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Friday, July 12

会社の昼休みの時間に英語学習の一環としてNHKの「ラジオ英会話」をiPhone経由で聴いているのだが、講師の遠山顕を中心に構成された三人の出演者たちのやりとりは、君たちはいっしょに住んでいるのか? と疑問を投げかけたくなるほどの息のあいっぷりで、毎度繰りかえされる途中の掛け声などはいちど録音した音源を使いまわしているだけかもしれないが、仮にそうであったとしても感嘆せずにはいられない代物で、以前にツイッターでデイリーポータルZの古賀さんがこの番組のことを「様式美」と評していたのも納得の洗練である [1]。で、そんなラジオ番組の形式ばかりに気をとられ、学習者として集中すべきは内容のほうなのだから、聴きながらこんなことを考えているのは意識を向ける矛先が大いにまちがっている。私の語学力は一向に向上しない。それはともかく、本当に君たちはいっしょに住んではいないのか? 

Saturday, July 13

去年の反省を踏まえて、暑い夏は日中あまり外をうろつかない方針をとる。灼熱の美術館めぐりなど地獄絵図となりかねない。

そろそろ会期の終わりを迎える東京都写真美術館で開催中の「日本写真の1968」展を見るために、恵比寿に向かう。60年代を「政治の季節」と単純に括ってしまうのはあまりに乱暴ではあるけれど、そうした括りを呼び込むような息吹を感じさせる写真がならぶ。展示されている『プロヴォーク』掲載の多木浩二が撮影した写真を見ながら、日本の写真史を綴るにあたっては外すことのできない足跡を残した『プロヴォーク』という存在だが、多木浩二は後年『プロヴォーク』のことをあまり積極的に語りたがらなかったようなので、多木さんが生きていたらどう思っただろう、なんてことを考えた。多木浩二の写真作品を印刷媒体以外で見るのははじめて。

恵比寿で新たなカフェや食事処を開拓する意思はないのかと詰問されかねない頻度でRue Favartにばかり行っているのだが、今宵もやはりRue Favart。ワインをボトル一本頼まなければそれほどの値段にはならないはずとの忖度だったが、食べたり飲んだりでそれなりの合計はそれなりの金額に達する。窓から外に目をやると、傍にある学校の校庭ではお祭りをやっている。打ち上げ花火が見える。

Sunday, July 14

いちど行ってみたかった都立多摩図書館をめざして、中央線に揺られて立川へ。都立多摩図書館は「東京マガジンバンク」という名称で国内外の雑誌がたくさん貯めこまれているというので、長い間ずっと楽しみにしていた。もっとも、というか、もちろん、というか、立川に行きたくて行きたくて仕方がないなんていう気持ちは微塵もなく、都立図書館が雑誌の管理を一元的に多摩にもっていく方針をとったから電車に乗ってわざわざ向かうわけで、広尾の中央図書館で雑誌を管理してくれたならば、私は喜んで広尾に行くだろう。そっちのほうが近いし。いま住んでいる場所から立川は遠いのだ。しかも多摩図書館は立川駅から徒歩だと20分以上かかるらしいので、これから読書となれば体力温存のためにもバスに乗らなくてはならないのだった。広尾であれば有栖川宮記念公園の周辺を散策するという楽しみもあるが、多摩の図書館のまわりは郊外の住宅地がひろがる。グーグルマップでは存在する近所のデニーズも、調べたら潰れていた。図書館には食堂もないのでお昼はどこで食べればいいのか。不都合が多い。

というわけで、十時すぎ立川駅に到着し、図書館にたどり着く前に食事を済ませておいたほうがよいだろうとお店を物色するも、十一時をすぎないと開店しない飲食店が大半で、とりあえずカフェに入るも、そのカフェもランチタイムは十一時からなので時間つぶしにカプチーノを注文し、十一時の到来を待って食事を頼んでそれを胃袋に収め、そう頻繁に往来するわけではないバスの時間を見計らって店を出て、バスに乗り最寄の停留所で降り、そして図書館に着いたときには正午をすぎていた。無駄に苦労している。

閉館までの時間になにを読もうか迷いつつ、今年に入ってからの『モノクル』をすべて目をとおしたところで時間切れ。ロンドンで発行されるこの雑誌、編集長以下やたらと日本びいきなので、日本の話題が結構な頻度で登場する。もう少し安かったら買ってもいいと思うのだが、値段を確認すると、6ポンド、12USドルとならんで、日本での価格は2310円。レート換算で日本円だけやたらに高い。肝心なところで親日じゃない。

夜、立川駅併設の駅ビルでお好み焼きを食べる。夕食の時間としてはちょっと早いかなと思って入ったら、あっという間に満席になる。立川の夜は早いのか。

  1. Twitter / eatmorecakes []