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Monday, April 14

Robert Capa『Slightly Out of Focus』(Modern Library)を読んでいる。ちょっとピンぼけ。手にとった理由は、東京都写真美術館の「101年目のロバート・キャパ」展にあわせて、という気の利いた読書ではなく、しばらく前に途中まで読んだまま放置していたのを思い出したから、という後ろ向きな読書。展覧会のほうも出かける機会を逸したまま終わりの期日を迎えそうだ。キャパについては、去年の横浜美術館で開催された「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」展でじゅうぶん満足してしまったのがおおきくて、写美のほうは行ってもいいし行かなくてもいいと曖昧な気分でいる。

一方、来週の単行本『ニァイズ』刊行にあたっては、写美のナディッフで買うと特製オリジナルしおりが貰えるらしいので、こちらは購入のために決然たる意志をもって恵比寿に向かわなければならない。ニァイズ命。今年9月からの休館以降も、写美は「ニァイズ」の発行はつづけるという [1]。どこで配るのだろう。ナディッフか。そういえば以前、テリー・ワイフェンバックの写真展を見るため訪れたギャラリーで、「ニァイズ」が置いてあったのには面食らった。

Tuesday, April 15

NHKラジオの語学講座といえば途中で挫折するのが定番、というか挫折してなんぼ、という気がしなくもないものだが、遠山顕の「ラジオ英会話」が楽しいので去年からずっと聴きつづけていて、いまだ飽きない。三人の出演者(遠山先生、ケイティさん、ジェフさん)のいくぶんテンションが高いやりとりも慣れれば気にならなくなり、むしろこの三人の異様なほどの息の合いっぷりが快感になってくる。というか、なんなんだこの三人は。ケイティさんの高笑いも毎度気になるところだが、それよりなにより、問題は、番組の終盤に英会話の場面設定を変えてアドリブする、「Try It in a New Situation!」というコーナーだ。講座のテキストには「変化をチェックし、ペアやグループでお試しください」とあって、たとえば、こんな感じの場面設定が呈示される。

They are ducks.
彼らはアヒルである。

場面設定を変える、という次元の話ではない気がする。

夜、近所のカフェで夕食、ペペロンチーノ、ベーコンと野菜のキッシュ、トマトのブルスケッタ、ビール。

Friday, April 18

会社帰りに、市ヶ谷のと言ったらいいのか飯田橋のと言ったらいいのか、ミヅマアートギャラリーでアルベルト・ヨナサン「Enshrined」をみる。夕食にとカナルカフェに行くも満席で入れず。

Saturday, April 19

ガルシア=マルケスの訃報を受けて、自宅の蔵書から棚卸しをおこなったところ、ぜんぶで6冊あった。

『ママ・グランデの葬儀』(桑名一博・安藤哲行訳、国書刊行会)
『百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)
『族長の秋』(鼓直訳、集英社)
『エレンディラ』(鼓直・木村榮一訳、ちくま文庫)
『コレラ時代の愛』(木村榮一訳、新潮社)
『わが悲しき娼婦たちの思い出』(木村榮一訳、新潮社)

ラテンアメリカ文学によくみられる「わいわいガヤガヤ」な雰囲気があまり得意ではないのだが、さしあたり『百年の孤独』を読み始めたらおもしろくて止まらなくなって、一気に読み終えてしまう。さすが世界的に売れただけのことはある。賑やかな物語なのに、最後は題名のとおり、小説の世界はちゃんと「孤独」になる。さすが焼酎の銘柄になるだけのことはある。『百年の孤独』のなかでいちばん好きなくだりは、つぎのところ。

約束どおり、サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダはホセ・アルカディオ・セグンドの首を包丁で切り落とし、絶対に生埋めになる心配のないようにしてやった。遺体はそろいの棺桶におさめられたが、死んでそこへはいった彼らは、少年時代までそうであったように、ふたたび瓜ふたつの姿に戻った。アウレリャノ・セグンドの古い遊び仲間たちが棺桶の上に、〈牝牛よ、そこどけ、いのち短し〉という文句を書いた紫のリボンの花環をのせた。フェルナンダはこの不埒なしわざに腹を立て、花環をごみ溜めに捨てさせた。最後のごたごたのなかで、悲しみを酒でまぎらわしながらふたりの遺体を屋敷からかつぎ出した男たちは、どっちがどっちかわからなくなり、棺桶を間違った穴に埋めてしまった。

Sunday, April 20

松屋銀座で開催中の「MOOMIN!ムーミン展」に行くも、あまりの人混みでやる気が削がれる。混雑する展覧会ほど嫌なものはない。わたしが現代美術を好むのは、大抵、会場が空いているからかもしれない。昼食にと三笠会舘のイタリアンに行くも満席で入れず。SUZU CAFEで食事後、メゾンエルメスで「コンダンサシオン アーティスト・イン・レジデンス」展をみて、無印良品に寄るなど。

  1. 東京都写真美術館:休館FAQ []