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Saturday, April 7

五日、クロード・ミレールの訃報。十代前半に出会い、それからずっとじぶんのなかにとどまり続け育ち続けていまのじぶんをかたちづくってきた物事がいくつかあるけれど、この監督の映画もまさにそういう存在だった。ミレールの手によるシャルロット・ゲンズブール主演『なまいきシャルロット』『小さな泥棒』がなかったら、きっとわたしはいまこうしてここにいない。

今日はいい天気。銀座へ。ギャラリー小柳で杉本博司「Five Elements」、ポーラミュージアムアネックスで「ポーラ ミュージアム アネックス展2012 —華やぐ色彩—」、シャネル ネクサスホールでNAOKI「MOOD‐9 GIRLS」、リコーで「マグナム・フォト創設65周年記念写真展 マグナム・コンタクトシート」、資生堂ギャラリーでさわひらき「Lineament」を観る。杉本博司の素晴らしさは言わずもがなだが、ポーラミュージアムアネックスで観た橋爪彩がとてもよかった。すごくよかった。ほかの作品もたくさん観たいし、これから作風がどうなっていくのか楽しみだ。資生堂ギャラリーでは早くも新装刊2号目が出ていたのでソツなく入手。

ランチはSUZU CAFEでサーモンのリゾット。景気づけにビールもいただく。

寒風吹きすさぶなか、外苑前〜表参道をよろよろと進み、トーキョーカルチャートで「片岡義男+堀江敏幸展」、タンバリンギャラリーで渡辺祐 「Monkey’s Books & Grooves」、南青山Gビルで「カール ラガーフェルド CHANEL The Little Black Jacket 写真展」、ラットホールギャラリーで北島敬三「ISOLATED PLACES」を観る。トーキョーカルチャートはBEAMSの上階にあるギャラリーで、そのようなポップな場所で片岡義男&堀江敏幸という渋いお二方の写真展が開かれているという状況がまず面白くて興奮してしまうのだった。

ZUCCAの上にあるCAFE Z.で夜ごはん。アボカドハンバーグ、ピクルス、フライドポテト、ビール。凍てつく戸外をさまよったあと、暖かい場所でキーンと冷えたビールをのむ幸せ。ピクルスは瓶ごとどーんと、フライドポテトも上にサワークリームとオニオンをのせてどーんと出てくる。初夏にはテラス席でランチしたい。

三月から日誌に天気を記そうと思い、記録しはじめたら、三月は5日ある土曜日のうち4日が雨! という事態を招いてしまったため、もう天候を記載するのはやめる(ふてくされ気味)。

Sunday, April 8

目黒川の桜を愛でたいけれど人ごみはまっぴら、ということで早朝の中目黒に赴くという策を講じる。果たして訪れた午前8時前の中目黒は思っていたよりずっと人でいっぱいだった。ただし、三脚を立てて撮影するようなカメラマンの人たちが多く、ちょっとめずらしい光景で面白くもあった。本気で桜を撮影したいのなら昼間は無理だろう。

それにしても桜の写真は難しい。思い描くように撮れないし、予想外にこんないい写真が撮れた! という幸せな驚きもめったにやってこない。時間が朝であることを活用して、川の壁に映るくっきりとした桜の影をカメラにおさめた。ある程度川ぞいを歩いたところで満足し、お腹もすいたということで近くのフレッシュネスバーガーでアボカドバーガー、フライドポテト、珈琲。

そそくさと表参道に移動し、映画がはじまるまで映画館の目の前のスタバで『流刑』(パヴェーゼ/著、岩波文庫)を読む。

イメージフォーラムで話題の『ニーチェの馬』(タル・ヴェーラ監督、ハンガリー/フランス/スイス/ドイツ、2011年)を観る。前評判をきいていると相当に相当な映画だ、ということだったけれど、そういう意味では想定の域を出ていなかった。とはいえ154分という上映時間はたった90分くらいにしか感じられず、こういう映画は観ていて飽きないとつくづく思い知らされた。ところでちょっと普通でない小説や映画についてあれこれ言われる場合、有名なところではたとえば夢野久作の『ドグラ・マグラ』などは「読んだ人は必ず精神に異常をきたす」などと煽られたもので、もっとも言外の意味があるのならそれはわたしは知らないのだけれど、中学生のときにそれを知ったわたしはなんて恐ろしい小説なのだと震えあがり、それでも怖いもの見たさで意を決して高校生のときに読んでみたらば精神に異常をきたすこともなかったようで、こうした謳い文句は往々にして拍子抜けしてしまうことが多い気がする。

日曜にお引越しした菊地成孔のラジオ「粋な夜電波」が本日18時半からスタートし、先週から復活したピーター・バラカンの「Barakan Beat」が20時から放送されるので、両方とも聴く。