Monday, February 8
日本銀行のマイナス金利導入をめぐって、審議委員による見解の概要を羅列した「金融政策決定会合における主な意見」が公表された。中身を読むと、明確な意見の対立をもって議論されたことが窺え、経済論戦として大変興味深いので、議事録の公表が10年後になるのはなんだかもったいない気もする。
『UP』2月号(東京大学出版会)に目をとおす。加藤陽子の連載にはモリナガ・ヨウのイラストが毎度添えられており、そのなかでNHKの番組で加藤陽子が「私は「松岡に甘い」と学生に言われます」と語っている様子が描かれている。松岡とはもちろん松岡洋右のことだが、これは『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)でも述べられていて、疑問に思うのは、学生たちはそんなにいつも「松岡に甘い」と加藤陽子に向かって言っているのだろうかということだ。もうほとんど自己紹介の惹句となっており、「松岡に甘いことでおなじみの加藤陽子」とプロフィールに掲げられる日が来るのも遠くはあるまい。
酒井啓子『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』(みすず書房)を読み始める。『みすず』連載の原稿を中心にまとめたものなので、事実上ほぼ再読。
長いこと写真撮影はiPhoneのカメラ機能に委ねていたのだが、もはや棚のインテリアの一部と化していたFUJIFILM X10をひさしぶりに稼働させた。デジタルカメラが面倒になったのはSDカードの出し入れが煩雑という要素が大きかったけれど、世の中は移ろい、家電量販店を覘けばWi-Fi内蔵のSDカードなるものが販売されている。いまでも十分動作するFUJIFILM X10だが、2011年発売の製品なので、とうの昔に出荷終了品。
朝、トースト、ポテトサラダ、ミニトマト、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、油揚げと長葱の味噌汁、しらす、焼き魚(ほっけ)、大根おろし、玉葱とカイワレのサラダ、ピクルス、ビール。
Tuesday, February 9
酒井啓子『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』(みすず書房)のつづき。日本の中東研究者の書く文章は、どこかしら「熱い」。むろん個人差はあり、熱の温度にも高低あるものの、読んでいるとその筆致に熱さを感じる。論者によって立場の違いはあれど、読者を鼓舞するようなパッションが文章の節々に充溢している。もっとも発火の原因は、多くの日本人の中東問題に対する無関心への憤りかもしれないが。酒井啓子の本も、義憤と諦念の混じった炎がずっと燃え続けていた。
朝、トーストとバター、ソーセージ、目玉焼き、サニーレタス、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、長葱と大根の味噌汁、ほうれん草のおひたし、きゅうりと大根とパプリカのピクルス、豚肉と茄子の柚子胡椒炒め、ビール。
Wednesday, February 10
夏目漱石『それから』(岩波文庫)を読んでいる。汗牛充棟の観すらある漱石研究からすれば旧聞に属する話かもしれないが、漱石の小説はどうにも近代文学の布置から浮いている。国民的作家なのに。国民的作家であるがゆえに。本流が異端であるという転倒。
会社からの帰り道、冷たい風が身体を突き刺す。
アンドレ・バザン『オーソン・ウェルズ』(堀潤之/訳、インスクリプト)を読んで、サルトルが『市民ケーン』についてのネガティブな映画評を書いてウェルズ評価をめぐり論争になったことを初めて知る。堀潤之による訳者あとがきで、読もうと思ってすっかり忘れていた野崎歓『アンドレ・バザン:映画を信じた男』(春風社)のことを思い出した。
磯崎憲一郎がゲストだというので、NHKラジオ第1の「ミュージック・イン・ブック」を聴く(先週が初回だったが聴き逃した)。磯崎憲一郎が喋る声を初めて聴いた。
朝、ピザトースト、珈琲。
昼、弁当。
夜、近所のカフェにて。
Thursday, February 11
祝日の午前中は、珈琲を飲みながら松江泰治の写真集三冊を眺める。『jp0205』(青幻舎)、『JP-01 SPK』(赤々舎)、『LIM』(青幻舎)。最新作の『LIM』では各地の墓地を撮影しているが、松江泰治はなぜ墓に興味をもちだしたのだろう。
池袋の東京芸術劇場で「森山大道写真展」を見る。会場で、「あれ? 写真に説明はないの?」「ないよ。ほら、入口に書いてあるあれだけ」「あれだけ?」「そう、あれだけ。たいしたもんだよ」という中年男性ふたり組の会話が耳に入ってきたのだが、森山大道を相手に「たいしたもんだよ」と上から目線のあんたのほうが余程たいしたもんだよ、と思う。
池袋の西口から東口に移動し、明治通りをくだって古書往来座に向かう。良心的な値段で売られている往来座は好きな古本屋のひとつ。この古本屋であればきっと置いてあるだろうと予想し、推察どおりたくさん置いてあった『クウネル』のバックナンバーから歯抜けになっていたものを買う。棚を順繰りに見ていったら『&Premium』や『POPEYE』が「セット売り」されていたのに驚く。
