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Tuesday, July 12

お弁当、ご飯+しらす干し+梅干し、卵焼き、牛肉の赤唐辛子炒め、ほうれん草ともやしのソテー、ポテトサラダ、ひじきの煮物、蒸したにんじん、プチトマト。

『ジョルジョ・モランディ−人と芸術』(岡田温司、平凡社新書)。モランディに影響を受けた現代美術家として、ロマン・オパルカ(ワルシャワの画家)、クラウディオ・パルミッジャーニなど。

*今日の一枚  ハミング・スイッチ/二階堂和美

Wednesday, July 13

お弁当、ご飯+しらす干し+梅干し、卵焼き、鶏肉とほうれん草の炒めもの、ひじきの煮物、焼き長ねぎ、蒸したにんじん、プチトマト。

夏の朝5時にベランダで蒸篭を干していると、まるで葉山や茅ヶ崎でカフェを営む店主になったような気がしてくるのでR。オーガニックでロハスな日常のひとコマを昭和軽薄体でお送りする日誌です。

朝ごはんのあと、『Cinema Table』(Cinevine編、アスペクト)を捲る。3分の2が高橋ヨーコによる、映画をイメージした映画のような写真で、残り3分の1がレシピ。さいごにはこの本をつくった人々(馬詰佳香、岡尾美代子、高橋ヨーコほか6人)による“リレーのようなあとがき”があって、この本が生まれるきっかけから完成にいたるまでが慈しみをもって語られていて、読んでいて気持ちがいい。

*今日の一枚  Sophie Milman/Sophie Milman

Thursday, July 14

お弁当、ご飯+しらす干し+梅干し、卵焼き、豚肉ともやしの炒めもの、ひじきの煮物、蒸したにんじん、ほうれん草のソテー、プチトマト。

『ローベルト・ヴァルザー作品集2 助手』(ローベルト・ヴァルザー、若林恵訳、鳥影社)読了。帯に

やがて没落していく事業家一家とそこに雇われた助手、そして彼らを取りまくどこにでもいる人びと−このごくありふれた日常が熱をおび、輝きだすのである。

とあり、これは「どこにでもいる人びと」でも「ありふれた日常」でもないのではないか、と思いつつも、そして『作品集1 タンナー兄弟姉妹』のように物語の劈頭、職を得た若者が次の瞬間には「辞めることにします」と宣うような展開がなかったにせよ、「僕は散歩とおしゃべりがすき」なヴァルザーは健在で、わたしは昂揚と安閑に溢れた彼の散歩についての叙述が大好きだ。

Saturday, July 16

アナログテレビの画面には現在、「アナログ放送終了まであと○○日」と表示されているということを今日知った。

灼熱の銀座へゴー。ライカ銀座店サロンで「Ernest Hemingway by Robert Capa」。ガーディアン・ガーデンで「金瑞姫 ether」。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで「2011 ADC展」。SHISEIDO GALLERYで「榮榮+映里 三生万物」。銀座ニコンサロンで「秋修一 基点 1995」。リコーフォトギャラリー RING CUBEで「上田義彦 火山の島」。シャネル・ネクサス・ホールで「スタジオ アルクール パリとフレンチシネマ」。ポーラミュージアム アネックスで「香りをイメージする香水瓶」。ギャラリー小柳で「佐藤允 初恋」。BLD Galleryで「吉行耕平 The Park」。ギャラリー小柳の展示では佐藤充と成山明光の対談がテキストとして手に入るので読んだ。対談に出てくる事柄に対して二人が注釈をつけているのだけどその注釈がなにやら面白く、先日、鹿島茂と堀江敏幸が行なったトークで堀江敏幸が、脚注のような物語を書きたい、1つの脚注にしかならないようなことについて一つの話を書きたい、というようなことを言っていたのを思い出し、ああ、わたしもそういう話が読みたいのだ、と切に思った。じぶんが読む本の8割はそういう話がいい。

*今日の一枚  Dippin’/Hank Mobley

Sunday, July 17

久しぶりの原美術館。ここはとても夏が似合う美術館。毎回夏に来ているような気がする。冬や春にも来ているはずなのに。

「ミン ウォン/LIFE OF IMITATION」を鑑賞。ミン・ウォンはシンガポール生まれの美術家で、今回の作品で2009年の第53回ヴェネチアビエンナーレで審査員特別表彰を受賞している。鑑賞する前に館内のカフェ、Cafe d’Artで食事をしたのだけど、注文したものが運ばれてくるまで展示内容を示すプログラムを熟読してもどういう展覧会なのかさっぱりわからず、そこに書かれた「「ライフ オブ イミテーション」は、1950〜60年代のシンガポール映画黄金期−国造りに奮闘し、急激な近代化と絶え間ない文化変動の時代−を考察する」展覧会なるものを懸命に想像していた。同じくプログラムには

言語と演技を通して「ワールドシネマ」を考察することで知られるミン ウォンは、我々が「国家」、「家族」、「自己」、「他者」というものに抱いている思い込みを混乱させます」とあり、作品としては、既存の映画の登場人物をすべてミン・ウォン自身が演じていたり執拗に同じシーンを繰り返したり(ただ反復させるのではなく少しずつ演技を変えている。つまり何度も演技し、撮影する)して映画の再構築を試み、「どの映像インスタレーションも、「アイデンティティ」や「帰属」という流動的な概念に我々の目が向くよう明確に構成され

たものになっている。参照されている映画は当時、国民に広く知られていた(らしい)作品やウォン・カーウァイ監督の『花様年華』などで、1950年代に始まったシンガポールの映画黄金期について多少なりとも知っていればさらにこのアーティストの意図するところを汲み取れるのだろうが、そういった背景を知らずに観てもにやりと笑える面白さがある。わたしは『花様年華』の英語題である『In the Mood for Love』というタイトルがとても好きなのだけれど、このたびのミン・ウォンによるインスタレーションのタイトルは「イン ラブ フォア ザ ムード」となっている。

1階の廊下にはミン・ウォンが撮影した映画館のポラロイド写真がずらりと並び、観る者に全盛期の輝きを想い起こさせる。このカーブを描いた廊下は本当に素晴らしい空間で、作品に場所の力が加わって強烈な印象を残すのでここに掛けられた作品は幸せだと思う。

焼けつくような太陽、白壁に反射する光線、眩しすぎて霞む美術館前の一本道。涼しげに揺れる庭の緑がよけい熱気を際立たせる。やっぱりここは真夏の美術館、好きで好きでたまらない場所。