227

Monday, July 27

ヒールのある靴をよく履くので、ヒール先のゴムを取り替えたり、すり減ってしまった場合は厚みを調整したりと、靴のメンテナンスにそれなりに情熱を傾けている。きょうはまだ一度も頼んだことのない靴修理店に初めて出してみたところ、ゴム付け替えの具合もとても上手で、加えてピカピカに磨き上げてくれて、新品同様のたたずまいになった。洋服や靴やバッグが大好きなので、こういう時、わーいわーいと万歳したいような喜びに包まれる。技工士さんに満面の笑顔で御礼を言う。お手入れ大事。

Wednesday, July 29

久しぶりにアレキサンダー・グロンスキーの『less than one』を眺める。やっぱりグロンスキーはすごい、素晴らしい。先日、鈴木理策の写真を観ていろいろ思ったけど、やはりわたしは(広義の)風景写真が大好きなんだなあとあらためて思う。グロンスキーの写真を観ると、風景が内包する人間の存在について考えさせられる。

Friday, July 31

朝ごはん、ピザトースト、ヨーグルト、珈琲。きのうもきょうも、iPhoneのお天気アプリで世界の気温を調べた。世界といっても、ワルシャワ、ヘルシンキ、パリ、コペンハーゲン、ストックホルム、オステンド、アントワープ、ブリュッセル、タリンの9都市だけであるが。どの都市も深夜だということもあるけれど、12度とか13度とか、10度台前半だというのがにわかに信じがたい。東京は午前7時、すでに30度に達しているのでは。

夜は近所のカフェで、キッシュ、サラダ、カレーライス。ビールはブルームーンを飲んだ。帰宅してから、今夜はブルームーンだということを知る。ブルームーンって何? 天体に興味がないのでわからない。

寝る前に、高橋みどり『わたしの器 あなたの器』(KADOKAWA)を読む。高橋みどりと高橋みどりも認める器づかいの達人たちが好んで使っている器を紹介する本。まえがきで「私にとって器は使うもの。これが前提です。器は料理を入れてはじめて成立する」と書いているだけあって、器に盛る料理のことや、毎日の献立の組み立て方、取り分け方などにも言及しているので、高橋みどりの食卓の風景を思い浮かべながら、いいなあ、とか、ああそのやり方は新鮮だから真似したいなあ、と楽しむことができた。

Saturday, August 1

8月になった。毎朝、午前4時半頃から蝉が鳴き始める。蝉より遅く起きると負けた気がする。今年はいつもより蝉の起床時間が早いような気がするから、あとで昨年の日記を読み返してみよう。明け方の蝉の声、クーラーの効いた部屋に飛び込むこと、汗が背中をツツーと流れていくのを感じること、素麺、夏野菜、夏祭り、花火、旅行、そして読書、こんなに暑いのを辛がっているのに、やはり夏には抗い難いほどに魅力的なものごとがあふれている。朝ごはん、トースト、クリームチーズ、ウィンナーと粒マスタード、ローストポテト、トマトときゅうり、ゆで卵、ヨーグルト、珈琲。支度をして出かける。

早稲田大学の會津八一記念博物館で「写真家としてのル・コルビュジエ」を観る。写真や映像のもつ有効性を非常に早くから認識していたコルビュジェは、1930年代に16ミリカメラを手にして、動画を撮りつつ、合間に静止画も撮影していた。今回の展示は、その静止画=写真をプリントして淡々と並べただけのシンプルな構成。1枚1枚をじっくり観ていった。波の文様、砂浜の足跡、貝殻、木材、にわとり、サボテン、建造物や風車や船のディテール、妻、母親、愛犬。動画作品は、1本がコルビュジェが撮影した映像で、もう1本がコルビュジェの孫弟子ともいえる鈴木恂に古谷誠章がインタビューしたもので、いずれもとても面白かった。鈴木恂は「今回展示された写真を観ると、コルビュジェは変化し続け、一時もとどまらない自然を数多く撮っていて、それが都市計画の仕事へと繋がっていったのかもしれないと思う。あと、被写体となった事物のもつ、圧倒的な存在感も感じる」「スケッチではつかみきれない、物事が変化していく様子をつかむのにカメラはうってつけのアイテムだったのでは」といった旨の解説をしていた。納得。

コルビュジェやその作品についてはしばしば見聞きする機会があるけれど、まだ全然核心に迫ることができていないので、今回の展示をきっかけに、自宅の部屋にある、未見のDVD-BOXを明日にでも観ようと思う。3年前に友人から、破格の値段で譲ってもらったこのDVD-BOX、ちんたらちんたらつまみ鑑賞してばかりいて、全3枚をいまだ観終えていない。

続けて、演劇博物館で「幻燈展ープロジェクション・メディアの考古学」を観たあと、早稲田通り沿いの古本屋を5軒ほどまわる(この炎天下に!)。心の中で「暑い~! 開けて~!」と叫びながらめぐる。気分は冬のニューヨークでギャラリーめぐりをする近藤聡乃 [1]。ルイス・バラガン建築の写真集『CASA BARRAGAN』を購入。お値打ち価格で良い買い物だった。お昼はCotton Clubでアマトリチャーナのパスタセット(サラダ、スープ、ドリンクバー付き)を食べて帰宅。

夕刻、再び出かける。いたばし花火大会へ(この花火大会は初参加)。花火大会は、会場に到着するまでの人混みと、到着してからの人混みが嫌で嫌でたまらず、それほど積極的に行こうとは思わないのだけれど、現地で目の前に大きく咲き誇る花火を見て、人々の歓声を聞く体験をしてしまうと、ああやっぱり来てよかったなーとしみじみ思われるのだった。

Sunday, August 2

昼、タラと水菜と黒オリーブのパスタ、白ワインをいただきながら『ル・コルビュジェ』(ジャック・バルサック監督、1987年)DVD-BOX第1巻〈初期編〉を観る。夜、餃子、もやしとトマトのサラダ、コロナビールをいただきながら、『ル・コルビュジェ』DVD-BOX第3巻〈後期編〉を観る。これでやっと全3巻すべて鑑賞、すべて観るのに3年かかった。怠慢。ちなみに〈初期編〉では、コルビュジェは「カメラはただシャッターを押せば撮れてしまう、それがつまらなくて絵を描き始めた」と言っていて、映像や写真を肯定的にとらえた発言はなかった。

  1. 厳寒のニューヨークでギャラリーめぐりをする時は、“ギャラリーからギャラリーへ飛ぶように移動する”らしく、「わ〜」「あけて〜」と言いながらギャラリーホッピングをするコマの絵がとっても可愛い。(『ニューヨークで考え中』亜紀書房、p.83 []