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Monday, March 26

『陰謀のスペクタクル 〈覚醒〉をめぐる映画論的考察』(吉本光宏/著、以文社)を読む。

ハリウッド映画とは、現実に存在するにもかかわらず、必ずしも全体性が把握されているとは言えない、さまざまな政治対立や、経済格差、社会的矛盾を具体的なイメージとして可視化する一方、それらを根本的には解決することなく、しかしまるで解決したかのような印象を作り出し、観客を安心させ、楽しませるためのイデオロギー装置であるという、これまで議論を追ってきたわれわれにとってはもはや当たり前とも思える事実を確認しておく。(p.238)

というので確認した次第。

夜、酒蒸しした蛤と、ほうれん草と玉葱としめじとベーコンを和えたパスタ。赤ワイン。週末に魚屋で買った蛤を塩抜きしておいて、月曜日にパスタで食べるというのが習慣に。鉄板の美味しさ。

Tuesday, March 27

体がだるくて熱っぽい。『愛に関する短いフィルム』(クシシュトフ・キェシロフスキ監督、1988年、ポーランド)を鑑賞。テレビドラマとしてつくられた『デカローグ』というシリーズものの一編「ある愛に関する物語 (あなたは姦淫してはならない)」を劇場版として再編集したのが本作で、『デカローグ』はずっと以前にすべて観ているので二度目の鑑賞といえばいえるけれどもテレビ版と劇場版では編集がだいぶちがっていて、とりわけラストシーンが決定的にちがう。しかしながら体調不良のため最後のほうは疲れて眠ってしまい異同を確認できぬまま撃沈。

Wednesday, March 28

くしゃみ、鼻水、喉の痛みで撃沈。クラリシッド錠200mg、ムコダイン錠500mg、ノイチーム錠90mg、トランサミン錠500mg、アズノールうがい液4%、SPトローチ0.25mg、ザイザル錠5mg、アラミスト点鼻液。

Thursday, March 29

薬をのみつつ社蓄風情でむりやり会社に行く。熱は下がらず。

Friday, March 30

発熱でふたたび撃沈。ジェニナック錠200mg、ムコソルバンLカプセル45mg、ザイザル錠5mg、メジコン錠15mg、ビオフェルミンR錠、ロキソニン錠60mg、ガストローム顆粒66.7%、ムコダイン錠500mg、ノイチーム錠90mg、トランサミン錠500mg。

Saturday, March 31

ロキソニンのある人生。発熱はだいぶ沈静化したものの大事をとって外出を控え映画鑑賞に徹する。『二十歳の死』(アルノー・デプレシャン監督、1991年、フランス)、『魂を救え!』(アルノー・デプレシャン監督、1992年、フランス)、『永遠と一日』(テオ・アンゲロプロス監督、1998年、ギリシャ・フランス・イタリア)。あるいは外出を控えて読書に徹する。『音楽が降りてくる』(湯浅学/著、河出書房新社)、『吉田健一 生誕100年 最後の文士』(河出書房新社)、『クウネル』五月号(マガジンハウス)、『UP』四月号(東京大学出版会)。夜、白米、梅干、大根と人参の味噌汁、かぼちゃの煮物、卵焼き、ひじきの煮物、焼き魚(かます)。病人の食事としてはいささか豪勢にすぎるきらいがあるけれど、病人らしくお酒は控える。

Sunday, April 1

きょうも読書。

人は、作品、演奏、表現されたものというと、 “完成” ということを考える。雑に言えば、完成形が百点満点で、この作品は八十点ぐらい、こっちは六十点ぐらいという考え方をする。しかし、表現することにおいて完成はない。「どこまでいっても完成しない」ということではなく、完成という考え方は、出来事や行為を結果から考える考え方なのだが、出来事や行為には現在という時点から前に向かうプロセスしかない。あるのはプロセスだけで、完成やそれに類する言葉でイメージされる運動がそこで終わる状態がない。(p.11)

と書く保坂和志の連載がはじまった『みすず』四月号(みすず書房)を読んだり、

大地震とそれが惹き起した大津波は、誰のせいでもない。それが分かって、しかしそれで黙っていられるようなものでもない。だから、その分の怒りが原発事故の方へ向けられたのではないかと思っている。大地震と大津波は誰のせいでもないが、原発事故は明らかに誰かのせいだ。それを「想定外の事態」と言ったとしても、誰かがそれを作らなければ、その事故は起こらない。/福島県の原発事故で、怒りの声や恐怖の声は上がったけれども、罪悪感というものはあまりなかったように思う。どういう罪悪感かと言えば、首都圏の人間が電力を消費するために作った原発が、福島県の人達に大災害をもたらした、そのことに関する罪悪感だ。どうしてそれが目立たなかったのかと言えば、原発事故が「誰かのせいで起こったもの」だからだ。原発を作った人間を責めればいい。原発事故と津波被害に対する人の反応の違いは、「誰かのせい」と「誰のせいでもない」の違いだろう。(p.73)

と書く橋本治の第百三十回目をむかえる連載が載っている『一冊の本』四月号(朝日新聞出版)を読んだり。

朝、おにぎりふたつ、油揚げと人参の味噌汁、卵焼き、ほうれん草のおひたし、ほうじ茶。昼、柚子を和えた大根おろしと卵、万能ねぎと刻み海苔をのせた温かいうどん、ほうじ茶。夜、白米、梅干、油揚げとねぎの味噌汁、万能ねぎと生姜をのせた冷や奴、かつおとまぐろのお刺身、ほうじ茶。食事にあわせた飲みものがすべてほうじ茶であることが病人であることの痕跡を残す。