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Thursday, August 15

デンマークとスウェーデンをめぐる旅に利用したのはなぜかフィンランド航空(フィンエアー)。成田国際空港を出発して、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港を経由し、コペンハーゲン国際空港に到着するルート。帰りは、ストックホルム・アーランダ空港からふたたびヘルシンキを経由して、成田に戻る。フィンランドを旅しないのにフィンエアーを使う。

成田とコペンハーゲンを結ぶ直行便がスカンジナビア航空で存在するにもかかわらずフィンエアーを選択したことにさしたる理由はなくて、乗り継ぎ便にすることでロストバゲージの可能性が高くなるわけだからメリットなんてないような気もするが、あえて理由を挙げるならば、1963年以降現在まで一度も航空事故を起こしていないフィンエアーの安心感に乗っかったというのがあるけれど、これもまあ、確率論的にはあまり意味のない話かもしれない。

成田空港に着くとフィンエアーのチェックインに長蛇の列。しかし事前に届いたメールに従ってオンラインチェックインを済ませておいたところ、オンラインチェックインをお済みの方はこちらという列があり、その列にはほとんど人がいない。隣の大行列を横目にささっとスーツケースの預け入れが終わってしまう。なんでみんなオンラインチェックインをやらないのかと訝しく感じるほどの行列の差。これからはオンラインの時代だ。

朝食抜きで家を出たので、飛行機に乗る前に胃袋を満たしておこうと、うどん屋に入る。空港の食事処にさしたる期待などせずに注文したのだが、意外とおいしかった卵とじうどん。うどんを運んできた店員ががさつな働きぶりで、テーブルにどんぶりを置くとき、つゆがこぼれそうになる。

成田からヘルシンキまで10時間弱のフライト。機上にて、エジプトの情勢が不穏だというので座席のモニターでNHKのニュースを選ぶも、「ただ今NHKニュースは提供しておりません」との字幕が流れる。なんだこのやる気のない放送局は。モニターのタッチパネルの反応が鈍いのでリモコンで操作する。

搭乗口で入手したヘラルド・トリビューン紙を読んでいたら、コペンハーゲンにあるニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館でのエドガー・ドガの展示についての記事が。お、なんてタイムリー、と思ったが、この美術館、旅程に入れてなかったので果たして訪れる時間があるかは微妙なところ。

飛行機は墜落することなく、無事ヘルシンキに到着。当初の予定では空港で食事をとる予定だったが、機内食をすべてたいらげたのでお腹があまり減ってない。マリメッコやムーミンショップを見てまわり、青空に低い雲がつらなるヘルシンキの眺めに目をやっているうちに搭乗時間が迫る。

中型機で目的地のコペンハーゲンへ。機内のモニターで延々放送されていたのは、海外のドッキリ番組。ぜんぜん金のかかってなさそうなチャチで単純な番組なのだが、つい見てしまう。ドッキリ番組を見たくてわざわざ北欧に来たのではないと思いつつ、外の眺めを愉しむのを忘れて見入ってしまった。

去年のスキポール空港からブリュッセル空港の移動のときもそうだったが、小型機や中型機に乗ると、離陸時や着陸時に不穏な音が響きわたって、あれがとても恐い。そのまま爆発するんじゃないかと思うような音を鳴らす。統計上においてもっとも安全な移動手段は飛行機らしいのだが、気分的にはそうは思えない不穏な音だ。ガガガガガガガガ、グゥオン、グゥオン、グゥオン。

日本とフィンランドの時差は7時間。しかしサマータイム期間中なので1時間引いて6時間。そしてフィンランドとデンマークの時差が1時間。このあたりで時間の感覚がよくわからなくなる。ほったいもいじるな。

飛行機は墜落することなく、無事コペンハーゲンに到着。ロストバゲージもなし。しかし、このコペンハーゲン国際空港、飛行機を降り立ってから荷物の受け取り場所までがおそろしく遠い。案内表示のとおりに道を進んだのだが、あれ? ひょっとして道を間違えたか? と不安になるほど遠い。

空港の自販機でミネラルウォーターを買おうとクレジットカードを突っ込むも、操作方法がよくわからず断念。

空港出口ちかくの観光案内所で、コペンハーゲンカードを購入。公共交通機関(鉄道、地下鉄、バス、水上バス)、多くの博物館、美術館、観光スポットが無料になるという旅行者にはとても便利でお得なカード。購入時、最初に応対してくれた若い女性が、こちらがコペンハーゲンカードが欲しいと告げると、voucherがどうのこうのと言う。voucherって何? voucherという英単語の意味はいちおうわかるが、どういう文脈でvoucherと言っているのかがわからない。こっちは単純にコペンハーゲンカードが欲しいだけだ。埒があかず、女性があとから受付に来た係のおじさんにバトンタッチする(その女性は帰り支度をする途中だった)。おじさんはvoucher云々は口にせず、こちらが「コペンハーゲンカードが欲しい!」と言うと、おじさん「種類は?」、私「48時間!」、おじさん「現金? クレジットカード?」、私「クレジットカード!」、おじさん「OK!」とたいへん明快なやりとりが展開される。結局voucherって何だったんだろう。

そばにある売店でミネラルウォーターとピーナッツとカールスバーグを買って、いざ鉄道にのってコペンハーゲン中央駅へ。

コペンハーゲン中央駅に着いたら、そこはセブンイレブンだった。あちらこちらにセブンイレブン、いい気分。駅のホームにセブンイレブン、駅構内にセブンイレブン、駅を出てもセブンイレブン。セブンイレブンの街、コペンハーゲン。

ホテル着。駅からスーツケースを引きずって数分のラディソン・ブル・ロイヤルに宿泊。チェックインのとき、受付の女性から、Yesは日本語で「はい」、ではNoは何というのでしょう? と訊かれたので「いいえ」だと説明するが、果たして使う機会があるのだろうか。

このホテルのエレベーターの使い方はわかりずらくて、おそらくはセキュリティのためだろうが部屋のカードキーを差し込んでから行き先の階数を押さないと動いてくれない。しかし、カードキーを差し込んでもうまく反応しないこともあって、いまいちよく機能がわからず。

部屋は広くて快適。デンマークは建築の規制が厳しいらしく、高いビルがほとんどないため、ホテルの部屋からは街が一望できる。このホテルに泊まると窓からチボリ公園が見えるという話だったが、反対側の部屋だった。でも壮観な眺めなのは変わりない。アルネ・ヤコブセンがデザインしたホテルなので、部屋にはスワンチェアが置いてある。椅子に座って買ってきたカールスバーグを飲みながらピーナッツを頬張りつつ、窓から落陽を眺める。

今回は旅行代理店を使わずに、飛行機やらホテルやら旅行にまつわるもろもろをすべて自力で手配したので、どうなることやら。