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Monday, January 13

祝日の朝、ホットケーキにナイフとフォークを入れながら録音しておいたInterFMの番組「Daisy Holiday!」を聴く。細野晴臣が岡田崇とともに大瀧詠一を追悼する。大瀧詠一の曲がかかるのではなく、大瀧詠一が好きだった曲がかかる。それにしても細野さんがうろ覚えの大瀧詠一と初めて会った頃のことを、場所をふくめて正確に知っている岡田さんは何なのか。

文京区の東洋文庫まで出掛けてOrient Cafeで昼食。こぢんまりと落ち着いた庭を眺めながら食事のできるレストラン。メニューがザビエルセットとかマルコポーロセットとかプチャーチンセットとかオイレンブルグセットとか、どうかしている命名なので、「このあいだはマルコポーロを食べたのできょうはプチャーチンにしよう」などという常軌を逸した会話ができる。今回はオイレンブルグセットを注文。ハンバーグ、サラダ、パン、デザート、コーヒー。

夕方の読書タイム。脚を組んでベンチに座り、左手で顎を支えながらどこか悩ましげな表情でこちらを見つめる女性の姿。彼女の横には帽子と本。イタリアの画家によるそんな絵画が表紙になっている『Women Who Read are Dangerous』(Merrell)を読んだ。女性が読書する姿を描いた絵画(と少しの写真)を集めたもので、序文を書いているのは『ジェイン・オースティンの読書会』のカレン・ジョイ・ファウラー。14世紀シエナ派の画家シモーネ・マルティーニの絵画ではじまり、ラストを飾るのはイヴ・アーノルドが撮影した『ユリシーズ』を読むマリリン・モンロー。古本屋で割と安価で手に入れたのだが、Amazonで調べるとけっこうな値段がついている。いい買いものをした。

夜、鱈と豚肉のパスタ、トマトとほうれん草とパプリカとじゃがいものキッシュ風オムレツ、シュークリーム、チリワインの赤。

Tuesday, January 14

集中力を要する事務的な作業は人を神経衰弱にする。インターネットでの航空券予約で、検索するたびに数万円単位で値段がころころ変動するのを前にして、なんでこんなデイトレーダーみたいなことをしなければならないのかと思う。しかもここ2ヶ月程のユーロ高を気にかけながらパソコンのモニタを睨みつつ移動費用を勘定している。いよいよデイトレーダーみたいだ。

夜、鰻の蒲焼き、せりとねぎのお吸いもの、白菜ときゅうりの漬物、ビール。

Wednesday, January 15

新潮文庫の「Yonda?CLUB」が終了するという。むかし新潮社の収益基盤は新潮文庫が担っているという話を聞いて以来、本屋で新潮文庫の棚を前にすると金脈に見えてしょうがない。

夜、担々麺(そぼろ肉、ねぎ、もやし)、ビール。

Thursday, January 16

ここ最近のじぶんの日記を読み返すと、金の話ばかりしている。

「映画」をテーマに読書するのとは別に、「食」をテーマに読書するのも決めていたのだった。すっかり忘れていたが。というわけで、 Michael Pollan『Cooked: A Natural History of Transformation』(The Penguin Press)を読みはじめる。

夜、じゃがいもといんげんのジェノベーゼパスタ、キッシュ風オムレツ、白ワイン。

Friday, January 17

『The Economist』を一日で読み切ってしまおうと頑張って朝4時に起きてみたが、まだ更新時間じゃなかった。二度寝し、いつもより起きるのが遅くなるという惨事に。

夜、白米、海苔、わかめとせりと豆腐の味噌汁、鰺のひらき、レモン、油揚げとかぶの煮物、白菜ときゅうりの漬物、冷奴、キムチ、ビール。

Saturday, January 18

前日の天気予報を見ると「不安定な天候が予想されます」とあったので心配したのだが、外に出てみれば冬の青空が広がっている。東京都現代美術館のホームページを見ると「非常に混雑することが予想されます」とあったので心配したのだが、朝一番に訪れたら割と空いている。予想は外れる。朝の散歩がてら木場公園を歩いて東京都現代美術館に向かう。「吉岡徳仁展」と「うさぎスマッシュ展」を鑑賞。あまり期待していなかった「うさぎスマッシュ展」は思いのほか愉しめた。

