Monday, September 18
連日の外出と外食で疲労は溜まるも貯蓄は溜まらず。朝食で久方ぶりにパンケーキを焼く。掃除と洗濯。9月の下旬に突入しようというのに異様な高温と湿度がつづく。気象予報士の増田雅昭によれば「もし9月に20℃下回らなかったらけっこう地球終わった感」とのことだが、この先の天気予報を瞥見すると下回らない可能性も大いにありそう。強い陽射しのなか近所のスーパーマーケットまで赴いて買いものを済ませる。常備菜づくり。昼食、海鮮丼(鮪の刺身、鮪のたたき、生卵、しらす、小葱)、小松菜の味噌汁。午後は読書。池田真歩『首都の議会 近代移行期東京の政治秩序と都市改造』(東京大学出版会)を最後まで。「アーティゾン美術館」で開催中の展覧会「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」のカタログに目をとおす。日本の近代絵画に対する山口晃の問題意識を考える素材として、石橋正二郎のコレクションはとても親和的だと思うので、学芸員の平間理香が「山口は、前身のブリヂストン美術館に訪れたことはないという」と書いているのに意外感をもつ。そのほか、山口晃が西洋絵画を解説する2017年6月発行の『BRUTUS』(マガジンハウス)、銀座の「資生堂ギャラリー」で入手した『花椿』(資生堂)、最新号の『FUDGE』(三栄)を読む。夕食、ミートボールのクリーム煮、グリーンサラダ(グリーンリーフ、トマト、胡瓜、紫玉葱、ブロッコリー、茹で卵)。「サントリー プレミアムモルツ」を飲む。
Tuesday, September 19
夏が終わらず、高温多湿のまま。先週末に銀座の「UNIQLO TOKYO」でクレア・ワイト・ケラーと組んだウィメンズの新ライン「UNIQLO : C」の現物を見たのだが、価格以上の卓抜な商品とはとても思えず、販促用の写真が上手いなとの感想を抱く。当たり前の事実として安価に服をつくるのには限界がある。夕食、豚肉と小松菜の大蒜塩炒め。「キリンクラシックラガー」を飲む。読書。中平卓馬『なぜ、植物図鑑か 中平卓馬映像論集』(ちくま学芸文庫)を再訪。泥酔して昏睡状態になり言語と記憶に障害が残った以後の中平卓馬の写真は、上手いのか下手なのかよくわからないし、意図や意味も要領を得ないのだが、倒れる前の「なぜ、植物図鑑か」に書いているつぎのくだりを実践していると考えれば、少しは見通しがよくなるかもしれない。
なによりも図鑑であること。魚類図鑑、鉱山植物図鑑、錦鯉図鑑といった子供の本でよく見るような図鑑であること。図鑑は直接的に当の対象を明快に指示することをその最大の機能とする。あらゆる陰影、またそこにしのび込む情緒を斥けてなりたつのが図鑑である。“悲しそうな” 猫の図鑑というものは存在しない。もし図鑑に少しでもあいまいなる部分があるとすれば、それは図鑑の機能を果たしてはいない。あらゆるものの羅列、並置がまた図鑑の性格である。図鑑はけっしてあるものを特権化し、それを中心に組み立てられる全体ではない。つまりそこにある部分は全体に浸透された部分ではなく、部分はつねに部分にとどまり、その向かう側にはなにもない。図鑑の方法とは徹底したjuxtapositionである。この並置の方法こそまた私の方法でなければならない。そしてまた図鑑は輝くばかりの事物の表層をなぞるだけである。その内側に入り込んだり、その裏側にある意味を探ろうとする下司な好奇心、あるいは私の思い上がりを図鑑は徹底的に拒絶して、事物が事物であることを明確化することだけで成立する。これはまた私の方法でなければならないだろう。
Wednesday, September 20
中平卓馬『なぜ、植物図鑑か 中平卓馬映像論集』(ちくま学芸文庫)に、著作権をめぐって白川義員がマッド・アマノを訴えた裁判についての言及があって、係争の推移をあらためて確認しようとWikipediaを見たらもの凄く詳細に記述されている。勉強になる。夕食、鶏ハムと小葱を添えた醤油ラーメン。「サントリー プレミアムモルツ」を飲む。読書。水村美苗『続明暗』(ちくま文庫)を読む。遠い記憶では新潮文庫に収まっていた本書は、絶版を経て現在はちくま文庫から刊行されている。事情を知らない10代の頃、中規模書店の新潮文庫の棚において、夏目漱石『明暗』の横にさし挟まっていた『続明暗』を目にし、この本は何だろうと多少は気になったものの手にとるには至らず。月日は流れて水村美苗がどのような作家かをそれなりに把握した後でも読まずじまいだった小説に、このたびようやく手をつける。小説は、新潮文庫版に添えられた跋文を含めて、優れた漱石論になっていることに今更ながら感銘を受ける。
興味と不信感と反発の中で『続明暗』を読み始めるその読者を、作者が漱石であろうとなかろうとどうでもよくなるところまでもって行くには、よほど面白くなければならない。私は『続明暗』が『明暗』に比べてより「面白い読み物」になるように試みたのである。
