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Monday, June 10

冷たい雨が降る。肌寒いを超えて、寒い。体調を崩しそうなので、崩すまえに予防として風邪薬を飲む。

大塚英志『感情天皇論』(筑摩書房)を読む。全体をとおしての論理展開はやや謎と感じるところもあるのだが、いいたいことはわかる。

晩ごはん、白米、茄子と鶏肉とみつばの中華風わかめスープ、おでん、麦酒。

夜、Esperanza Spalding「12 Little Spells」を聴く。

Tuesday, June 11

読み止しとなっていたヘーゲル『精神現象学』(熊野純彦/訳、ちくま学芸文庫)を読む。熊野純彦が廣松渉に抗うようにしてひらがなを多用するのには慣れたつもりだが、しかしながら例外として、「結果」を「けっか」と書くのにはいつまでたっても慣れない。そんなに「結果」という漢字が嫌なのだろうか。

晩ごはん、焼豚とゆで卵と長ねぎと水菜をのせた醤油ラーメン、枝豆、麦酒。

夜、「Horace Tapscott With The Pan-Afrikan Peoples Arkestra ‎– Live At I.U.C.C.」を聴く。

Wednesday, June 12

『精神現象学』のつづき。とても咀嚼できないので、今後なんども繰り返し読むか、もう諦めるかの選択を迫られる。

晩ごはん、白米、ほうれん草とわかめの味噌汁、茄子と鶏肉と玉ねぎの酒蒸し、めかぶとわかめのポン酢和え、麦酒。

Thursday, June 13

内藤一成『三条実美 維新政権の「有徳の為政者」』(中公新書)と望月優大『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)を読む。

夜、『スターリンの葬送狂騒曲』(アーマンド・イアヌッチ/監督、2017年)を見る。スターリン死後の権力闘争を描いたコメディ、なのだがコメディとしてはやや微妙な出来栄え。製作国はイギリスとフランスで、出演者は英米の俳優がほとんどなので、舞台はソ連だが喋っている言語はロシア語ではなく英語だ。英語圏の話じゃないのに役者が英語で喋っているのは映画ではよくあることだが、こういうの、欧米人たちはどのように感じているのか気になる。

Friday, June 14

先日読んだ野村啓介『ナポレオン四代 二人のフランス皇帝と悲運の後継者たち』(中公新書)の主題のひとつに、ナポレオン三世の再評価があるかと思うが、日本においてそれは、15年程前に刊行された鹿島茂の著作『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』(講談社)で実践されていたはずと思って、いまは講談社学術文庫に収められている『怪帝ナポレオン三世』を読んでみる。冒頭、鹿島茂はナポレオン三世の悪評の理由をマルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』にもとめ、つぎのように書いている。

ようするに、ナポレオン三世は偉大なるナポレオンの出来の悪いファルスしか演じることはできなかったというものである。
こうした否定的イメージはとりわけ中年以上のインテリに根強い。なぜなら、このイメージは、彼らのアイドルだったマルクスによってつくられたからである。

ここで思い出すのは、ゴダールをめぐる松浦寿輝との対談における浅田彰の発言である。

フランス革命以後、近代化によって社会がアトム化されていくと、あるいはキリスト教によって、あるいは社会主義によって、失われた有機的な共同体を取り戻そうという、ロマンティックな疎外論の物語が出てきて、それが革命のイデオロギーになったわけですね。それが、しかし、多くの国では弾圧されるし、うまくいったはずのフランスでも、最終的にナポレオンの甥であるという以外に何の意味もない人によって全ての成果を簒奪されて第二帝政が成立するに至る。(浅田彰『映画の世紀末』新潮社)

対談は1996年に実施されたものらしいので、単純計算で浅田彰の年齢は40歳手前である。「中年以上のインテリ」のカテゴリーにはいちおう当てはまる。

Saturday, June 15

朝から晩までずっと雨が降る。読書。自宅の本棚から、ペーター・ツムトア『建築を考える』(鈴木仁子/訳、みすず書房)、コルタサル『遊戯の終り』(木村榮一/訳、国書刊行会)、『FRIDA KAHLO Making Her Self Up』(V&A Publishing)。夜は映画。『皇帝円舞曲』(ビリー・ワイルダー/監督、1948年)を見る。

Sunday, June 16

晴れ。図書館と買いもの。小野二郎『紅茶を受皿で』(晶文社)を読む。Connie Castro「Miscelánea」、Big Mama Thornton「Hound Dog」、Nilüfer Yanya「Miss Universe」を聴く。

夜、村上春樹のラジオを聴く。初期ビートルズのヒットソングをカバーしたもの特集。村上春樹の書くものにはまるで関心がないのだが、このラジオ番組は毎回欠かさず聴いている。