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Monday, May 11

レム・コールハースの『S,M,L,XL』がちくま学芸文庫として上梓されると知ったとき、あの本を横105mm縦148mmのA6判に収めようとする発想にコールハースその人とおなじくらいどうかしてると思ったのだが、刊行されたものを確認してみたならば「英語版より選り抜いた論考にその後の主要作を加えた日本版オリジナル編集」という、詰まるところ論考の抄訳集とでも呼ぶべき体裁で、以前に古本市で5000円の値段がつけられた英語版の『S,M,L,XL』を見つけて買おうかなと一瞬思ったもののあまりに重いので持って帰るのがめんどうくさくなって結局買わなかった体験が示すような原書の物質的な破壊力を、残念ながらこのたびの日本語版で堪能することはできない。もっとも訳者によるあとがきを確認してみたならば、テキストだけの構成にするのはコールハース本人の意向を交えての企画だったらしく、文庫として出すのもコールハースの要望だという。ちくま学芸文庫版の『錯乱のニューヨーク』を本人がとても気に入っているらしい。

夜、鶏肉ともやしと生卵をのせた醤油ラーメン、水菜と新玉ねぎときゅうりの中華風サラダ、ビール。

Tuesday, May 12

夜、肉そぼろと炒り卵とかぶの葉の三色ごはん、舞茸とわかめと水菜の味噌汁、ポテトサラダとトマト、ビール。

『フランシス・ハ』(ノア・バームバック監督、2012年)を見る。ヌーヴェルヴァーグ一歩前のような映画。いや一歩後か。映画前半の、生活の断片を瑞々しく切り取ったショットの数々には好感をもったけれど、最後のほうはかなり強引にいい話にもっていった感がある。主人公フランシスのことをみんなどこか煙たがっている雰囲気があるにもかかわらず誰もが彼女に対して親切、という設定が不思議だった。ところで、フランシスに対して親友ソフィーが電話口で「ブログはじめるの。ダサいでしょ、写真とか日記よ。」と言い放つ場面があるのだが、写真とか日記がダサいって、このホームページの立場がなくなるじゃないか。

Wednesday, May 13

翁邦雄『経済の大転換と日本銀行』(岩波書店)を読む。著者名からある程度内容は類推できるとおり、安倍政権&黒田日銀のリフレ政策批判の本。金融論とはべつに、日本経済の将来を考える際に人口問題(少子高齢化)を重要視している点が本書の眼目だろうか。

夜、駅ナカのパン屋で買ってきたハンバーガーとビール。

最近は、Yahoo! JAPANのトップページでしか日本で起こった出来事を把握していないという我ながら如何なものかと思う情報リテラシーなのだが、あそこに出ているニュースを追うかぎりでは、安倍政権(というより正確には政権をめぐる報道)の関心が、経済政策から安全保障に移っているように見える。

