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Monday, February 15

とあるカフェで流れていた曲が読書の邪魔をしないながらも耳に残る楽曲で、曲名はなんだろうとずっと気になっていたのだが、ゴンチチがMCを務めるNHKFMのラジオ番組「世界の快適音楽セレクション」を聴いたらちょうどその曲が流れ、アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」だとわかった。「鏡の中の鏡」はひとむかし前の語法でいえば「癒し系」とでも形容されそうな音楽で、癒し系に興味はないとしても、耳に心地よい曲だとは思う。エストニア生まれの作曲家であるペルトの名は、現代音楽界隈についてあまり明るくないわたしでも知っているので、あの多分にマニアックな業界のなかでは著名な存在に位置する人であろう。ところでペルトの名前を聞いて思い出したのは、ジャン=リュック・ゴダールが『新ドイツ零年』(1991年)や『JLG/JLG』(1995年)のなかでペルトの音楽を使用しているのだが、それに関しての浅田彰と松浦寿輝によるつぎのようなやりとり。

浅田 僕はペルトなんて最終的には下らないと思うんですけど、下らないと言うのは、やはり僕が単に否定的な批評精神であるからなんで、ゴダールは平気で使い、使うことで救っちゃうわけですよ。
松浦 ペルトって何だかBGMみたいでさ・・・・・・。
浅田 そう、「魂の癒し」のためのBGMですよ(笑)。それが、例えば『新ドイツ零年』でエディ・コンスタンティーヌが教会に入っていったときに、一瞬「ヨハネ受難曲」の冒頭部分が流れて、鳥が啼いたりガーンと鐘が鳴ったりして、そうすると、この音楽はもうそれで救われるんですね。
(浅田彰『映画の世紀末』新潮社、p.114)

ずいぶんな言われようである。もっとも読書の邪魔をしない音楽なので、BGMなのは確かではあるが。

朝、ピザトースト、サニーレタス、珈琲。
昼、弁当。
夜、ベーコンと小松菜としめじのアンチョビパスタ、サニーレタスとトマトとじゃがいものサラダ、赤ワイン。

Tuesday, February 16

アレックス・ダンチェフ『セザンヌ』(二見史郎・蜂巣泉・辻井忠男/訳、みすず書房)を読む。2012年に出たセザンヌの評伝の翻訳で、みすず書房から9000円もする価格で翻訳が出た。ペーパーバックはずっと安いので原書に挑戦しようかと一瞬思ったが、翻訳に少し目を通したら固有名詞の洪水で、これはとても英語で読める気がしないと図書館で借りる。しかし分厚い本なので、翻訳ですら読んでいる途中で返却期限を迎えた。

朝、トースト、バター、ソーセージと玉葱とトマトのグリル、サニーレタス、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、油揚げと小葱の味噌汁、ひじきの煮物、豚肉とかぶの葉の柚子胡椒炒め、人参のピクルス、きのこのバルサミコ酢炒め、カイワレ大根、麦酒。

Wednesday, February 17

田中素香『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書)を読む。現在のユーロ圏でイニシアティブを握るドイツに対して、終始批判的な著作。ほとんどドイツ批判の本といってもよい。積極的な量的緩和政策を評価する著者の立場からすれば、緊縮政策に躍起となるドイツに批判的なのは理にかなっており、経済政策をめぐる論点としては頷ける部分も多々あるのだが、最後のほうになると、何かドイツで嫌なことでもあったのですか? と訊きたくなるような筆致があらわれる。

ドイツは東欧に生存権を確保するというナチス・ドイツの野望を、東欧のEU加盟・EU単一市場とユーロを利用して平和裡に実現した。当時、植民地敵国主義として争った英仏両国は植民地独立によって普通の国となり、ソ連崩壊後は核武装の強みも消えてしまった。ドイツの「独り勝ち」はその当然の帰結ともいえる。ドイツは中国・ロシアと直接交渉できる産業力と政治力を獲得した。そうしてドイツは自立し、ヨーロッパの超大国としてEU諸国を屈服させている。ヨーロッパの最強国にはなったのだが、ギリシャ反乱への対処に示されたように、勢力圏の安定という公共財を提供しないドイツを「覇権国」ということはできないであろう。(pp.238-239)

ナチスの野望を平和裡に実現したなどというくだりは、ドイツ語に翻訳してドイツ人に読ませたら怒りそうである。

NHKのラジオで松浦寿輝の「ミュージック・イン・ブック」を聴く。ゲストは磯崎憲一郎。磯崎憲一郎の話で、朝の通勤時にガルシア・マルケスの『百年の孤独』を読み始めて、これは読み続けなければならないとその日は会社を休んだというエピソードがよかった。

朝、食パン、サニーレタス、茹で卵、珈琲。
昼、弁当。
夜、ぶりとベーコンとピーマンの白ワイン蒸し、玉葱とトマトのコンソメスープ、パン、麦酒、赤ワイン。

Thursday, February 18

Yahoo!ニュースを眺めていたら、SankeiBizの記事で「大手企業で運動会など再評価 一体感醸成に効果「リアルな交流できる」」という不穏な見出しが掲載されており、予想どおりというか、該当記事のコメント欄は勘弁してくれという意見が殺到していた。そもそも社員の一体感を醸成する必要など果たしてあるのかと問いたいが、百歩譲って一体感の必要を仮に認めるにしても、でてくるアイディアが「運動会」という事態に、村落共同体的な感性のしぶとさを思う。

朝、目玉焼き、トマト、サニーレタス、バゲット、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、かぶと長葱の味噌汁、小松菜のおひたし、豚キムチ、かぶの漬物、麦酒。

Friday, February 19

iPadでエコノミスト誌を読む。

朝、トーストとバター、目玉焼き、ソーセージと小松菜のグリル、珈琲。
昼、弁当。
夜、鶏肉の赤ワイン蒸し、人参ときゅうりのサラダ、オニオンスープ、ブレッド、赤ワイン。

Saturday, February 20

悪天候の中、広尾に向かう。ARATANIURANOで小西真奈「On Location」を鑑賞。最終日は高嶋雄一郎(神奈川県立近代美術館主任学芸員)と小西真奈のトークイベントがあって、話のなかで出たバルテュスが好きだというのは少し意外な気がした。バルテュスの絵画にそこはかと漂う意地の悪さのようなものは小西真奈の絵にはないので。

朝、ヨーグルト、茹で卵、珈琲。
昼、鶏蕎麦、ほうじ茶。
夜、ビーフカレー、トマトのスープ、玉葱とベビーリーフ、麦酒。

Sunday, February 21

昨晩体調を崩すも、薬を飲んで持ちこたえる。

昼前、新聞を読んでから近所の商店街へ。空になったいくつかの花瓶の補充にと花をたくさん買うも、高額にならずに済んだ。ふだん使いのできる花屋が近所にあることは、生活のうえで重要視したい項目のひとつ。

午後、プリンと珈琲をおやつに日が暮れるまで読書。『メトロミニッツ』3月号(スターツ出版)、小畑雄嗣『二月 Wintertale』(蒼穹舎)、宮本隆司『九龍城砦』(平凡社)、森岡督行『本と店主』(誠文堂新光社)を読む。

朝、ベーコンとスクランブルエッグのトースト、ヨーグルト、珈琲。
昼、鶏粥、きゅうりと味噌、緑茶。
夜、蒸し餃子、舞茸と卵の中華風スープ、サニーレタスとしらすのサラダ、キムチ、麦酒。