駆け込み鑑賞記

「リニューアルオープンした東京ステーションギャラリーですね」

「“東京駅復元工事完成記念展”と銘打った、「東京駅」「鉄道」をテーマに9組の作家が参加した、現代アートの展覧会です。「東京駅」にも「鉄道」にも「現代アート」にも興味があるのに訪れるのが延び延びになってしまって、会期は明日でおしまい。まさに駆け込み乗車はお止めくださいとじぶんでじぶんを叱咤したい気分です」

パラモデル

「入口のディスプレイにパラモデルみたいな作品があるなーと思ったら、出品してたんですねパラモデル」

「パラモデルって知らなかった」

「えー!? 知らなかったんですか?」

「そんなに驚かれることかな」

「わたしが初めて彼らの作品を観たのは2008年の赤坂の街でアートフェスティバルをやったときで、青山悟や志村信裕なんかと一緒に知ったんですけど」

「その時も模型ですか」

「ええ、模型の線路をつなげてました。そのアートフェスでは赤坂の街いったいに作品を点在させていたんですが、パラモデルは廃校になった小学校の体育館が会場で、床も壁も天井も、体育館全体にレールをはりめぐらせていました。パラモデルの作品は子どもが見たら楽しいだろうなっていつも思うんですけど、このときの展示はまさに子どもが主役の体育館が舞台でしたのでとてもしっくりきて、するっと作品の世界に入っていけました」

本城直季

「本城直季は相変わらず本城直季でしたけど」

「俯瞰で撮って、建物がミニチュアに見えるという」

「でも新作として発表していた作品は東京駅を横から撮っていて、これまでの本城直季の感じとは少し毛色が違ってました」

「これからの本城直季がちょっと気になります」

クワクボリョウタ

「今回の展示でいちばんインパクトがあったのは、鉄道模型と日用品を使って影絵を生み出すクワクボリョウタの作品じゃないでしょうか」

「そうですね」

「いわゆる「現代アート」の評価としてどうか言われると困るんだけど、思わず「おぉー!」と声を出したくなる作品でしょ。隣にいた家族連れも、おぉー!って感嘆してたし」

「みんなで、おぉー!」

「おぉー!」

「わたしもおぉー!って思いました。最初説明を読んで「静謐な影絵」ってあって、影絵かあ、とあんまり期待しないで見てみたら、すごいおもしろかったです。鉄道ファンとしては嬉しい展示でした」

「Eテレなんかに受けの良さそうな作品かと」

「いま調べたところ、もうEテレに出てます!」

「あらま」

柴川敏之

「パラモデルがそうだったように、会場のいろんなところにこの人の作品が点在していましたね」

「不思議なのは、ペコちゃんやらキューピーやら招き猫やらが化石化して、いわゆるお馴染みのあの姿とは変わり果てた状態になってしまっているんだけど、そんなになっちゃっても陰惨さがまったくないというか、なにやらユーモラスに見えることですよね。さらに、化石化しても動いている。招き猫はちゃんと手を振ってる。そこはもしかしたら底知れない恐怖を感じさせるかもしれない」

秋山さやか

「この作家の作品はいろんな展覧会で何度も目にしてます」

「そう? 好み?」

「いや、実はちょっと苦手で。なんででしょう。刺繍モチーフの作品は好きなはずなんですけど」

廣瀬通孝

「システム工学の学者なんですね、この方は」

「交通系ICカードをかざすと、過去の利用履歴がスクリーンに映し出されるっていう作品なんだけど、むかしSuicaが出始めた頃、じぶんの行動範囲がモニタリングされている感じがちょっと気味が悪いって感覚があったように思うんです。でもこの作品には、そのての思想の問題として扱うべきような側面はあまり感じされませんね。最先端の技術を使っているんだろうけど、どこか牧歌的な作品に見える。それだけICカードが普及したってことだろうけど。おばちゃんの集団がわいわい楽しそうにやってましたから」

「あの作品にカードをかざすと、かざしたって履歴もまた取られるんじゃないかと疑っちゃったんだけど」

「そう思っちゃうよね」

「そう思っちゃうじぶんは時代に追いついていないんでしょうか」

大州大作

「じわじわきました」

「じわじわ?」

「この人の作品、説明文を読んだ段階ではあんまりピンとこなかったんですけど、だんだんよく見えてきて。とにかく、じわじわきました」

ヤマガミユキヒロ

「細密画と映像を重ねあわせる作品だけど、東京駅のコンコースでの人々の往来のやつがおもしろかったかな」

「わたしはその前にあった朝昼晩と移ろいゆくほうをずっと見てました。東京駅の駅舎というアイコンの存在が大きい気もして、ほかの素材だったらどう見えるのかなというのが、少し気になりましたが」

廣村正彰

「館内のレンガ壁面を背景にして、老若男女が順々にあらわれ壁を見つめるっていう映像作品なんだけど」

「クワクボリョウタの作品でおぉー!って言ってた家族連れが、しーんとなってました」

「壁っていうと、遮るものであったり、乗り越えるものでもあったり、いろんなメタファーを込めることのできるものですよね。嘆きの壁だとかベルリンの壁だとか、宗教的にも政治的にも壁というのは重要な意味をもつものとしてある。でもこの作品で、作家本人にどれほどの意図が込められているのかはわかるような、わからないような」

「総じて、鉄道好きには萌え萌えな展覧会でした! とにかく再オープンは嬉しいです。会場も広いし」

「入場料500円だったし。Suicaのデポジットとおなじ金額」

2013年2月23日 銀座 SUZU CAFE にて ( 文責:capriciu )