Thursday, May 14

夜、人参と玉ねぎを入れたビーフシチュー、新玉ねぎとトマトと水菜のサラダ、バゲット、赤ワイン。

酒井順子『オリーブの罠』(講談社現代新書)を読了。明快であけすけな本書の結論部分をまるごと引用するのはどうかと思いつつ、まるごと引用すると以下のとおり。

「異性に媚びない」ということは、フェミニズム的な観点で言えば、正しい方針なのだと思います。『オリーブ』におけるリセエンヌという切り口の源流をたどると、ニュートラかリセかで迷走していた70年代の『アンアン』へ、さらにはフランスの五月革命へと通じることを思い出せば、オリーブファッションの源に男女平等思想があるといっても間違いではないでしょう。
しかし現実を見ると、『オリーブ』は結果的に、少女達を「今そこにある闘い」から逃避させたと言うこともできます。何の闘いからかといえば、言うまでもありません。それは「異性獲得のための闘い」。
『オリーブ』も、「男女交際をするな」と言っていたわけではありません。ボーイフレンド特集も恋愛特集も頻繁にあったのですが、それはモテのハウツーを指南する実用的なものではなく、おしゃれのための一手段として恋愛は表現された。『オリーブ』が提唱するおしゃれは、今までさんざ記してきましたが、非モテ系なのです。
すなわち『オリーブ』は、「ファッションで男に媚びてモテようと思うことなかれ。恋したいなら、自分が着たい服を着たまま、人間的魅力だけで相手を魅了すべし」と、少女達に言っていたのです。
そんな高いハードルを突きつけられていたことに、しかし当のオリーブ少女達は気付いていませんでした。むしろ『オリーブ』が、モテなどという生々しい問題のことは考えなくていいとしてくれたのが、おぼこいオリーブ少女には有難かった。
しかしそれは、「オリーブの罠」というものだったのです。赤文字系読者達が、素材である自分を美味しそうに料理して、手を出してもらいやすいようにと爪楊枝まで刺してから異性の前に出て行ったのに対して、オリーブ少女はその手の行為をせず、丸腰のまま。と言うよりむしろ、普通の男性では手に出しにくい、一風変わった臭いの香辛料を自分にふりかけたりすらする。
「でも私という人間が本当に好きな人は、こちらにやってくるはず」
と、無垢なオリーブ少女は信じていたわけですが、普通の男性は当然、食べやすそうな料理の方に向かっていきました。

Friday, May 15

有給休暇。昼すぎに家をでて、新宿の紀伊國屋書店の店内を遊弋。夕方、新宿のキリンシティで、ほうれん草のサラダ、小海老のアヒージョ、バゲット、漬けラムのロースト、オニオンリングを食べて、ブラウマイスターを二杯。食後、新宿武蔵野館で、『やさしい女』(ロベール・ブレッソン監督、1969年)を鑑賞して、帰宅。

Saturday, May 16

天候が芳しくないので、外出は近所のスーパーと花屋での買いものに留めた一日。朝、ホットケーキを焼き、珈琲を淹れる。

買ってきた食材で、タコとかぶとトマトのパスタ、新玉ねぎとベビーリーフとミニトマトのサラダ、赤ワインという昼ごはん。午後、近所のカフェに出向き、珈琲とチーズケーキをお供に持参した本を読む。高安啓介『近代デザインの美学』(みすず書房)と李鳳宇・四方田犬彦『民族でも国家でもなく 北朝鮮・ヘイトスピーチ・映画』(平凡社)の二冊。

夕食は、キャベツと茄子とベーコンの焼きそば。サントリーが新しく発売したビール「ブラウンエール」を試し飲み。

Sunday, May 17

本日の予想最高気温28度。第16回タイ・フェスティバルに参戦。午前中の早い時間に来ないと人だらけになるので、9時半すぎに原宿に到着して代々木公園へ。昨年のタイフェス来場者数は「のべ35万人以上を記録」らしいのだが、この数字、あんなカオスのような状況下で誰がどうやって数えているのかと思う。

代々木公園を離脱し、スタバに立ち寄ってから、渋谷経由で等々力方面へ。九品仏、尾山台、等々力、上野毛あたりをうろうろする。等々力渓谷を少し歩いた。夏のような陽射しが降りそそぐなか、渓谷の散歩道は涼しげな空気が流れている。

東急大井町線で二子玉川に移動。二子玉川は再開発事業真っ盛りのようで、駅前の商業施設「二子玉川ライズ」は人で溢れかえっていた。蔦屋家電に行ってみたところ、こちらも人でごった返している。本と家電の両方を提案しているらしいというので、電子レンジの扉を開けたら文庫本が入っているようなビックロみたいなことになっているのを期待したがそういう雰囲気ではなかった。おしゃれな店舗。しかしいまビックロのようなと書いてしまったが、ビックロもそんな店じゃない。

夕食は、持ち帰り寿司、お吸いもの。サントリーが新しく発売したビール「ペールエール」を試し飲み。