01. Love Love Love / Tristan Prettyman
02. Today is the Day / Yo La Tengo
03. One Note Samba / Sergio Mendes
04. A Summer Romance / Beverly Kenney
05. Summer Sounds / Maylee Todd
06. Cascades / Felicidade A Brasil
07. Summer / Feather and Down
08. Forever Friends / REMEDIOS
09. august / mama! milk
10. Jamaica Song / Booker T. Jones

「鎌倉の由比ヶ浜海岸で晩夏に聴きたい曲を選びます」

「ではまず、わたしから。「Love Love Love」という曲ではじめましょう!」

「ドリカム」

「ではなくて。トリスタン・プリティマンという女性シンガーソングライターの歌で、『Twentythree』というアルバムからの曲です。このアルバム、海のそばで聴きたいサーフ・ミュージックがいっぱい詰まってて。夏のビーチサイドにぴったりだと思いますよ。本人もサーファーらしいですし」

「サーフィンねー(棒読み)。じゃあそれに対抗すべくこちらが繰り出すのは、ヨ・ラ・テンゴ『Summer Sun』から「Today is the Day」。『Summer Sun』はサーフィンなんていう領域とは無縁な真夏なのに日焼けしてない色白文化系人間たちのためのマスターピースですよ!」

「なんでそんな対抗意識満々の選曲……。それにしても『Summer Sun』というタイトルのアルバムなのにこのジャケは……」

「全員厚着」

「えーっと、気をとりなおして、セルジオ・メンデスの「One Note Samba」でも聴きましょう。ワンダ・ジ・サーのボーカルで」

「前回の「盛夏篇」でもクインシー・ジョーンズの演奏で「One Note Samba」は選んでるんだけど」

「ま、盛夏も晩夏もどちらもOKということで。とにかく夏に聴きたい曲ですよ、これは。セルジオ・メンデスのことは高校一年生のときに友だちに教えてもらって、それ以降ずっと愛聴盤です」

「では女性ボーカルをつづけて。ジャズ・ボーカルものの逸品、ビヴァリー・ケニーの『Sings For Playboys』から「A Summer Romance」。繊細なハスキーさで甘すぎずのこのボーカル、日本でとても人気がある歌手ですが。晩夏の黄昏時に聴くのも一興かと」

「夏の終わりの切ない雰囲気にぴったりですね」

「で、その切ない気分を木っ端微塵に粉砕する感じで、つづけてメイリー・トッドの「Summer Sounds」を聴きましょう。『Choose Your Own Adventure』収録。カナダのミュージシャンですがプロフィールとかさておき、まずこれはPVを観ていただきたい ((Maylee – Tunog Ng Taginit (Summer Sounds) – MUSIC VIDEO))。なんでしょうこれ。1分6秒あたりの車に轢かれるところから途端におかしくなる」

「最初からおかしいですって、これ」

「アルバムのジャケットも不思議ちゃんぶり全開」

「調べてみたら “レディ・ガガ・ミーツ・ノラ・ジョーンズ” というキャッチコピーがこの人にはあるようで……」

「レディ・ガガとノラ・ジョーンズ。「まぜるな危険」という注意書きを書いておくべきかと。でもPVはいかれてるけど、曲はなかなかいいんですよ」

「えーっと、ふたたび気をとりなおして、二曲つづけます。まずはフェリシダージ・ア・ブラジルというフランスの男女デュオで「Cascades」。このアルバムについて調べてみると誰も彼もが「大傑作!」「大傑作!」って言っていて、それがおもしろかったんですけど。実際に聴いてみたら、気もちのよいフレンチ・ボッサで、とてもよかったです。パリ・ミーツ・ボサノバという感じでしょうか」

「まぜても安心」

「ですね。つづけてフェザー・アンド・ダウンの「Summer」。スウェーデンの女性歌手によるソロ・プロジェクトだそうで、この『The Bird’s Nest』ってアルバム、ジャケットがかわいらしくて気に入りまして。北欧の夏。涼しげでしょ。では、そちらも二曲つづけてお願いします」

「岩井俊二の映画(元はドラマ)『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』のサントラからREMEDIOSの「Forever Friends」。八月末まで岩井俊二の公式サイトで無料上映されてる。『打ち上げ花火』の映像や物語はリリシズムの極北のような作品だと思うけど、なにより、とにかく使われている音楽が好きなんですよ。REMEDIOSの音楽でリリシズム完成という感じでしょうか。the innocence mission っぽい歌声もよくて。あともう一曲は、アコーディオンとコントラバスのユニット mama! milk の曲で「august」。CDなりiTunesなりで音源を聴くのもいいですけど、この人たちはライブがすばらしいです。アコーディオンという楽器の妖艶さを確認できる。mama! milk はどんな音楽かって説明するのがむずかしいのだけれど、ジャズだったりタンゴだったりクラシックだったりオリエンタルでもあるし東欧の雰囲気も入ってる」

「では締めの曲はわたしで。ブッカー・T・ジョーンズの「Jamaica Song」を。『Evergreen』というアルバムに入っていますが、この曲は長らくフリー・ソウル・コンピにしか入っていなくて、昨年、やっとリマスターされてCD化されました。夏の夕暮れ、浜辺で聴いたらもう涙腺がどうにかなっちゃいそうな名曲です」

「それはそうと、もう暑くて死にそうなんだけど。由比ケ浜海岸って人口密度高すぎで音楽聴くどころじゃないんだけど。夕暮れ眺めながら涙腺どうのこうのどころじゃないんだけど。日没まであと……」

「三時間くらいありますね」

「帰っていいですか」

2011年8月某日 鎌倉 由比ヶ浜海岸にて ( 文責:capriciu )