Monday, June 6
梅雨の到来を告げるかのように雨粒が空から落ちる。結構な雨脚なので自宅近くの停留所からバスに乗車。雨模様のときしか通勤でバスを利用しないのだが、雨の日のバス車内の雰囲気ほど人を陰鬱な気分にさせるものはない。嫌さ加減は満員電車といい勝負かもしれない。梅雨時の通勤を肯定的に捉えるには、雨具を好みのもので揃える程度しか妙案は浮かばないけれど、3年程前に通販サイト「MR PORTER」で購入した英国の傘ブランド「London Undercover」の折り畳み傘を、いまは愛用している。しかしいくら気に入った雨具を携えようと梅雨の鬱陶しさから逃れるのは難しく、しかも梅雨が終わると過ごしやすい爽やかな季節の訪れではなく灼熱地獄が待っているのだから気分が滅入る。ところで、毎年の酷暑ぶりを嘆くのはもはや夏の風物詩となりつつあるが、吉田健一の『英国に就て』(ちくま文庫)を読み返してみたら、つぎのようなくだりに巡りあう。
英国は夏が秋のような国である。ことに最近の東京のように、いつの間にか夏の暑さと湿度が熱帯並になって、毎年、炎熱地獄にいる思いをするのと比べればであって、これは何年か前に英国でもやはり一番暑い八月をロンドンで冬服で通したことからも、大体のところは想像できる筈である。(p.116)
本書の元々の刊行年は1974年。英国について過去書いたエッセイをまとめて単行本化したものだから、吉田健一が夏を「炎熱地獄」と形容したのはさらにむかしの話のはず。ということは、東京の夏は50年余りずっと酷暑だということになり、例年の夏の暑さを前にして「むかしはこんなに暑くはなかった」と呟かれる常套句の「むかし」とは一体いつを指しているのかを検討しなくてはならない。夕食、フライドポテト、グリーンリーフとパプリカと胡瓜と新玉葱のサラダ、「Soup Stock Tokyo」の東京ボルシチ、ビール。夜、読書。『英国に就て』を最後まで。
Tuesday, June 7
朝の読書は蔵書から吉田健一『時間』(新潮社)。通勤道中の読みものは前日届いた『みすず』6月号(みすず書房)。夕食、「日清」のどん兵衛、ビール。夜、映画鑑賞。『帝銀事件 死刑囚』(熊井啓/監督、1964年)を見る。
Wednesday, June 8
『UP』6月号(東京大学出版会)を読む。夕食、トマトリゾットのチーズ焼き、ビール。夜、映画鑑賞。『ガラスの鍵』(スチュアート・ヘイスラー/監督、1942年)を見る。
Thursday, June 9
読書。吉田健一『旅の時間』(講談社文芸文庫)を読む。夕食、持ち帰り寿司、長葱の味噌汁、ビール。夜、映画鑑賞。『市民ケーン』(オーソン・ウェルズ/監督、1941年)を見る。若い頃、所謂「名作」と呼ばれる映画を追うなかでいまいちピンと来なかった作品のひとつに『市民ケーン』があったが、久方ぶりに見返してみたらとてもよくできている作品で感心する。
Friday, June 10
読書。重田園江『ホモ・エコノミクス 「利己的人間」の思想史』(ちくま新書)を読む。繰り出される細部の小ネタをおもしろく読むも、結論としてナイーブな新自由主義批判と何が異なるのかとの疑問は残る。夕食、素麺、卵焼き、鰊の甘酢漬け、ビール。
Saturday, June 11
曇天。朝食、目玉焼き、サニーレタスとトマトとベーコンのサラダ、トーストとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。アイロンがけ。外出。山手線に乗って上野駅まで。午前9時すぎに到着した上野公園は結構な賑わいで、動物園は長蛇の列。上野の朝は早い。東京都美術館で「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」を見学。鑑賞後に美術館内の「RESTAURANT salon」で昼食。テーブルにアクリル板が置いてあるが、あれは意味があるとは思えないうえに邪魔でしかないのでもうやめたほうがいい。海の幸サラダ、鴨ロースト、パン、赤ワイン。上野公園内を散歩してから、日比谷線で六本木まで移動。ギャラリー遊覧。米田知子「残響―打ち寄せる波」(シュウゴアーツ)、菅木志雄「有でもなく無でもなく」(小山登美夫ギャラリー)、鈴木理策「冬と春」(タカ・イシイギャラリー)、「HANS HARTUNG」(ギャラリーペロタン東京)、田島美加 「Spectral」(TARO NASU)、新里明士「translucent transformation」(Yutaka Kikutake Gallery)、殿村任香「Love」(Zen Foto Gallery)、アニッシュ・カプーア「Selected works 2015-2022」(スカイ ピラミデ)、ゲルハルト・リヒター「Drawings 2018-2022 and Elbe 1957」(ワコウ・ワークス・オブ・アート)。最近のギャラリーでは展示紹介の紙を置かずにQRコードを提示してWEBで読んでというケースが増えている。しかし紙媒体に執着する古い人間であるだけにすぎないのかもしれないが、WEBだとまったく読む気にならない。ざっと目を通すにせよ、じっくり読むにせよ、紙のほうが圧倒的に利便性は高いと思っているのだが。帰宅途中で恵比寿に寄り道。恵比寿アトレにて、「Le Grenier à Pain」でバゲットとパンドミを買って、「patisserie KIHACHI」でバームクーヘンを買う。夕食、豚肉と小葱の蒸し餃子、白菜と人参の漬物、ビールと紹興酒。
Sunday, June 12
曇天。朝食、目玉焼き、ハム、サニーレタスとトマトのサラダ、バタールとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。午前中は映画を二本見る。『トスカの接吻』(ダニエル・シュミット/監督、1986年)、『アメリカン・ユートピア』(スパイク・リー/監督、2020年)。前者は初見、後者は再見。昼食、「negombo33」のラムキーマカレー、玄米茶。雨の天気予報が外れるかと思っていたら、昼すぎに雨雲が接近する。バームクーヘンと珈琲のおやつ。部屋の片付けの一環で、紙ものを整理する。もう読み返すことはない(読み返す気にもならないであろう)本や雑誌を処分する。夕方、京都の「仔鹿」で買ったオーストリアの白ワインを飲む。読書。読みさしの吉田健一の本を二冊。『乞食王子』(新潮社)と『時間』(新潮社)。夕食、ローストチキンとマスタード、蛸とシーチキンとミニトマトとサニーレタスとサラダ、「Mikkeller」のペールエール。