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Friday, January 1

朝の音楽、2020年年始のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューイヤーコンサートをSpotifyで聴く。アンドリス・ネルソンス指揮。可能であれば部屋中に轟かせる音量で聴きたいところだが集合住宅で朝の4時半から迷惑行為を遂行するわけにはいかず、細やかなボリュームで聴く。軽く部屋の掃除を済ませてから、駒込の百塔珈琲で購入した豆を用いて珈琲を淹れて、エコノミスト誌の社説に目をとおしつつ日輪の登場を待つ。感染症流行の収束する気配がまるでないので世間的には索漠とした正月なのかもしれないが、個人的には例年とさして変わることなく振る舞う。とはいえラジオから聴こえてくる「今年はよい年にしたい」であるとか「健康に気をつけて」であるとかのいつもであれば形式的にすぎない新年の挨拶文が鈍重な空気を醸しだすものとして耳に入ってくるので、やはり去年の今頃とはまるでちがった風景が広がっている。御節と雑煮と熱燗の朝食。

今年最初の映画として『ピクニック』(ジャン・ルノワール/監督、1936年)を見てから、radikoのタイムフリー機能でChocolat & Akitoの「EVERYDAY STORY」(α-STATION)と村上春樹の「村上RADIO」(TOKYO FM)を聴く。村上春樹は自身のラジオ番組の冒頭で「今晩は、村上春樹です」と挨拶するのだが、「今晩は」と「村上春樹です」のあいだにやたら時間を空ける。「、」の時間が妙に長い。このたびの番組は年越しの生放送だというので、年越し直前に「今晩は」と云って、「、」で午前0時を挟み、年が明けて「村上春樹です」という演出がなされることを期待したが、普通にカウントダウンをやっていた。ところで、直截そうは云っていないが村上春樹は菅義偉に嫌悪感を抱いていることは伝わってくる。

大晦日から元日にかけての読書。『おたのしみ弁当 吉田健一未収録エッセイ』(島内裕子/編、講談社文芸文庫)と横光利一『旅愁』(講談社文芸文庫)の上下巻を読む。前者は年末に新宿の紀伊國屋書店で買った新刊、後者はこちらも年の瀬に清澄白河のしまぶっくで購入した古本。できるだけ買った本はすぐに読むよう心がける。InterFMにチャンネルを合わせると、いつかやろういつかやろうと相続問題を放置していると気づいたら相続人が100人以上になるケースもあると威嚇するラジオCMが聴こえてくるのだが、いつか読もういつか読もうと積読問題を放置していると気づいたら未読本が100冊以上になるケースも大いにあり得るので気をつけたい。『旅愁』は長い小説なので下巻のはじめまで。

夕食、ローストチキン、茹でたブロッコリー、コーンスープ、ベビーリーフとグリーンリーフと紫玉葱と蛸のサラダとイタリアンドレッシング、赤ワイン。夕食を摂りながら無観客で開催されたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートをNHK-FMで聴く。指揮はリッカルド・ムーティ。

本日は日本酒、麦酒、ワイン、珈琲、紅茶、緑茶、炭酸水、水、とあらゆる種類の水分を摂取した。

Saturday, January 2

朝の音楽、Tincho Acosta「Silencio」とYo La Tengo「Sleepless Night」を聴く。

朝食、目玉焼き、ベビーリーフとトマトとベーコンのサラダとフレンチドレッシング、トーストとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。いつもの朝食の献立に戻る。

珈琲とベルンのミルフィユをお供に横光利一『旅愁』(講談社文芸文庫)の下巻を読んでから外出。快晴の澄んだ空気のなかを自転車に乗って近所を疾走し、途中でスーパーマーケットに立ち寄る。本年最初の買いものは東急ストアにて。東急ストアでは今年の干支にちなんで丑の石鹸を数量限定でプレゼントしていたらしいのだが、開店時間の5分後に訪れたら既になくなっていた。正月早々スーパーには人が集まる。多摩川沿いまで足を伸ばして多摩川大橋緑地あたりをサイクリング。川の向こうには武蔵小杉のビル群を臨む。雲のほとんどない青空なので富士山も綺麗に見える。帰り道に近所の神社に寄ると参拝客は疎らだったので初詣を済ませる。「私だけがコロナに感染しませんように」と願う。

自宅に戻って映画鑑賞。昼食としておしるこを食べてから『皆さま、ごきげんよう』(オタール・イオセリアーニ/監督、2015年)を見る。映画の紹介文に「イオセリアーニが贈る人生賛歌」とあるが、イオセリアーニの映画は人間賛歌と云っておけばとりあえず評が成立してしまう感がなくもない。映画を見ながらエチゴビールを飲む。

夕食、鶏肉と鳴門と蒟蒻と筍と小葱をのせた温かい蕎麦、麦酒。食事を摂りながら「CREADIO」(J-WAVE)を聴いていたら、佐藤オオキが事務所の裏に住んでいると云っていて、ということは草月会館の裏のマンションに住んでいるということだろうか。

Sunday, January 3

朝の音楽、Alaska Reid「Big Bunny」とDino Saluzzi「Alboras」を聴く。

朝食、目玉焼き、ベビーリーフと紫玉葱とトマトとベーコンのサラダとフレンチドレッシング、トーストとクリームチーズ、ヨーグルト、珈琲。

本日も快晴。東京の正月は晴れる。近所のスーパーマーケットで食料品の調達を済ませてから外出。散髪にかんしては伸びた髪を切断する事務的な手続き以上のものを求めていないので、それならばQBハウスでよいのではと思って最近はQBハウスで髪を切っている。全体的に1cm程度切ってくださいという雑な要望に対して10分程度の所要時間で処理を完了させてくれるのでよい。五反田駅前まで来たのでアトレ五反田のQBハウスで髪を切ってから、五反田東急スクエアで少し買いもの。ブックファースト、KALDI、無印良品、東急ストアを梯子する。

昼食として、鶏ハムとサニーレタスとチーズをディジョンマスタードとマヨネーズを塗って食パンで挟んだサンドイッチを食べる。自宅シネマ。赤ワインを飲みながら『汽車はふたたび故郷へ』(オタール・イオセリアーニ/監督、2010年)を鑑賞。2012年の劇場公開時に見ているので再見となるのだが、所々のショットが記憶の片鱗として泛かんではくるものの、内容はあまり憶えておらず。神保町の岩波ホールで見たとき上映中に地震があって揺れたことはよく憶えている。

夕食は軽く。蛸と長葱の醤油炒めと蓮根の煮物、麦酒。夜、読書。四方田犬彦『愚行の賦』(講談社)を読む。

ドゥルーズのモノのいい方には寅さんが縁日で万年筆や手鏡を売っているようなところがあって、読んでいるうちにしだいに怪しげにノセられてくるのだが(p.32)