どちらの展示も一部例外を除いて写真撮影がOKで、お決まりの注意書きのなかに「他の来館者を撮影することはご遠慮ください。他の来館者の肖像権に触れる場合があります」とある。ごもっとも。しかし「うさぎスマッシュ展」での、レム・コールハース率いる建築事務所が設計したシアトル公立中央図書館を紹介する展示が、この図書館を訪れた人たちがインターネット上にアップした写真の数々をずらりと並べるというもので、当然のごとく図書館の来館者がじゃんじゃか写り込んでいる。

ひさしぶりのSacra Café.で昼食。ランチとコーヒー、ロールケーキも食べる。この店にくるといつも満腹で苦しくなりながらつぎの行程に向かっている気がする。一日も早い腹八分目の復権が期待される。すぐ傍の古本&レンタルDVD店Elephantasticが閉店セールをやっていて、清岡卓行『アカシヤの大連』(講談社学術文庫)と『斎藤茂吉随筆集』(岩波文庫)を買う。しまぶっくにも寄って、ル・クレジオ『物質的恍惚』(新潮社)と饗庭孝男『西欧と愛』(小沢書店)と堀江敏幸『書かれる手』(平凡社ライブラリー)を購入。処分する本を整理している途中で、あたらしく本を買っている。

清澄白河から六本木へ。国立新美術館で「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展」を見る。いつもは美術の展覧会だが、今回は建築のスペースもあり。しかしこの建築部門は会場の設営に問題があるように思う。非常に見づらい。バラック風に小部屋を設けて展示するという意図自体はわかるのだが、あまりうまく機能していないように思った。43人の建築家の展示のなかにはおもしろいものも混ざっているかもしれないが、これでは埋もれてしまいかねない。一方で美術部門のほうはどれも愉しめて、今年のDOMANIは行こうかどうしようか迷ったのだが、来てよかった。ゲルハルト・リヒターを思わせる小笠原美環の絵画がよくて、過去に二度SCAI THE BATHHOUSEで展示をやっていたのは知っていたのだが、機会を逸して見逃していた。帰りに売店でドイツの出版社から出ている小笠原美環の画集『WINDHAUCH』を買う。

オオタファインアーツでリナ・バネルジー「私は何でできていて、あなたはどうやって私の名前を知るの?」、ワコウ・ワークス・オブ・アートでヴォルフガング・ティルマンス「Affinity」、タカ・イシイギャラリーで山元彩香「Nous n’irons plus au bois」、ZEN FOTO GALLERYで須田一政「わが東京」を見る。Googleで「ヴォルフガング・ティルマンス」と検索すると、いまだに2004年の東京オペラシティアートギャラリーでの展覧会情報が上位に出てくる。なつかしい。ティルマンスの展覧会も記憶に残っているが、同時に上の階でやっていた展示が野又穫と小西真奈。なつかしい。

夜、近所の焼鳥屋で夕食。焼鳥各種、ポテトサラダ、雑炊、中ジョッキ2杯。

Sunday, January 19

センター試験がはじまっていた。大学入試の現代文の問題で、問題として使われた文章を書いた作家本人が問題を解けなかったという話をたまに聞くが、これはいわゆる「作家の死」ということだろうか。テクスト論が急に矮小な話に思えてくる。

新宿のBOWLS cafeで昼食。紀伊國屋書店で時間をつぶす。つぶすだけのつもりがジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(岩波文庫)と多和田葉子『言葉と歩く日記』(岩波新書)を買っていた。合間合間に図書館で借りた山田爵訳のフローベル『ボヴァリー夫人』(河出文庫)を読む。

K’s cinemaでハル・ハートリー『アンビリーバブル・トゥルース』(1989)を見る。殺人の容疑で刑務所に服役していた孤高の男が、核の恐怖と世界の終わりを憂慮する妄想系の少女と恋に落ちる。と、舞台設定を説明したところで、この映画の魅力は伝わらない。物語の設定からすればよほどドラマティックな展開にしてもよさそうなところを、さらっと流して、ショットの断片の集積のようになっているのがとてもよかった。4回券を買ったので残りも楽しみ。

夜、寿司、ねぎと人参の味噌汁、ビール。『クウネル』(マガジンハウス)が届く。前号から編集長が変わっていることにいまさら気づく。