池袋駅まで戻る道の途中で、クラフトビールのお店「PUMP craft beer bar」に寄る。IPAとケイジャンローストポテトを注文し、小休憩。
池袋のジュンク堂で開催中の「みすず読書アンケートフェア」を覗く。アンケートで取り挙げられた本が棚に並んでいるのだが、選定の基準がいまいちわからず。複数のアンケート回答者が言及していた、駒込武『世界史のなかの台湾植民地支配 台南長老教中学校からの視座』(岩波書店)などはこういう機会でなければ目に触れないような代物なので、一冊くらいは置いてほしいと思ったが、価格が税抜きで15000円もするので売れないという判断だろうか。しかし15000円の本って、税額でべつの本が買える。2006年から2010年の読書アンケートのバックナンバーをもってレジへ。
朝、ベーコンとトマトと玉葱とほうれん草のグリル、クロワッサン、胚芽パンとパテ、珈琲。
昼、白菜とベーコンのアンチョビパスタ、珈琲。
夜、焼きそば、葱塩スープ、大根ときゅうりのピクルス、ビール。
Friday, February 12
『週刊文春』がスクープを連発しているが、しかしその内容のほとんどは金と性愛をめぐる瑣事なので、どうでもいいといえばどうでもいいような話である。
有給休暇を取得した本日は、午前中にiPadでエコノミスト誌を読めるところまで読んで、午後は近所のカフェに出向きアレックス・ダンチェフ『セザンヌ』(二見史郎・蜂巣泉・辻井忠男/訳、みすず書房)を読めるところまで読んだ。
雑誌を休刊させてWEBに移行する事例が増え、WEBに向かうのが必然であるとか可能性であるとか語られたりもするが、詰まるところは「敗北」である。雑誌をつくっている人たちがWEBに全面移行したい筈などないのだから。東京23区のカルチャーガイドである『TOmagazine』が発行を取りやめると知って、残念に思いつつ公式サイトのアナウンスをよく読んだら『TOmagazine 世田谷区特集号[下編]』の発行を取りやめるが、『TOmagazine』の刊行自体は継続するという話らしい。「できるだけ多くの方々によりスピーディーで価値ある情報を届けるためには『TOmagazine』のWeb版である『TOweb』に注力することが肝要と考え、今回の判断にいたりました」とあるが、世田谷区特集号[下編]だけの刊行を停止する理由としては弱すぎて、なんだか想像のつかない事情がありそうで不気味である。
きょうの夕食は訳あって、オリーブオイルとドレッシングにDEAN & DELUCAの商品を使ったので、いつもより単価の高い夕飯。『CREA due trip 東京ひとりガイド』(文藝春秋)と『CLUÉL』1月号(THE BOOKS Publishing)を読む。
朝、トーストとバター、ソーセージと玉葱のグリル、サニーレタス、珈琲。
昼、月見うどん。
夜、牛肉のステーキ、トマトと玉葱のコンソメスープ、しらすとサニーレタスのサラダ、玉葱サラダ、バゲット、赤ワイン。
Saturday, February 13
花粉との闘いがはじまる季節の到来。
いつも混んでいるものの朝9時前に訪れれば余裕をもって座席を確保できる新宿サザンテラスのスターバックスに着席。チョコラティクランブルココフラペチーノを飲みつつiPadでエコノミスト誌。新宿南口から東口に移動する途中の売店で、ファイナンシャル・タイムズ紙を購入。紀伊国屋書店で最新号の雑誌をいくつか確認してから、伊勢丹に向かう。靴売場を物色し、革靴を購入。昼食は西口の三国一で。
いったん自宅に戻って、ウー・ホン『北京をつくりなおす 政治空間としての天安門広場』(中野美代子/監訳・解説、大谷通順/訳、国書刊行会)を読む。
夕方、日暮里駅から谷中霊園を抜けて、SCAI THE BATHHOUSEへ。ダレン・アーモンド「Within The Shadow of The Sun」を鑑賞後、夕食のため不忍通りまで歩く。イタリアン千駄木露地の開店時間まで往来堂書店で時間を潰し、集英社文庫のポケットマスターピース01『カフカ』(多和田葉子/編)を買う。露地で食べて飲んで。帰り道、西日暮里まで歩いて、古書ほうろうに立ち寄る。最近古書ほうろうに訪れるのは、酔っぱらう前か酔っぱらった後かのいずれかになっている。二冊購入。
朝、バゲット、サニーレタス、茹で卵、珈琲。
昼、三国一で肉うどん。
夜、千駄木露地にて。
Sunday, February 14
はりきって二日酔い。
日本経済新聞とファイナンシャル・タイムズ紙を読む。紙の本というメディアはデジタルデバイスが登場してもなお大変優秀な形式だと思うが、紙の新聞がこれまで生き続けてきたのは不思議な感じがする。けっして読みやすい形式とは言えないし。でかいし。バサバサうるさいし。
朝、ヨーグルト、珈琲。
昼、人参、小松菜、大根、葱のお粥、緑茶。
夜、白米、小松菜としめじの味噌汁、冷奴とトマト、玉子焼き、ひじきの煮物、かぶの漬物、きのこのバルサミコ酢炒め、焼き魚(鮭)、ビール。