20

Monday, October 24

「iPhone 4Sお渡しできます」と電話が来たので受け取りに行った。iPhoneを操りMac使用歴は14年、業務で使うだけでなくパソコンに関するそこそこ専門的な職務もいくつか経験したものの、生来のデジタル嫌いだ。アナログにくらべて予測不可能なことが起きるし、ある意味スピードに欠けるし、なにやら得体の知れなさもある。デジタル分野の話をしていて「マシン」と言ったらわたしの場合、機械のmachine(マシン)ではなくデジタルアレルギーとしての蕁麻疹(ジンマシン)である。身体が弱く、母親がわたしを抱えてしょっちゅう病院に駆け込んでいた幼少時代、わたしは蕁麻疹を発症し、係り付けの先生の救急外来を受けるために診察室の椅子にぐったりと腰掛けていた。馴染みの先生が来るやいなや突然内線電話をかけ「いま、マシンの典型的なのが来てるから!」と声を発したのをなぜか鮮明に憶えている。「来てるから」なんだったのだろう。というかiPhoneですよiPhone。綺麗ですiPhone 4S。最新デジタル通信機器というより、通信ができたりメモをとったりちょっとした写真を撮ったりできるホワイトチョコレートの箱だと思うことにしている。

Wednesday, October 26

中学、高校時代、もっとも愛読した作家の一人、北杜夫の訃報。お正月には北杜夫のユーモアに満ち満ちたエッセイをのんびりと読むのが習わしだった。北杜夫と深い友情を育んだ遠藤周作、辻邦生、星新一、宮脇俊三……もう皆いなくなってしまった。もう一緒に悲しむことのできる仲間がいない、と語る佐藤愛子の記事を読んだが、佐藤愛子もまたわたしにとって北杜夫と同様に、その痛快かつ勇敢なエッセイを読みあさった作家のひとりとして心に深く刻まれている。

Saturday, October 29

午前中はラジオ聴きながらキッチンで過ごす。夕暮れ前、肌寒くなるほんの一瞬前のやわらかな陽射しの公園を散歩。微かに木々が色づいてきて嬉しい。届いた『装苑』を読む。特集は「装苑男子」で、被写体として登場しているTHE BAWDIESやNICO Touches the Wallsを見て、可愛いにゃあ、と微笑む。あと巻頭で松田翔太が青山のポール・スミスにいて、このショップの屋上は素晴らしく、こういうこじんまりした庭がほしいなとちょっとだけ思う。

*今日の一枚  Jutta Hipp At The Hickory House Vol. 1/Jutta Hipp

Sunday, October 30

本当に久方ぶりに、朝、鮭のおにぎり、長ねぎと白胡麻の味噌汁、卵焼き、緑茶の和食をいただく。このところずっとパン食だったので。食後のコーヒーを飲み干して、お出かけ。一年ぶりの埼玉県立近代美術館&うらわ美術館で「生誕100年記念 瑛九展」鑑賞。瑛九は2004年の夏に渋谷の松濤美術館で「前衛画家の大きな冒険 瑛九」という展示を観てこれがとてもよかったのだけどしばらく観ていなくて、このたび生誕100年ということで大規模な回顧展が開かれるということで楽しみにしていた。七年前に観たときに比べてわたしも少しは成長したというか、前に観たときよりもあれこれと思考をめぐらせることができてよかったと安堵したがしかし、瑛九がこれほど真剣にエスペラント語に取り組んでいたということについてはすっかり失念していた。瑛九は個々の作品云々よりも思想の変遷や技法の多様性、光・影・粒子・雲といったモチーフの選び方などを追っていったほうが面白いのではないかという思いが頭を掠めつつ、それでも点描作品で満たされた部屋はとても素晴らしく、しばし佇んでいた。

サーティーワン・アイスクリームに寄ったらハロウィンのくじを2枚ひかされて、どうせ当たらないでしょ、子どもたちがコインで削ってるけどみんな外れてがっかりしてるじゃない、と思いながらアイスクリームを食べ終え、まあ一応……と思って削ってみたらば紫色のペンとかぼちゃ柄の付箋が当たったのでびっくりした。

銀座まで南下し、BLD GALLERYにて「柴田敏雄 concrete abstraction」を観て、無印良品で観葉植物(ベンジャミン)を購入して帰宅。

今週も体調はいまいち。とにかく身体が怠く、夜起きていられない。わたしとしたことがなんてこと! アイデン&ティティの崩壊である。来週は健康な一週間を!(ラジオっぽい)

*今日の一枚  Tapestry/Carole King