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Monday, July 20

昨夜は午前3時半に暑苦しくて目が覚め、起きてクーラーの風にあたり、再び寝て、あまりの暑さにまた4時半に起きて、カーテンと窓を開けたらもう蝉の声が鳴り響いていた。そしてまた数分間クーラーにあたって涼んで、とてもとても眠かったので三たび寝て、結局すこぶる眠い状態で6時半に起床。朝食、ハイジの白パン、グリーンリーフサラダ、キャロットラぺ、ゆで卵、ヨーグルト、珈琲。

伊地智啓『映画の荒野を走れ』(上野昂志・木村建哉/編、インスクリプト)をようやく読了。読み終えるのが延び延びになってしまったけれど、読み終えてしまうのがとても寂しく感じられる一冊で、つまり「ああ、終わっちゃった…」と、ため息とともに声が漏れるほどの面白さであった。著名なプロデューサーである伊地智さんは、相米慎二を見出した人でもあり、ほぼすべての相米作品にはさまざまな形で関わっている。わたしの目当てはその相米作品に関する部分であり、それは実際に読みごたえのあるものだったけれど、読んでみると、日活が経営難から会社をあげてロマンポルノ路線に舵をきっていくその過程が生々しく語られていて、ページを捲る手をとめられなかった。机上の方針として決定された時ではなく、制作の現場が、これから我々はロマンポルノをやっていくんだ、と腹を括ったその瞬間は、こちらも言葉を失ってしまうほどに、強烈だ。

この本は、2011年に刊行された『甦る相米慎二』(インスクリプト)での伊地智プロデューサーへのインタビューから派生したものであり [1] 、従って当然また『甦る相米慎二』を読み返したくなる。わたしにとっては2冊セット、ふたつでひとつ、のような愛しい本となった。

伊地智:彼(相米慎二)の映画っていうのはーー私が言うまでもないと思うんだけどーー役者で生きてる。役者がすべて。(『映画の荒野を走れ』p.143)

— 相米さんへの弔辞を伊地智さんが読まれています。そこに「生命力」という言葉をお書きになっている。「おまえの「生命力」を、おれも充分に楽しませてもらった」と。相米さんに感じた「生命力」とはどういうものでしたか。
伊地智:しつこい、しぶとい、めげない、音を上げない。それは痛感した。(同、p.323)

Thursday, July 23

きょうは鎌倉花火大会に行くつもりをしていたのだけれど、きのうの時点で、高波により打ち上げ場所の設営ができないだったかの理由で早々と中止が発表されてしまった。ざんねーーん。来年までおあずけ。

バゲット、レバーパテ、豚肉炒め、パプリカと玉ねぎとほうれん草のビネガー炒め、にんじんサラダ(ゴマだれ)、ゆで卵、玉ねぎのコンソメスープ、赤ワインの夕飯をいただきながら、録音しておいた松浦寿輝のラジオ「ミュージック・イン・ブック」を聴く。今月のゲストは高橋源一郎で、会話の中に、吉田健一の『金沢』や『ヨーロッパの世紀末』も出てきて、非常に面白い内容だった。もう一度聴こう。就寝前、青木淳吾『匿名芸術家』(新潮社)を読む。

Saturday, July 25

午前4時40分、目が覚めて、ラジオを聴きながらクーラーにあたって涼む。気持ちよくて二度寝してしまう。

きょうはようやく回復した夫の快気祝いということだけれど、単にこのところつくりたいなあと思いつつつくれていなかったメニューをつくって食べたいだけなのだ。

昼、わかめごはん、大根とほうれん草の味噌汁、あさりの酒蒸し、たこのわさび醤油和え、きゅうりおろしのせ冷奴、ビール。

夜、粒マスタードローストチキン、ニース風サラダ(グリーンリーフ、トマト、じゃがいも、きゅうり、いんげん、ツナ、黒オリーブ、アンチョビ)、クスクスのタブレ(きゅうり、赤パプリカ)、赤ワイン。

昼は夫が担当し、夜はわたしが担当したが、ふたりしてはりきり過ぎて、食べ過ぎた。

青木淳吾『匿名芸術家』を読み終える。青木淳吾の小説は迷子になる。いまA町x丁目y番z号にいるのかと思ったら、気づいたらD町にいた。あ、ちがった、J町だった。A町だと思って見ていた景色はD町でもなくJ町だった。でも自分がどうやってここまで移動してきたのかわからない。比喩とかじゃなく、読んでいて気持ち悪くなる、本当に気持ち悪くなる。でも、面白い。で、いままでは、「気持ち悪い→面白い→けどやっぱり気持ち悪い」だったのが、今回初めて「気持ち悪い→面白い→けどやっぱり気持ち悪い→それでもやっぱり面白い」と、その先をいった。わたしはデビュー作を読んでいないので、これまでに書かれたいくつかの『四十日と四十夜のメルヘン』たちを読まずに今回の『四十日と四十夜のメルヘン』を読むという、テレビのエヴァンゲリオンシリーズを観ずに『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』を観に行ったという18年前の過ちを再び犯したわけなのだけれど、今後は青木淳吾の作品はひとつも残さず読んでみよう、と決めた。

Sunday, July 26

午前7時30分、美容院でカットと、ポイントがたまったため特別メニューも施してもらう。美容師さんが早起き仲間でよかった。美容院が済んでも、まだ午前9時。まだまだきょうという日は残っている。さっぱりした頭で新宿へ。サザンテラスのスタバで夫と待ち合わせ、なんちゃらフラペチーノは頼まず、ヨーグルトを食べる。

浜松町へ移動し、gallery916で「上田義彦 A Life with Camera」を観る。広告やCMなどの商業作品でも、芸術性が担保された作品においても、上田義彦の仕事は極めて的確、ハズレはない。桐島かれんと子どもたちを撮った写真と、ミース・ファン・デル・ローエの建築作品を撮った写真はいくらでも眺めていられる。映像作品も、ひとつは多数の著名人のポートレートフィルムとも呼べるもので、なかなか面白そうだったけれど、あまりに上映室が蒸し暑くて、早々に退散。

灼熱の陽射しに辟易し、次の目的地までタクるという禁忌を犯して向かった先は原美術館。「サイ・トゥオンブリー 紙の作品、50年の軌跡」を鑑賞。奔放な線描を見て、『ラインズ 線の文化史』をまだ読んでいなかったことを思い出す。

その後、フランクリン・アベニューまで歩く。フランクリン・アベニューは、わたしのこと覚えてる? わりと定期的にここに食べに来てるって、知ってる?? それとも誰か大事なお客さんと間違えてる??? と問い詰めたいくらい、毎度毎度、庭に面したいい席に案内してくれるのが不思議だ。アボカドバーガー、フライドポテト、サンペレグリノを美味しくいただく。幸せ。

夕方に用事をひとつ済ませて帰宅したら、あんなにまだまだたっぷりあると思っていたきょうは、もうあらかた溶けて消えてしまっていた。本を読みたかったけれど、朝早くから動いていたので起きていられず、バタンQでおやすみなさい。

  1. 「本書に収録したインタビューは、『甦る相米慎二』所収分を若干の改訂のうえで転載したもの(特に第4章)と、先述のように同書のために行われたが未発表のままとなっていたものと本書のために新たに行われたもの(分量的にはこれが大半である)とに基づく。(『映画の荒野を走れ』p.357) []