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Sunday, August 18

デンマークからスウェーデンに移動の日。

朝食を食べたら荷物をまとめてホテルのチェックアウトの手続き。居心地よく泊まれるホテルでよかった。ラディソン・ブル・ロイヤルはロビーの内装もデザイン好きには有名なようで、出発前にいろいろ調べていたらロビーの写真を何度も目にした。写真で見るとものすごく広いロビーのように感じるのだが、実際に訪れてみるとそれほど大きな空間というわけではない。みんな広角レンズを使いすぎである。

スウェーデンのSJ高速鉄道でコペンハーゲンからストックホルムまで優雅な列車の旅、となるはずなのだが、この移動が今回の旅でいちばん心配だった。スウェーデン国鉄(SJ)のウェブサイトで切符は購入済み。日本を離れる直前にいちおうもう一度ルートを確認しておこうと、ウェブサイトをひらくと、ÄlmhultからAlvestaまでバスに乗ると書いてある。バス? そんな話は聞いてないぞ。だいたいÄlmhultってどこだ。調べてみたところ、IKEAの第1号店が建てられたことで有名な街らしいが、そんな情報をこちらは知りたいのではない。スウェーデン国鉄のわかりにくいウェブサイトを彷徨いつづけてようやく、該当らしき情報にたどり着くものの、そのテキストはスウェーデン語だ。読めない。Google翻訳で日本語に翻訳をかけたところ意味不明な文章が生成されただけなので、スウェーデン語を英語に翻訳させたところようやく意味内容を把握することができた。詰まるところ、この土日に新しい駅をつくるための工事をするので、該当区間の移動はバスになるのでよろしく、という話らしい。事前に調べておいてよかった。しかしバスの移動時間が50分と書かれており、50分のバスって相当な距離で、実際Googleの地図でÄlmhultからAlvestaまでの確認するとずいぶんと遠い。大丈夫だろうか。

ところで、今回切符をスウェーデン国鉄のウェブサイトから直接購入した。チケットの値段は日にちによって、時間帯によって大きく変動するのだが、1人8000円くらいで収まった。いちおう日本語のサイトで鉄道チケットの予約ができるものも存在するのだが、そちらで試しに検索してみると、同じ移動で1人数万円とられる。ほとんど詐欺のようなマージンの取りかたである。

9時12分、コペンハーゲンを出発し、6時間以上にわたる鉄道(とバス)の旅が始まる。エーレスンド海峡を越えてスウェーデンに入国し、列車はひたすら北上をつづける。問題のÄlmhultに到着し、バスに乗り換えるであろう他の乗客の様子をうかがいながら、ついて行くように駅のホームを出ると、ちゃんとバスはいた。それにしてもIKEA第1号店の街に降り立つことになるとは。どうして僕はこんなところに。

バスで無事Alvestaに到着し、北東のストックホルムを目指してひたすら進む。食堂車があって売店で食べもの飲みものを販売しているので、ランチパックとオレンジジュースを購入する。だいたいどこでもクレジットカードでものが買えて、大抵はPIN入力で支払いをするのだが、ここは珍しくサインだった。日本でもクレジットカードの支払いでサインをするが、あのサインをちゃんと確認している店員をあまり見たことがないし、ほとんど形骸化しているような気もするが、私の前にレジで支払いをしていたおばさんのサインはさすがにすごかった。「〜」で終わり。外国では普通なのか。形骸化の頂点を目の当たりにした気分である。

列車は横転事故を起こすことなくストックホルム中央駅に到着。すこぶるわかりにくい案内表示をくぐり抜け、早速、駅にあるSL(ストックホルム交通局)で交通機関が乗り放題になるトラベルカードを買う。ホテルの最寄り駅がガムラ・スタンなので、地下鉄で移動。石畳のガムラ・スタンの通りは、スーツケースを引きずると音がうるさい。17世紀の建物をホテルに改修したリカ・ホテル・ガムラ・スタンに宿泊。雰囲気のよいホテル。

日没にはまだ時間があるので、地下鉄でスクーグシェルコゴーデン駅に向かう。スクーグシェルコゴーデン、スウェーデン語で森の墓地という意味。ここには建築家グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツが手がけた樹々に覆われた広大な敷地を有する市民墓地がある。今回の旅でいちばん圧倒された場所かもしれない。素晴らしい光景を前にしてシャッターを何度も切っていたが、同時に、カメラにこの景色を収めることの無力さを感じた。来てよかった。訪れたとき降っていた雨は途中でやみ、帰るころには陽射しが十字架を照らしていた。

ストックホルム中央駅に移動し、セルゲル広場と文化会館の周辺を散策して、橋をわたってガムラ・スタンを歩いてホテルに戻る。セルゲル広場はなんとなく新宿駅前っぽい。