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Monday, November 25

蓮實重彦『監督 小津安二郎』(ちくま学芸文庫)と吉田喜重『小津安二郎の反映画』(岩波現代文庫)を読む。前者は再読。後者は単行本が書店にならんでいる頃からその存在は知っていたものの何となく読み逃していて2011年の6月に文庫化されたことも情報として入っていたのだがそれから2年以上が経過してようやく読んだ。

夜、ベーコンとしめじと小松菜のパスタ、赤ワイン。カナダ・トロントの市長がおもしろい。

Tuesday, November 26

テレビを所有していないのでインターネット上での人びとの言及を経由してでしか番組内容を知るすべはないのだが日曜日にNHKスペシャルで認知症高齢者の話が展開されたらしいことを知ったところで、本日自宅に届いた『KINFOLK』の特集が「老い」だった。

夜、白米、しらす、しめじと玉ねぎとわかめの味噌汁、鯵のひらき、長ねぎと鰹節の冷奴、ビール。

Wednesday, November 27

会社で忘年会の日程が決まる。会社の忘年会なんて救いようのない退屈さで覆い尽くされることだろうと暗澹たる気分になるが、淀川長治のつぎの誇り高き言葉を心に留めておこう思う。

ご存知のように酒は飲めない。徹底的に飲めないね。宣伝部に入ると、月に一回、宣伝部会があって。皆が飲むのね。その飲み方が大変な飲み方なの。飲んだらそこら暴れ回っちゃうぐらい、走り回るぐらいの飲み方で、飲めないのは人間じゃなかったのね。淀川、お前は飲めないのかといって散々やられました。それが辛くて辛くて。月一回ぐらいだけど、出かける前に靴を履くときに溜め息をついたもの。もう辞めようと思ったの、こんな仕事。こんな苦しんでまでもうやらない。けどやめようと思った時に頭を横切るのは『ロスチャイルド』のこと。やっぱりやっておこうと思い直すところが映画の魅力なのね。我慢しようと思ってね。『女優ナナ』、アンナ・ステンだなと思う。これを誰が宣伝するか。僕しかいないだろうという自惚れがあったの。自分しかないだろうという自信が、辞めるのを助けてくれたんだね。ずーっとそういうことがございました。(淀川長治・蓮實重彦編『シネクラブ時代』フィルムアート社)

夜、イエローカレー。

Thursday, November 28

『夜想』(ペヨトル工房)のヌーヴェル・ヴァーグ特集を読む。1984年発行。「最新作の『海辺のポーリーヌ』は……」なんて文章があったりして感慨深い。

夜、うどん、ビール。微妙にレイアウトがリニューアルされている『装苑』(文化出版局)を読む。

Friday, November 29

エコノミスト誌に日本の話題で特定秘密保護法に関する記事があり、そのなかで長谷部恭男のコメントがあるのだが如何せん短すぎていまいち要領を得ないので、特別委員会で参考人として呼ばれた長谷部教授の発言を確認する 。

「何が特別な保護に値する秘密なのかをあらかじめ隅々まで確定する、これはおよそ不可能でございまして、その答えは、具体的な事例ごと、専門知識を持つ各部署で判断し、個別に指定をしていくしかない」であるとか、「個別の事案が実際に発生した、そのときの状況に応じまして、裁判所が判断をするという方がむしろ適切ではないか」といったくだりは、いかにも長谷部教授らしい語り口で、この見解には基本的に賛成である。秘密保護法は民主主義に抵触するという意見もあるが、想像力をすこぶるたくましくすれば民主主義に抵触ようなかたちでこの法律が運用されてしまう可能性もなくはないのかもしれないが、それは程度の問題だと思うし、権力が法を悪用する事態が蔓延するとすれば秘密保護法うんぬん以前の問題であるわけで、想像力のたくましさをめぐって侃々諤々と意見をたたかわすことに生産性があるようには思えない。長谷部教授はごく穏当なことを述べているように思えたが、法案を後押ししているということで、反対するなかには彼を「御用学者」呼ばわりしている者もいるらしい。私が政府機関の中枢の人間であったら、あんな面倒くさい人を御用学者なんかにしたくないと思うのだが。

もっとも結論において、長谷部教授の見解と私の意見は正反対で、私は特定秘密保護法に賛成しない。反対するというより、賛成しないといったほうが正確なのだが、長谷部教授とおなじく、それほどたいした法案ではないと思っていて、であるならば急いで法律をつくる必要性はない。とりたてて必要性のないものを必要だと言い張るロジックにはそれなりの論拠がいるはずである。現行法を駆使してじゅうぶんやっていけるのではないかという単純な疑問に長谷部教授の話はこたえていない。

夜、ベーコンとほうれん草と玉ねぎのあさりのパスタ、ビール。『一冊の本』(朝日新聞出版)と『図書』(岩波書店)を読む。

Saturday, November 30

COREDO日本橋でとんかつを食べてからブリヂストン美術館で「カイユボット展 都市の印象派」を見る。つづけて「印象派にとっての写真、写真にとっての印象派」と題した鈴木理策と倉石信乃のトークを聞く。たいへんためになる話でおもしろく聞く。ところで「カイユボット」とキーボードで入力すると「快癒bot」と変換される。東京駅に来たついでに東京ステーションギャラリーで「植田正治のつくりかた」展を見る。監修は金子隆一。2005年の年末に見た東京都写真美術館での回顧展のことを思い出す。家に帰ったら本棚にある『植田正治写真集:吹き抜ける風』(求龍堂)を読もう。

夜、寿司、ビール。

Sunday, December 1

図書館で借りた『TIME』を読んでいる。はじめてまともにこの雑誌をめくってみたけれど、こんな少ないページ数の雑誌を840円で売るなんて犯罪的では。

夜、近所のカフェで夕食。キッシュ、ピクルス、パスタ、それに赤ワインがついて1000円ちょっとって安すぎないか。