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Monday, February 17

朝7時、InterFMの「BARAKAN MORNING」を聴きながら朝食をとる。ラジオ好きであるにもかかわらず、これまで朝のラジオ番組を聴くのを拒んできたのは、出勤前の忙しない時間にリアルタイムの番組を流すと追い立てられる感じが倍増する気がして、さらには聴いたところで番組終了の時間まで耳を傾けることは叶わずに玄関の扉を開けることになるので、フラストレーションが溜まるだろう思っていたからだ。でも、ま、ピーター・バラカンだったらいいか、ということで、聴きはじめる。

火曜日夜のおなじくInterFMの吉岡正晴「Soul Searchin’ Radio」では、いつも訃報がらみの楽曲ばかりがかかるのだが、「BARAKAN MORNING」では誕生日がらみの曲がよくかかる。音楽家の誰かが誕生日であることにちなんでだったり、リスナーからのメッセージで誰かの誕生日なのでかけてほしいというリクエストだったり。エロスからタナトスまで面倒をみるInterFM。

夕食は、茄子、紫タマネギ、トマト、あさりを酒蒸ししてパスタと和えて、ベビーリーフをのせる。赤ワインとビールを飲む。

Tuesday, February 18

ラジコを立ちあげて放送局をInterFMにあわせ、「BARAKAN MORNING」がはじまる。ボブ・ディランが流れ、ニール・ヤングが流れ、吾妻光良 & The Swinging Boppersが流れる。

夜、帰宅すると法政大学出版局の『叢書・ウニベルシタス 1000番到達記念ブックレット』とともに、バシュラールの『空と夢 運動の想像力にかんする試論』(宇佐見英治訳)が机上に積まれてあった。第20刷2006年発行の本は、真新しいつるつるしたカバーがかけられているのに、中身をのぞくとかすれ気味の活字がならんでいて、まるでずっとむかしの古い本であるかのような佇まいを見せつける法政大学出版局の造本。ところで、バシュラールの写真を見るとサンタの格好をさせてみたいといつも思う。

ドイツのインタビュー&部屋写真サイト「Freunde von Freunden」を、インタビューを含め最初からすべて読もうと思ったら、初期の頃はドイツ語しかなくて読めない。

夕食は、白米、大根と人参の味噌汁、豚肉とキクラゲと白菜と卵の中華風炒めもの、冷奴、ビール。

Wednesday, February 19

ロンドンのコレクションがはじまっていて、バーバリープローサムを見たら、クリストファー・ベイリー曰く、今季の参照元はブルームズベリー・グループ。

夜、白米、油揚げとねぎの味噌汁、秋刀魚の塩焼き、塩辛、野沢菜、ビール。食卓の花瓶には、紫のスイートピーと珊瑚色のバラ。

Thursday, February 20

森喜朗が浅田真央は大事なときに必ず転ぶと発言したらしい。しかし転ぶといったら、堀江敏幸のほうがよほど転んでいる。

地下鉄で表参道まで行くと、まずクレヨンハウスまでの細い道をたどる。これ以上ない出発点だ。絵本と児童書を隅々まで眺めて何冊かに目をつけ、これは買おうと玩具売り場に移動して、ここでもまた隅々まで外国製の玩具を検分する。そして、色とりどりの玩具に夢中になって、買うはずだった本のことを忘れてしまう。
簡素で美しい木製の車を手に入れたあとは、足取りも軽やかだ。心が浮き立ち、足も浮き立つ。その結果、国道に出る手前の雑踏で、私はよく転ぶ。青山で転ぶ人はあまりいないようだが、しかしここで一度派手に転んでおかないと、次に立ち寄る青山ブックセンターの、あのきらびやかな海の底へと降りていくエスカレーターの頂で必ず躓くので、貴重な厄払いにもなっているのだ。
(『時計まわりで迂回すること』中央公論新社)

夜、焼きそば、ビール。

Friday, February 21

このあいだ見たセルジュ・ゲンズブールのドキュメンタリー映画の復習として、ジル・ヴェルラン『ゲンスブールまたは出口なしの愛』(永瀧達治・鳥取絹子訳、マガジンハウス)を読み、グレン・グールドのドキュメンタリー映画の復習として、Peter Ostwald『Glenn Gould: The Ecstasy and Tragedy of Genius』(W.W.Norton)を読んでいる。

夜、ごはん、油揚げと長ねぎの味噌汁、鶏肉とほうれん草とパプリカときのこの炒めもの、野沢菜の漬物、ビール。iPad miniで『The Economist』誌を読む。

Saturday, February 22

06:00 起床。
07:00 朝食、クロワッサンと珈琲。
09:00 食材補給のため、近所のスーパーへ買い出しに向かう。
11:15 原美術館に到着。展覧会「ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ」を見る前にカフェダールで昼食。カフェダールといえば「ガーデンバスケット」だが、このメニューはワインがボトル一本ついてくるので、午後の予定がなく後は野となれ山となれの状況でないかぎり注文できない。これからの予定が詰まっている今日は、パスタを注文してグラスワイン(白)を飲むにとどめた。ボレマンスの絵画はとても好みのもので、画集が欲しくなる。
13:30 品川から有楽町に移動。ギャラリー小柳でミヒャエル・ボレマンス「Girl with Hands」、メゾンエルメスでクリスチャン・ボヌフォワ、資生堂ギャラリーで今井俊介「range finder」、ニコンサロンで藤岡亜弥。
15:00 東京駅。丸善のカフェで休憩しようとしたら行列だったので、オアゾ1階のPANINO GIUSTOに移動。カプチーノとティラミスを注文し、グールドの評伝を読む。
16:00 東京ステーションギャラリーで「プライベート・ユートピア ここだけの場所 ブリティッシュ・カウンシルコレクションにみる英国美術の現在」を鑑賞。内容はけっこうマニアックなイギリス現代美術展だと思うが、見物客が意外とたくさん。
18:00 中央線快速で東京から新宿に移動し、早めの夕食をとる。新宿マルイアネックス8階の豆ちゃで、塩鶏の柚子胡椒焼き御膳とビール。
19:20 K’s cinemaでハル・ハートリー監督『愛・アマチュア』(1994)を見る。ハル・ハートリーの作品にでてくる人物たちは、みんな何かを諦めてしまった表情をしているのがいい。
21:30 映画帰りに新宿三丁目のワインバーに行く予定だったが、すっかり疲弊してしまったので帰宅する。日中あちらこちら移動して、映画を見て、さらには夜遅くまで飲んでいるような人たちの体力はいったいどうなっているのかと思う。
23:00 自宅に戻り、カマンベールチーズと赤ワイン。「The New York Times」紙がやっているブックレビューのPodcastを聴く。

Sunday, February 23

トースト、サラダ、珈琲の朝食ののち、洗濯物を干して、iPad上で積読(とは言わないか)になっている雑誌をまとめ読み。『ARTnews』『The Atlantic』『smith Journal』。お昼はラーメンとビール。

ハル・ハートリーの映画で『アンビリーバブル・トゥルース』(1989)と『シンプルメン』(1992)に登場するエレキギターを弾く青年がよかった。ガソリンスタンドの店員役の後者では、給油する場所でなんでその選曲なんだと思うが、「Greensleeves」をぎゅいーんぎゅいーんとエレキで奏でる。いいなあこの人。ネットで調べたらMark Chandler Baileyという役者だというところまではわかったが、いまどうしているかがよくわからず。

夜、録音しておいたゴンチチの「世界の快適音楽セレクション」を聴きながら、トマトと小松菜と茄子と玉ねぎと舞茸を和えた浅蜊のパスタ、赤ワイン。