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Sunday, January 1


午前5時半起床。いつも通りの時刻。顔を洗い歯を磨き、お化粧もして髪の毛も梳かして、身だしなみを整えて気合いを入れてお雑煮をつくる。夫が珈琲を淹れてくれたので、新年一杯目の珈琲を飲みつつ、台所に立つ。おせち料理、お雑煮、お屠蘇を並べる。2023年、とにかくみんなが健康でありますように。そして楽しいことがたくさんありますように。

昨年の今日、この日記に「わたしは今年は日々のルーティンを粛々と進めていくことを目標にしたい」と書いたが、今年もその目標は変わらない。キーワードは「集中」だと思っている。

午後は実家に顔を出し、お菓子などあれこれ交換し合って帰宅。

読書初めの本はどうしようか迷っていたら夫がお正月にぴったりな本を読んでいたので、わたしも真似して、澁澤龍彦『フローラ逍遥』を読む ((夫は単行本を、わたしは平凡社ライブラリー版を。))。夕方、新春映画として『日曜日が待ち遠しい!』(フランソワ・トリュフォー監督、1983年、フランス)をプロジェクターで自宅上映。何度観ても素晴らしい。もはや何度目の鑑賞になるのかわからないけれど、今回がいちばん細かいところまで目配りできたような気がして、いい映画も音楽も、常に新しい発見がある。

夜、ごはん、お吸い物(鶏肉、のるるんかまぼこ、なると、小ねぎ)、おせちの残り、ビール。

Monday, January 2


いつもの朝食に戻る。いつもの朝食イイね! かもん日常。昨晩NHK-FMで放送された「ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート」をタイムフリーで聴く。指揮は、昨年のニューイヤーコンサートで発表されたとおりフランツ・ウェルザー=メスト。

『フローラ逍遥』(澁澤龍彦、平凡社)読了。何度目かの再読であった。

テサロニキに行ったときは夏の真っ盛りで、道をあるくと頭がくらくらするほど暑かった。ちょうどひとびとが昼寝(シエスタ)をとる時間、ひっそりとした市中の公園のあたりをあるくと、夾竹桃やネムノキやノウゼンカズラや、そのほか色とりどりの花がいっぱいに咲いていた。そのネムノキはたしかに薄桃色の花だったが、日本のネムノキとはどこかちがって逞ましく、たとえ雨に濡れたとしても、とても西施のように楚々たるふぜいには見えそうにない感じだった。いや、そもそもギリシアの夏はほとんど雨なんか降らないのである。(p.159)

花はたしかに植物のなかでいちばん美しく、いわば植物の顔みたいなものでもあろうが、大地から生え出た一本の茎の先端に位置して、虚空にゆらめいているという点では、なにか植物的生命から遊離した、抽象的な感じがするのを否めないだろう。そこへいくと、地中に身をかくして、固く凝集している球根は、たとえ乾いているにもせよ、いかにも植物の生命力をみずみずしく具現しているように見える。球根の魅力、あるいは球根植物の魅力はそこだと思う。(p.178-179)

お昼に、“おせちの残り全部のせ蕎麦”を食べてから外出。上野へ。2023年の美術館初めは国立西洋美術館で。「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」。第二次世界大戦後のパリで画商を営んだベルリン出身のユダヤ人ハインツ・ベルクグリューンが収集した、ピカソ、クレー、マティス、ジャコメッティを中心とする20世紀美術コレクションから97点が来日。そのうち76点が日本初公開とのこと。わたしは正直、「ピカソはちょっともういいかな、ひととおり観たし…」という気持ちになりかけていたのだけど、いやそんなことなかった、またあらためてピカソを体系的に学びたい、まだまだ知らないことがたくさんある、と思わせてくれた展示で、素晴らしかった。ベルクグリューン美術館の生い立ちとそのあり方もとてもよいと思った。印象に残った絵が幸いにもいくつかポストカードとして売られていたので、数枚購入。学生時代からずっと、いい大人になってからもずっと、ポストカードというものを買って集めてしまう。人ってあまり変わらないわね。

鑑賞後、上野公園をてくてく散歩してから帰途に着く。夜は、ローストチキン、クレソンとエシャレットのソテー、カマンベールチーズ、グリーンオリーブ、バゲット、スパークリングワイン、赤ワイン。かもん日常。

『増補新版 フランソワ・トリュフォーの映画誌』(山田宏一、平凡社)を読む。この本のなかでワンシーン=ワンカットのことをフランス語ではplan-séquence、英語ではsequence shotあるいは単にlong take、と説明しているので「ワンシーン=ワンカット」という言い方は日本独自のものなのかな。この言葉が好きなのでちょっと気になった。

Sunday, January 8

昨日、仕事でちょっと気がかりなことがあったのと、ほかにもちょっと気になることがあってそれらに気を取られ、なんと七草粥のことをすっかりわすれてしまったのだった。というわけで、一日遅れだけど今朝作って食べた。

実家に顔を出し、新年の挨拶に来ていた弟一家とも合流して、甥っ子2人に約束していたいくつかのプレゼントを渡す。『きりのなかのはりねずみ』の絵本をあげたのだけど、楽しんでくれるといいなあ。わたしのいちばん好きな絵本なのよ、と言って渡したのだけど、どうかしら…。

帰宅して、ごはん、豆腐と白菜の味噌汁、鰹のたたき、すぐき漬でお昼ごはん。『ノロワ』(ジャック・リヴェット監督、1976年、フランス)を観る。女ボスの役でベルナデット・ラフォンが出ている。この人が出ると画面がピリッと引き締まる。

夜は、スモークサーモンと蓮根のグラタン、グリーンリーフとアボカドとトマトのサラダ、オレンジワイン。グラタン、とても美味しくできて嬉しい。今年もお料理がんばろう。