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Monday, February 6

ここ数年『みすず』(みすず書房)の読書アンケート特集を読むなかで気になっているのは、つぎの三点である。
・五点以内との依頼を無視して六冊以上挙げる人が必ずいる。
・キャロル・グラックの原稿が長すぎる。
・坪内祐三の存在が浮いている。
気になる上記三点は、今年も踏襲された。

『みすず』の読書アンケートの特徴は、たんなる書籍紹介にとどまらず、執筆者の思想性があからさまになるところにあると思う。みすず書房が原稿依頼を出すような相手であるから、執筆者のほとんどが基本的には「リベラル」であることは確かだが、ひとくちに「リベラル」といっても幅があるので、この回答者とこの回答者を対談させたらきっと険悪な雰囲気になるな、などと趣味の悪い読みかたをしている。

趣味の悪い読みかたでバチがあたったのか、終日体がだるくて寒気がする。

Tuesday, February 7

発熱と悪寒と倦怠で会社を休む。今年はなるべく健康でいたいという望みは38日目にして絶たれる。前月24日の風邪の予感は「ルルアタックEX」を飲んでもちこたえたものの、今回はあえなく撃沈。数日前には腰が痛くて薬局に「ロキソニンSテープ」を買いにいったので満身創痍である。

『UP』2月号(東京大学出版会)を読む。山口晃の漫画が珍しく(?)ためになる話で、実作者ならではの視点でセザンヌの絵画を説明している。

Wednesday, February 8

「ルルアタックEX」が効いて、熱が下がってだるさが抜ける。

Thursday, February 9

ぶり返す。一度体調を崩すと数週間は具合の悪い状態がつづく身体なのだから、わずか一日で完治するはずもなかった。

パウル・クレー『造形思考』(土方定一・菊盛英夫・坂崎乙郎/訳、ちくま学芸文庫)を読む。

芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、見えるようにすることにある。たとえば、線描の本質はともすれば抽象に向かうが、当然のことだ。もともと線描芸術には、想像力の産物ともいうべき幻想性や童話的な性格が備わっており、同時にその性格がここでは実に正確に表現される。線描は純粋になればなるほど、いいかえるならば、線的な表現の基礎であるフォルム諸要素に重点がおかれればおかれるほど、見えるものをリアルに表現しようとする足場を失っていく。

Friday, February 10

エコノミスト誌の記事で知ったのは、南米の環境保護活動家は殺される率が高いということ。メキシコの先住民活動家Isidro Baldenegro Lópezさんが先月暗殺されたそうだが、彼の父親もまたおなじように殺されているという。南米は環境資源が豊富なので利権がずぶずぶらしいのだが、それにしてもしかし、環境保護の活動家って殺されるのかと驚く。命がけのエコ。

Saturday, February 11

具合が悪いので自宅でおとなしく読書。『現代思想』(青土社)から、2月臨時増刊号(特集=神道を考える)と2月号(特集=ビットコインとブロックチェーンの思想)を読む。ビットコインの特集にある、斉藤賢爾の話をおもしろく読む。

夜、自宅シネマ。ひさしぶりに見返した『シンドラーのリスト』(スティーヴン・スピルバーグ監督、1993年)は、なんてスピルバーグの映画! と感服する。ホロコーストのエンタメ化。『シンドラーのリスト』についてクロード・ランズマンがメロドラマだと批判したのもよくわかるけれど、メロドラマとしてとてもよくできていることにさすがスピルバーグだと感心してしまった。

Sunday, February 12

体調はいまいち。『Aesthetica』2/3月号を読む。