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Monday, September 2

早朝、今月だけの期間限定で放送しているエルメスのインターネットラジオを聴いている。クラシック音楽を流す30分番組が朝食どきに心地よいので、期間限定といわずずっとやって欲しい。

郵便受けに届いた『UP』(東京大学出版会)と『みすず』(みすず書房)に目をとおす。『みすず』の目次に山形浩生の名前があるので文章を寄せているのかと思ったら、翻訳したアダム・トゥーズ『ナチス 破壊の経済』の訳者あとがきからの抜粋で、それでいいのかという感じである。

朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、ベビーリーフ、トマト、バターロール、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、お弁当。晩ごはん、オムライス、麦酒。

夜、Lana Del Rey「Norman Fucking Rockwell!」を聴く。夏の終わりの気怠さに合う。

Tuesday, September 3

蒸し暑い。鈴木透『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』(中公新書)を読む。総論に惹かれる視座はないものの、具体的な歴史的事実をのべる各論はおもしろくてためになる。

小谷元彦が出演するというのでエルメスのラジオを再生する。以前に別のラジオで佐藤オオキともしていた、非公開設定で食べログにメモを取っている話をまたしている。この話題のとき小谷元彦は饒舌になる。

朝ごはん、スキレットで目玉焼き、ソーセージ、人参、キャベツ。バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、お弁当。晩ごはん、素麺、大根おろし、ねぎ塩スープ、トマト、麦酒。

夜、Mickey & Sylvia「New Sounds」を聴く。

Wednesday, September 4

涼しい。大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)を読む。

エコノミスト誌のアプリ「Economist Espresso」で本日のニュースを読んだらジャニー喜多川の話題がでてきて、なぜきょうジャニー喜多川なのかと思ったら、お別れ会が東京ドームで催されるらしい。エコノミスト誌は日本の空気を読むようなことはしないので、記事の内容はジャニー喜多川の性的虐待疑惑のことがほぼすべて。

朝ごはん、スキレットでソーセージ、目玉焼き、玉ねぎ、キャベツ。バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、お弁当。晩ごはん、鶏肉のコンソメ白ワイン蒸し、クレソン、レモン、赤ワイン。

夜、Screamin’ Jay Hawkins「At Home With Screamin’ Jay Hawkins」を聴く。

Thursday, September 5

池内紀の訃報を知る。本棚から池内紀の名前が記された本を探す。少し前に池内恵がtwitterで父親の書くものについて一筋縄ではいかない考えを連投していたが、冒頭「不義理なもので年に一度も会うことはありませんが」と書いていたのがとてもよい。

香港の動向を報道で追いながら読書。筒井清忠が編纂した『昭和史講義【戦前文化人篇】』(ちくま新書)を読む。執筆者のなかで井上章一の文体がひらがなが多くて浮いている。

朝、目玉焼き、ベーコン、グリーンリーフ、ミニトマト、バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、お弁当。晩ごはん、メカジキの白ワイン蒸し、クレソン、ミニトマト、レモン、蛸とオリーブ、バゲット、黒ビール。

夜、Ray Charles「What’d I Say」を聴く。

Friday, September 6

本日は有給休暇。午前中に映画を一本見る。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『密告』(1943年)。ナチス占領時代のフランスでつくられた映画だそうで、ドイツ資本の映画会社のもとで制作されたがゆえに、クルーゾーは戦後2年間監督業を禁じられたと英語版のWikipediaにある。制作の経緯も後味が悪いが、映画の内容もまた後味の悪いもの。

玄関をでるとまだ夏の陽気。ひさかたぶりに新宿の伊勢丹へ。メンズ館がさま変わりしていて驚くのだが、あとで調べたらリニューアルしたのは今年3月だという。かつての輝きは消えて経営的にも苦境に立たされている伊勢丹。でも、地下食料品売場を物色しつつメンズ館に向かう通路を歩くと、よし買いものをするぞと気分が高揚する。この雰囲気は捨てがたい。革靴を二足買う。

