Monday, January 16
青土社の雑誌『現代思想』をまともに読んでいたのは2003年くらいまでで、思想的な化粧を施した新自由主義批判の繰り返しに食傷気味となったのがこの雑誌から離れたおもな理由だけれど、ひさかたぶりに図書館で借りて読んだ2017年1月号(特集=トランプ以後の世界)は、編集長は変わっていたが、かつて読んでいたときと似たような退屈さをおぼえた。時事的な問題をあつかう際の、「思想」の限界を思う。
Tuesday, January 17
尾仲浩二責任編集の『街道マガジン』vol.4を読む。パリフォト前後に半月ほど渡欧するという尾仲浩二が、フランス滞在のためのパスポート残存有効期間が足りず、羽田空港から引き返すことになった顛末が書いてある。恐ろしい話。
Wednesday, January 18
会社帰りに有楽町へ向かう。BARNEYS NEWYORKで手袋を買って、銀座三越で財布を買う。
沢木耕太郎『246』(スイッチ・パブリッシング)を読了。沢木耕太郎に関して驚かされるのはその交友関係の広さで、「職業柄」という説明では納得しがたいほどの幅広い人脈を有しているのが不思議でならない。
Thursday, January 19
『現代思想』1月臨時増刊号(総特集=九鬼周造)を読む。松岡正剛が「九鬼周造の論文的な文章を読むのはかなり辛いものがある。文章があまりに堅すぎて、味わえない。着物の抜き衣紋、略式に結った髷ぐあい、舌ざわりや三味線の「さはり」などに「いき」を感じてきた伊達男の書きっぷりとは、とても思えない」と書き、山内志朗が「九鬼周造の『「いき」の構造』を読むと、粋な感じよりもむしろゴツゴツした感じがする」と書くのだが、九鬼周造の仕事は野暮だ、という話はあまり聞かない。硬直的な文体で「いき」の構造を分析するなど、ふつうに考えてみれば野暮にしかならないはずなのだが、そう感じないのはなぜだろう。
Friday, January 20
1月20日はドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に就任する日。就任式は日本時間だと翌日の午前2時なので、こちらは寝ているけれども。トランプに関してはわからないことはいくらでもあるが、彼の思考における優先順位は本当にさっぱりわからない。どうしていまなおメキシコとの国境に壁をつくることに執着しているのか。彼の「公約」のなかでもっとも与太話っぽいのが「壁をつくる」だと思うが、どうも本気っぽい。本気であることの意味がわからない。
Saturday, January 21
朝起きてニューヨーク・タイムズのウェブサイトを確認すると、アメリカ大統領就任式のライブ中継映像が流れており、ちょうどパレードの途中だった。トランプが沿道に向かって手を振っている。部屋を軽く掃除して、植物に水をやり、朝食の準備をし、食べ終わってからふたたびライブ映像を確認すると、まだパレードをやっている。長いな。そしてトランプよりバロン君のほうが気になる。
報道によれば、当然のごとくトランプ反対派による抵抗運動が発生したようだが、反対派の一部は暴徒化した。その暴徒化した映像を見てさすがアメリカだと思ったのは、暴徒化が本当に暴徒化と呼べるもので、なにしろ暴れすぎである。日本の成人式で暴徒化とかいっているのはおままごとだなと感じ入る次第である(比較するような話ではないが)。
ニューヨーク・タイムズの記事で、イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転する話題が挙がっていたけれど、『現代思想』のトランプ特集で臼杵陽がこの問題にふれていて、つぎのような悲観的な見通しを述べている。
さらに、新政権の副大統領に予定されているマイク・ペンス・インディアナ州知事は、大学時代にカトリックからキリスト教福音派に改宗して「キリスト教シオニスト」として熱烈なイスラエル支持者としても知られている。したがって、トランプ政権下では、アメリカ大使館がテル・アヴィヴからエルサレムへの移転が実現されるだろうとイスラエル側は大いに期待しているのである。しかし、もしアメリカ大使館が移転されれば、アラブ諸国のみならずイスラーム世界でもアメリカの政治的威厳は失墜することになる。外交レベルの話ではなくなり、外交的破局といってもいい結果を招くことになろう。実際、この移転に関しては、これまでの歴代大統領は上下院での移転決議にもかかわらず、外交問題に関する大統領権限で拒否してきているのである。
外交的破局になるかどうかはともかく、トランプの中東政策を見据えるうえでポイントとなる問題であることは確かだろう。トランプの頭のなかに「中東政策」なるものが存在するのか知らないけれども。
Sunday, January 22
アメリカ大統領就任式のつぎの日のニュースが、アメリカ大統領に反対する大規模なデモ(Women’s Marches)にかんする話題というのは、なかなか歴史的な事件かもしれない。