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Monday, December 5

実態は欺瞞まみれにもかかわらず清廉潔白を建前とする偽善的なオリンピックよりも、清々しく金まみれのFIFAワールドカップのほうが余程好感をもてる。インターネットで全試合を観戦できる環境が整っているのに時差の関係で日本における試合開始時刻が夜更けか明け方なので、睡眠のリズムを犠牲にしてまでも視聴する熱心さはないものだから、いまのところ事実上ほとんど見ていないに等しい。読書。古本の積読を消化する。金沢の「オヨヨ書林」で購入した阿部良雄『若いヨーロッパ パリ留学記』(中公文庫)を読む。夕食、鶏の炊き込みご飯、豚汁(豚肉、人参、大根、油揚げ、焼豆腐、長葱)、漬物(大根の山椒漬け、柴漬け)、麦酒。

Tuesday, December 6

朝晩の会社の往復は本格的な冬の寒さ。読書。古本の積読を消化する。学芸大学の「SUNNY BOY BOOKS」で購入した吉行淳之介『街角の煙草屋までの旅』(講談社文庫)を読む。夕食、ソーセージと玉葱のオムライス、麦酒。駒込に住んでいた頃に通っていた花屋「89’s flower」で注文したクリスマスリースが届く。

Wednesday, December 7

読書。本日もまた古本の積読を消化する。大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』(新潮文庫)を読む。大江健三郎の戦後民主主義者の皮を被った底意地の悪さが結構好き。ところで、村上春樹がノーベル文学賞を受賞するかどうかが毎年のように注目されるが、話題にするわりにノーベル文学賞の存在を書店界隈を含めて人びとはさして重要視していないのではと思う。ノーベル文学賞を受賞した歴代の外国人作家の小説が本屋の棚を跋扈する光景など見たことがないし、過去の日本人受賞者である川端康成にせよ大江健三郎にせよ彼らの小説がきちんと並んでいるのは大型書店であっても少数派である。売れないから置いていないという明快な市場の原理がそこにある。夕食、肉うどん、麦酒。

Thursday, December 8

頭痛がぶり返す。読書。ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』(布施由紀子/訳、ちくま学芸文庫)の上巻を読み始める。2016年に図書館で単行本を借りて読んで以来の再読。夕食、「無印良品」のケララチキンカレー、麦酒。

Friday, December 9

吉田喜重の訃報を知る。映画の舞台挨拶やトークショーに赴くことは皆無に近いので、吉田喜重は実際に目撃したことのある唯一の映画監督かもしれない。「ポレポレ東中野」で『エロス+虐殺』(1970年)の上映後に岡田茉莉子と一緒に登壇する姿を見た。夕食、鰻重、筍と卵と大葉のお吸い物、麦酒。頭痛の症状は一進一退で本日は頭痛薬を飲まずにすごす。

Saturday, December 10

日本代表が去ってからようやくFIFAワールドカップの観戦体制に入る。早朝4時前に起床して珈琲を淹れ、準々決勝のオランダ対アルゼンチンの試合を生放送で視聴し、つづけてクロアチア対ブラジルの試合を録画を見る。どちらの試合もPK戦でようやく決着がついた熱戦で大変おもしろく見たが、現地で臨場感を味わうならともかく、画面を経由してのスポーツ観戦は結構な時間を食うわりにさして生産的な営みというわけではないので、これを年がら年中やっているらしい小柳ルミ子はどうかしている。オランダ対アルゼンチン戦では、みのもんたにナレーションをやってもらいたい乱闘騒ぎが途中で発生。観戦後、近所までスーパーマーケットで食料品の調達に出かける。昼食、鶏ハムと白菜と小葱のパスタ。おやつとして「金澤福うさぎ」の饅頭と「Romi-Unie Confiture」の洋菓子を食べる。珈琲を飲みながら今年見た展覧会のチラシの整理整頓。夕食、鮪としらすと小葱と生卵をのせた海鮮丼、白菜と茄子の味噌汁、のどぐろ生姜入りしぐれ煮。「京都醸造」の「冬の気まぐれ」を飲む。

Sunday, December 11

本日も4時前に起床し、ワールドカップのイングランド対フランスの試合を生放送で見てから、後追いでモロッコ対ポルトガルの試合を見る。モロッコの勝利によりアフリカ勢で初のベスト4進出とのこと。ヨーロッパ各国の黒人選手の出自を遡るとアフリカ系であることを考えれば国民国家単位で競うことの滑稽さが滲みでるのだが、しかし国民国家単位で争うスポーツをナショナリズムの高揚と短絡的に結びつけるのもまた薮睨みで、来年になったら熱心なファン以外忘れるであろうワールドカップをめぐる狂騒がナショナリズムと形容するには無理がある。ただの馬鹿騒ぎと表現したほうがしっくりくる。昼食、鶏ハムとほうれん草とトマトのパスタ。読書。中井久夫『清陰星雨』(みすず書房)を読む。夕食、豚挽肉のロールキャベツ、ホワイトセロリとしらすのサラダ、バゲット。ジェイアール京都伊勢丹の地下食料品売場で買った「KAKEHASHI BREWING」の「ASOBI」を飲む。