ディスクユニオンとタワーレコードに立ち寄って少し時間をつぶすも何も買わず。タワレコで新譜チェックに重宝するフリーペーパー『intoxicate』を貰う。

朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、サニーレタス、トマト、バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、ざる蕎麦。晩ごはん、鶏肉の白ワイン蒸し、サニーレタス、茄子のオリーブオイル焼き、トマト、レモン、麦酒。

Saturday, September 7

ニューヨークで春夏コレクションがはじまる。

小西康陽のコラムをまとめた『わたくしのビートルズ』(朝日新聞出版)を読んでいたら、日記の欄につぎのようなくだりがあった。

帰り道の坂を上がる途中、見知らぬ男に呼び止められる。道を尋ねているのか、と思えば、財布を落としたので広尾駅から西船橋に帰る電車賃三百円を借りたい、という。けっきょく小銭入れの中の五百円玉を渡して別れる。こういう時、親切にしても断るにしても、心にはやはり何かが残る。それが不快。

意図しない出来事に巻き込まれたことで残るざわめきがなんとも嫌だ、というのはよくわかる。共感。しかし一方、ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』(1987年)で人間になったブルーノ・ガンツが通りがかりの男性に珈琲代を貰う場面があって、あのシーンはとても好きだ。矛盾している。映画だからかいいと思うのだろうか。それとも通行人の男の小銭の渡しかたがスマートだったからか。

図書館で本を返したり借りたり。渋谷の東急ハンズで白熱電球を買う。いまや白熱電球は販売している場所が少ないので探すのに苦労する。完全に生産が停止されるまでLED電球に切り替える意志はゼロ。電球を買うついでに、腕時計のベルトが草臥れてきたので交換する。帰りに「HMV record shop」に立ち寄るも何も買わず、渋谷ヒカリエに入っている「LE PAIN de Joël Robuchon」でバゲットを買って自宅に戻る。

朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、ミニトマト、春菊のオリーブオイル炒め、バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん兼晩ごはん、気楽な身分で佇んでいればよい集まりで寿司や焼鳥をご馳走になる。

夜、就寝前の読書。千葉雅也『アメリカ紀行』(文藝春秋)を読んだ。

Sunday, September 8

窓ガラスを雑巾で拭くためにベランダにでたらきつい陽射しを浴びる。夏が終わってくれない。真夏の京都旅で購入した珈琲豆、「市川屋珈琲」と「roastery DAUGHTER」のものを使い切って、本日からは「珈琲焙煎所 旅の音」で手に入れたグアテマラの豆を挽く。珈琲を飲みながらアルゲリッチが奏でるラベルを聴いた。先日「古書ほうろう」で買ったレコード。

暑いうえに台風接近中なので終日自宅ですごす。部屋を掃除してクローゼットの洋服を整理してから、プロジェクターで映画を見る。増村保造『黒の報告書』(1963年)。終始エネルギッシュにハキハキと喋る宇津井健。検事の挫折の物語だが、敗北しても元気よく喋る30代前半の宇津井健。

山口晃が出演するというのでラジオエルメスを聴く。午後1時から。謙虚な語り口から謙虚さとはちがうものが滲みでているのがいい。

午後も映画鑑賞。「六花亭」のマルセイバターサンドとヱビスの黒ビールをおともに、アルフレッド・ヒッチコック『引き裂かれたカーテン』(1966年)を見る。東ドイツからのスパイ脱出作戦。ところで、「ベルリンの壁」を誤解してベルリンを境にドイツ東西が分断されていたというのは、現代史理解不足あるあるだが、冷静に考えればその発想のほうがよほど常識的である。飛び地のベルリンが壁で東西に分断されていた歴史上の事実のほうがどうかしている。

朝ごはん、目玉焼き、ベーコン、ベビーリーフ、かいわれ、トマト、バゲット、ヨーグルト、珈琲。昼ごはん、日清チキンラーメン。晩ごはん、焼豚と九条ねぎと生卵と海苔をのせた醤油ラーメン、麦酒。昼夜連続でラーメン。