ゆえに漱石と意図的にたがえたことがいくつかある。まず『続明暗』では漱石のふつうの小説より筋の展開というものを劇的にしようとした。筋の展開というものは読者をひっぱる力を一番もつ。次に段落を多くした。これは現代の読者の好みに合わせたものである。さらに心理描写を少なくした。これは私自身『明暗』を読んで少し煩雑すぎると思ったことによる。語り手が物語の流れからそれ、文明や人生について諧謔をまじえて考察するという、漱石特有の小説法も差し控えた。これは私の力では上手く入れられそうにもなかったからである。もちろん漱石の小説を特徴づける、大団円にいたっての物語の破綻は真似しようとは思わなかった。漱石の破綻は書き手が漱石だから意味をもつのであり、私の破綻には意味がない。反対に私は、漱石の資質からいっても体力からいっても不可能だったかもしれない、破綻のない結末を与えようとした。
Thursday, September 21
夕食、鶏ハムと小葱を添えた塩ラーメン。「アサヒ生ビール マルエフ」を飲む。ジャニーズ事務所をめぐる騒動に関して、伊集院静が支離滅裂な印象論を『週刊現代』(講談社)のコラムに書いていると、吉田豪が報告している。吉田豪もまた「櫻井翔の場合、父親が官僚だった人間が政治のニュースを読んでも信用できないって主張するほうがまだ理解できる」と根拠薄弱ことを述べて筆が滑っているがそれはともかく。伊集院静は『週刊文春』(文藝春秋)でも連載をもっていたと思うが、こんなお荷物な文章を書く作家など切ってしまえばよいと普通は考えるところ、そうはならないのが出版社発の雑誌ジャーナリズムの限界で、出版社による作家批判が難しいのはかつて『噂の真相』で岡留安則がいっていたことでもある。ところで、この日記で伊集院静について何か言及しているだろうかと検索してみたら、2017年4月のつぎのような記述がでてきて、適切なことを書いている過去のじぶんに感心する。
新年度。サントリーの新聞広告で伊集院静が新社会人に向けたメッセージを書いている。あんな中身のない文章を書いて原稿料が貰えるのだから羨ましい。
Friday, September 22
読書。蓮實重彦『夏目漱石論』(講談社文芸文庫)を読む。夕食、豚肉と小松菜とキムチの炒めもの。「サッポロ黒ラベル」を飲む。夜、映画鑑賞。『花様年華』(ウォン・カーウァイ/監督、2000年)を見る。
Saturday, September 23
朝のうちは雨模様だが日中は曇りとの前日の天気予報を信じたまま洗濯機を回してしまったが、外は小糠雨が止まない。洗濯物を部屋干しに切り替える。長傘を持参して図書館、ドラッグストア、花屋をまわる。昼食は紫玉葱と胡瓜を添えた「negombo33」監修のポークビンダルー。読書。筑摩書房のPR誌『ちくま』10月号と小川洋子・佐伯一麦『川端康成の話をしようじゃないか』(田畑書店)を読む。『ちくま』掲載の苅谷剛彦の連載で、柳父章の翻訳語についての議論(『翻訳語の論理』)を援用しているのだが、「柳父」が途中で「柳井」になってまた「柳父」に戻ったりと不可解な誤植が見られる。
柳父さんの分析対象は明治時代を代表する二人の知識人の議論の仕方、あるいはその特徴にあります。一人は福沢諭吉、そしてもう一人は加藤弘之です。柳井さんの本とは順序が前後しますが、加藤のほうから紹介します。
どのような推移で発生したのか不思議な誤植だが、もっと奇妙なのは印刷されるまでに出版社側で誰も指摘しなかったのかということである。原稿を受け取って一読すれば「柳父」が「柳井」になっているので修正しておきますと簡単にいえる案件である。紙媒体は編集者の目が入っているので品質が担保されるとの所説が存在するが、その主張の正当性はだいぶ怪しくなってしまう。下丸子の洋菓子店「お菓子と結び」のケーキと珈琲でお茶の時間。夕方、近所のスーパーマーケットで買いもの。常備菜づくり。夕食、牛肉のステーキ、、クレソンのソテー、キャロットラペ、王子サーモンとレモン、ブルーチーズ、バゲット。ロゼワイン(Chapeau Melon Rose)を飲む。YouTubeで「哲学の劇場」と「山田五郎オトナの教養講座」を視聴する。
Sunday, September 24
ようやく朝は涼しくなってきている。朝というのは午前4時すぎのことだが、昼間はまだ夏日を記録。掃除と洗濯とアイロンがけ。昼食、豚肉と小葱としらすを添えた素麺。箱買いした半田素麺を使い切る。映画鑑賞。『オルメイヤーの阿房宮』(シャンタル・アケルマン/監督、2011年)を見る。読書。増補版の東浩紀『観光客の哲学』(ゲンロン)を途中まで。夕食、ガスパチョ、蛸と馬鈴薯のガーリックソテー、きのことベーコンのスクランブルエッグ、バゲット。「ヱビスビール」を飲む。