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Wednesday, March 6

小説はともかく哲学の本は、日本語としての滑らかさが犠牲になるとしても、翻訳は逐語訳であるほうがいいと思っている人間なので、光文社古典新訳文庫の姿勢には共鳴しないところもあるのだが、古典新訳文庫を生んだ編集者の回想録である駒井稔『いま、息をしている言葉で。 「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』(而立書房)は、とてもおもしろく読んだ。むかしながらの編集者による武勇伝といってしまえばそれまでだが。

Thursday, March 7

ローレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』(朱牟田夏雄/訳、岩波文庫)を読了。近代文学のはじまりは、はじまりからポストモダンだった。

渡邉泰彦『評伝ロバート・モーゼス 世界都市ニューヨークの創造主』(鹿島出版会)を読む。

小津安二郎の初期作品を三本見る。『和製喧嘩友達』(1929年)『大学は出たけれど』(1929年)『突貫小僧』(1929年)。昨年末に終了したTBSラジオの「菊地成孔の粋な夜電波」で、意想外なそっくりさんを見出す「ロレックス」なるコーナーが存在したが、もしもあのコーナーに投稿する機会があったならば、斎藤達雄と吾妻光良を挙げただろう。

Friday, March 8

蒲生昌明『ソ連歌謡 共産主義体制下の大衆音楽』(パブリブ)を読む。共産趣味インターナショナルのシリーズ。旧ソ連の歌謡曲なんてSpotifyにないだろうと思って検索したら、わりとじゃんじゃか出てくる。

Saturday, March 9

目黒のJubilee Coffee and Roasterで休憩してから、東京都庭園美術館で「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」を鑑賞。移動中に重田園江『隔たりと政治 統治と連帯の思想』(青土社)を読む。

Sunday, March 10

恵比寿のRue Favartで昼食。

東京都写真美術館で「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」を見てから、写真家本人によるアーティストトークを聴く。しかしこれは、アーティストトークというより展覧会の内容と対となるパフォーマンスのようなもので、このトークを聴いた人と聴かなかった人とでは展覧会の印象に大きな差がでるように思い、はたしてそれはよいことなのだろうか。

同時開催中の「写真の起源 英国」が素晴らしい。作品保存のための冷房が強烈で、極寒のなか鑑賞しなければならないが、寒さに耐えてでも見る価値あり。

今週聴いたもの。
・Recomposed By Max Richter: Vivaldi, Four Seasons / Max Richter
・Silk Degrees / Boz Scaggs
・Schumann: Cello Concerto & Chamber Works / Gautier Capuçon
・Better Oblivion Community Center / Better Oblivion Community Center