バーリ・トゥード Round 2 言語版SASUKEに挑む』(東京大学出版会)が指摘するつぎのくだりについて、『論理的思考とは何か』を読むと、より精緻に深掘りした解析を味わうことができる。

ついでに言えば、日常的な場面では、「論理的」イコール「説得的」と考えてしまうことが多いように思う。世の中に出回っている「論理的思考」とか「論理的な話し方」と名の付くメソッドの多くは、「結論を先に言って、それから根拠を述べた方が相手を説得しやすい」などといった「話の持っていき方」に重点を置いている。しかし、こういう「説得力のある話の持っていき方」と、厳密な意味での論理は、基本的に別物だ。

Wednesday, October 23

朝食、目玉焼き、鶏ハムとマスタード、サニーレタスと紫玉葱と胡瓜とトマトのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。昼食、弁当。インフルエンザのワクチンを接種する。

夕食、焼豚と玉子と長葱と小葱と海苔を添えた、蛤だしの塩ラーメン。「よなよなエール」を飲む。

読書。プルースト『失われた時を求めて 10 囚われの女 I』(吉川一義/訳、岩波文庫)を最後まで。『失われた時を求めて』を読んでプルーストに感心するのは、「書いていてよく飽きないな」という点である。簡単に要約してしまうと数ページで収まってしまう粗筋を、卓抜な観察眼をもって、執拗なまでに時間を引き延ばすかのような綴り方で織りなされる物語を前にして、執筆しながらよく飽きないものだと感嘆する。『失われた時を求めて』の読者の大抵が途中で挫折してしまうのは、読んでいて飽きてしまうからにほかならない。プルーストの筆致に退屈している気配はない。

Thursday, October 24

朝食、目玉焼き、サニーレタスと紫玉葱と胡瓜とトマトのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。昼食、弁当。夕食、玉子と玉葱とクレソンのピラフ。「サッポロ黒ラベル」を飲む。

高階秀爾の訃報。「共同通信」による死去を報せる記事に目をとおすと、「理知的で明快な美術評論で知られた」であるとか、「豊かな教養と優れた感性で、ルネサンスから近現代までの西洋美術を研究」であるとか、執筆者の主観が混じっているとの指摘が入ってもおかしくはない表現で書かれているが、しかし、高階秀爾の著作に親しんだ者のなかで、「理知的で明快」や「豊かな教養と優れた感性」を否定する人はまずいないだろう。自宅の本棚から高階秀爾の本を抜き出していったら全部で17冊あって、今後、追悼の読書として何冊か読み返していく予定。

Friday, October 25

朝食、目玉焼き、サニーレタスと紫玉葱と胡瓜とトマトのサラダ、バゲットとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。昼食、弁当。

読書。プルースト『失われた時を求めて 11 囚われの女 II』(吉川一義/訳、岩波文庫)を読む。

半強制的な雰囲気をまとった会社の飲み会に出席する。久しぶりに「会社の飲み会」というものに参加して、あまりの内容のなさに唖然とした。語義を辞書で調べると、「唖然」とは、思いがけないことに驚くことなので、会社の飲み会の軽薄さなどいまさら唖然とするようなことでもないのだが、やはり吃驚してしまう。

場の空気を読むというのは、パーティージョークと一緒で、「こういう席ならこの程度の話」という予定調和的な破綻のない話で済ませるということで、考え込むような展開にならないようにすることだ。私たちは沈黙することを怖れている。会話が途絶えがちな雰囲気を「しらける」ことと同じだと、つい思ってしまっているわけだけれど、真面目な話は矢継ぎ早にはできない。そんなことをしていたら、結局、タレントがろくでもないことばっかり言い合っているバラエティ番組と同じなのだ。(保坂和志『途方に暮れて、人生論』草思社)

Saturday, October 26

朝食、目玉焼き、ソーセージと粒マスタード、サニーレタスと紫玉葱とトマトのサラダ、キャロットラペ、パンドミとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。

読書。高階秀爾『歴史のなかの女たち 名画に秘められたその生涯』(文藝春秋)を読む。途中まで。昼食、「無印良品」のグリーンカレー。

ドキュメンタリーを二本見る。『ジェーンとシャルロット』(シャルロット・ゲンズブール/監督、2021年、フランス)を見る。冒頭で東京の風景が映し出され、ジェーン・バーキンが「築地市場」を訪れている姿の隣に、中沢新一の存在を確認できる。調べてみたら、ジェーン・バーキンとシャルロット・ゲンズブールの東京案内を中沢新一が買って出たらしい。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(ライナー・ホルツェマー/監督、2016年、ドイツ・ベルギー)を見る。再見。ドリス・ヴァン・ノッテンが皆に言うと笑われるという話として、旅行をする際は緻密なスケジュールを組んで「時間割」を作成すると語っているのだが、まったくおなじ習性をもつ者としては、笑うどころか共感しかない。とりわけ「休憩時間を30分」とか、休む時間までをあらかじめ指定してしまうあたり、おなじ性分である。

近所のスーパーマーケットで食材の調達。夕方、「よなよなエール」を飲む。筑摩書房が「ちくま学芸文庫」所収の福田和也の本を復刊するというので、本棚から行方不明になっている『奇妙な廃墟 フランスにおける反近代主義の系譜とコラボラトゥール』を「Amazon」で注文する。

夕食、手巻き寿司(鮪、鰹、真鯛、烏賊、海老、胡瓜)、長葱と若布のお吸い物。「サッポロ黒ラベル」を飲む。

Sunday, October 27

朝食、半熟卵、ソーセージと粒マスタード、ベビーリーフと胡瓜と紫玉葱とトマトのサラダ、キャロットラペ、バゲットとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。

10月最終週を迎えるところで、衣替えをおこなう。クローゼットから洋服を出して、ブラッシングやらアイロンがけやらに精を出す。つづけて靴磨きと鞄の整理。「世界の快適音楽セレクション」(NHKFM)と「音楽の泉」(NHKFM)を聴きながらひたすら作業をおこなうも、番組が終わってもまだ終わらず、すべて終わるまで3時間以上を費やす。

昼食、豚肉と玉葱とターメリックライスのピラフ。平野紗季子のPodcast「味な副音声 voice of food」を聴く。陳暁夏代による中国の食文化の話がとてもおもしろい。

衣替えの作業に勤しんだものの、本日は蒸し暑くて辟易する。久が原界隈まで自転車を漕いで、「Pâtisserie La splendeur」でケーキを買う。帰宅後、「丸山珈琲」の豆で淹れた珈琲とケーキをお供に映画鑑賞。『ディーバ』(ジャン=ジャック・ベネックス/監督、1981年、フランス)を見る。

夕方、常備菜づくり。夕食、白米、長葱と絹ごし豆腐の味噌汁、秋刀魚の塩焼き、大根おろしと胡瓜。純米吟醸「上善如水」を飲む。