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Monday, December 17

キャサリン・マンスフィールド『マンスフィールド短編集』(安藤一郎/訳、新潮文庫)を読む。

夜、ピザを食べながらの映画鑑賞。『恋恋風塵』(ホウ・シャオシェン/監督、1987年、台湾)を見る。

Tuesday, December 18

『OZ magazine』(スターツ出版)のバックナンバーから京都特集を拾って確認している。2017年3月号『OZ magazine 春の京都へ』と2018年10月号『OZ magazine TRIP 秋の京都へ』の二冊。何年か前の京都への旅で訪れたおばんざいの店「太郎屋」の紹介が二冊ともに載っているのだが、掲載されている二枚の写真がまったくおなじものだった。紙面のレイアウトの都合でトリミングの仕方はやや異なるものの、完全に使いまわしである。編集部の手抜きを発見してしまう。もっとも写真はおなじでも紹介の文章はちがっている。そしてその差異が気になる。以下、前者は2017年3月号、後者は2018年10月号である。

地元の人がおばんざいを食べたいときに気軽に訪ねる創業26年の人気店。にしんと茄子の炊いたん520円、いちばんに売り切れるポテサラ500円などカウンターに季節の定番と日替わりが15品以上並ぶ。女将さんがお姑さんに受け継いだ京の家庭の味を娘さんとともに振る舞ってくれる。

烏丸の小路に24年前からのれんを掲げ、地元客からの支持も高い。その秘密がおばんざい。女将がお姑さんから受け継いだ昔ながらの家庭の味だ。今は娘さんも加わり、季節料理と合わせて約60種のメニューを提供。大鉢料理が並ぶカウンター席で、ひとりでも気兼ねなく食事を。

ふたつの文章をならべて読むと、いったい太郎屋は創業何年なのか不明になるのだがそれはともかく、あきらかに後者のほうが前者よりも文章がちゃんとしている。前者の最後のくだりにある「お姑さんに」は「お姑さんから」でないと意味がとおらないと思うし。なにやら後者が前者をリライトしたかような事態となっている。

Wednesday, December 19

クレメント・グリーンバーグ『グリーンバーグ批評選集』(藤枝晃雄/編訳、勁草書房)を読む。

モダニズムの絵画はその最近の段階では、それと分かるような対象の再現を放棄してきたが、それは原則としてのことではない。モダニズムが原則として放棄してきたのは、それと分かる三次元の対象がその中に存在し得る類の空間の再現なのである。抽象性もしくは非具象性は、たとえカンディンスキーやモンドリアンのような卓越した芸術家がそのように考えていたとしても、今なお本質的には絵画芸術の自己−批判の中で完全に必須の契機であることは立証されていない。再現つまり図解することそれ自体が、絵画芸術の独自性を減ずるのではない。そうするのは、再現されている事物についての連想である。それと分かる実在物は全て(絵画自身をも含めて)三次元空間の中に存在しており、それと分かる実在物のほんのわずかの示唆でも、その種の空間の連想を呼び起こすには充分なのである。人物像のもしくは茶碗の断片的なシルエットでもそうであろうし、そうであるせいで、絵画空間を一芸術としての絵画の自立を保証する二次元性から引き離してしまうだろう。三次元性は彫刻の本分であり、絵画はそれ自身の自律性のために、何よりも彫刻と分かち持っているかもしれないものは全て取り除かなければならなかった。そして、絵画が自らを抽象的なものにしていったのは、これを行うための努力の過程においてであった、(繰り返して言えば)再現的なものや「文学的な」ものを除去するのは大したことではない。

夜ごはん、海鮮丼(まぐろ、いくら、さば)、小松菜の味噌汁、麦酒。

Thursday, December 20

フェルナンド・ペソア『不穏の書、断章』(澤田直/訳、平凡社ライブラリー)を読む。

旅をすると考えただけで吐き気がする。

想像すれば、私には見える。わざわざ旅などして、それ以上なにをするというのか。感じるために移動しなければならないのは、想像力が極度に脆弱な人間だけだろう。

夜ごはん、ほうれん草とトマトのパスタ、ベーコンとグリーンリーフのバジルソースサラダ、バゲットとパテ、赤ワイン。

Friday, December 21

会社帰りにエコノミスト誌の年末号を買おうと東京駅ちかくの丸善に寄るも、まだ店頭には並んでいなかった。かわりに年間ベストが特集されている『ミュージック・マガジン』を買う。この雑誌を買うのは何年ぶりだろうか。丸善の入っている丸の内オアゾで食事処をさがす。小松庵で鴨南蛮蕎麦と麦酒の夕食。食事のあとに丸の内のイルミネーションを見物する。ほかの場所のド派手なライトアップに比べればだいぶ品があって好ましく、クリスマス直前のイルミネーションを見るのは丸の内ときめている。有楽町方面まで歩いて、銀座のAUX BACCHANALESで少し休憩。ギネスを飲みながら、入り口に置いてあったフリーペーパー『OVNI』を読む。パリで発行されている日本語情報誌。パリ在住者のための媒体なので、日本に住んでいる人間が読んでもなんの役にも立たない情報もまじっている。たとえば、冒頭つぎのように述べられる料理のレシピとか。

ウサギを丸ごと買って、「Voulez-vous bien le désosser」と頼んで骨を切りはずしてもらう。

帰りの電車で『メトロミニッツ』1月号(スターツ出版)を読む。

Saturday, December 22

『岡村靖幸 結婚への道 迷宮編』(マガジンハウス)を読む。『GINZA』連載の単行本化第二弾。マガハの雑誌における対談ものは大抵、表層をなぞるだけの浅薄な内容で一瞬で読み終えられるものがほとんどだが、前著もそうだったけれど本著もまた、岡村靖幸のインタビュアーとしての能力の高さもあって読了するまで時間がかかる。

夜、映画二本立て。『イレブン・ミニッツ』(イエジー・スコリモフスキ/監督、2015年)と『ダージリン急行』(ウェス・アンダーソン/監督、2007年)を見る。

Sunday, December 23

図書館と買いもの。『岡村靖幸 結婚への道 迷宮編』をようやく読み終える。

相場正一郎『30日のパスタ』(mille books)を読む。IDÉEがやっているウェブサイトをつうじて著者の住むマンションについて知っており、『KINFOK』をつうじて著者がサーフィンをやることを知っており、『MONOCLE』をつうじて週末を那須にある山の家で暮らしていることを知っている。なお、著者の経営する代々木八幡にあるレストラン「LIFE」には行ったことがない。

夜ごはん、蒸し餃子、レタスとたまごの炒めもの、キムチ、麦酒。