Monday, August 16
昨日ほどではないにせよ、もう夏が終わったかのように肌寒い。曇り時々雨。気温の乱高下が激しくて体調をうまく適合させるのがむずかしい。読書。思うところあって、と前口上を述べないと再読の必然性が感じられない柄谷行人『日本近代文学の起源』(講談社文芸文庫)を繙く。しかし思うところはまったくなく、先週の本棚整理中に目についたのであらためて読み返している。強いてもっともらしい理由づけをすれば、大岡昇平『成城だより 付・作家の日記』(中公文庫)で「風景の発見」について言及があるのを最近読んだのが契機か。
帰宅すると『MONOCLE』9月号が届いている。夕食、白米、わかめと玉葱の味噌汁、豚肉とキムチと小葱の炒めもの、大根の糠漬け、プレミアムモルツ。
Tuesday, August 17
時折小雨の降る曇天模様。読書。小林秀雄『近代絵画』(新潮文庫)を読む。ボードレール、モネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーガン、ルノアール、ドガ、ピカソの名前が章立てにならぶ。マネにも一章を割いてもらいたい気もするが、小林秀雄はもちろんマネの重要性は承知している。
歴史への関心は、画家達の心から、過去の重荷を決して除きはしなかった。全く逆なのであって、彼等ほど過去の重荷に苦しんだものはない。歴史的認識は、彼等を伝統という問題の困難さに直面させたのである。マネにとってアカデミズムを侮蔑する事は易しい事であった。それは既に死んでいたから。だが、ゴヤを見出し、ヴェラスケスを発見するという事は、彼等の絵が、マネ自身のうちに蘇生し、彼自身の力で、この始末をつけねばならぬ困難な経験だったのである。美術上の歴史的視野が拡るにつれて、画家達は、烈しく過去に問うようになった。過去の作品に関する彼等の自由な審美的経験にとっては、歴史家の見る過去という限界線は、全く無力であり、彼等は、過去という鏡に映ずる限りない自己の像に苦しむ様になったのである。(p.206)
夕食、白米、葱塩スープ、麻婆豆腐、ヱビスビール。
迅速な対応をしているらしい東京都墨田区のワクチン接種の状況を取材した江川紹子の記事 ((東京・墨田区のワクチン接種はなぜ速いのか))をうけて、自治体の奮闘ぶりに墨田区に対して好感を抱く人びとが増えるかもしれないが、「隅田川沿いにある同区は、水害の危機と常に向き合っている。最悪の事態では、ほぼ全域が水没することもありうる」とのくだりを読んで住居を構えるのに適しているかを考えると、冷静になる。
Wednesday, August 18
晴れ時々曇り、ところにより一時雨。という天気予報どおりに推移する。読書。柄谷行人『マルクスその可能性の中心』(講談社学術文庫)を読む。『日本近代文学の起源』以上にいま読む積極的理由を見出せない内容だと思いつつ通読。
夕食、夏野菜(トマト、ズッキーニ、ピーマン、玉葱)とベーコンのアンチョビパスタ、ヱビスビール。
Thursday, August 19
まだ蒸し暑いが、朝晩の空気はうっすら夏後半の肌触り。読書。新潮社による「トマス・ピンチョン全小説」の刊行がはじまったとき、「全小説」と銘打っているけれども、これからピンチョンが新しい小説を発表したらどうするのかと思ったものだが、単純に「全小説」の枠を増やして追加すればよいだけだった。というわけで本日の読書は、トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』(佐藤良明、栩木玲子/訳、新潮社)。相変わらずピンチョンの小説は馬鹿馬鹿しい科白満載。
「スーザン・ソンタグがなんて言ってるか、知ってる?」
「前髪の白髪、気に入ってるから染めないでおく、とか?」
(p.172)
夕食、素麺、薬味(茗荷、長葱、生姜)、茄子の揚げびたしと大根おろし、ヱビスビール。
Friday, August 20
仕事が忙しくて労働が苦痛。読書。ピンチョン『ブリーディング・エッジ』のつづきを読む。夕食、豚肉と玉葱の焼きそば、紅生姜、ヱビスビール。
Saturday, August 21
午前4時44分起床。朝食、目玉焼き、サニーレタスとベーコンとトマトのサラダ、ミルクブレッドとクリームチーズとブルーベリージャム、ヨーグルト、珈琲。近所のスーパーマーケットと花屋で買いもの。昼食、鮪としらすと生卵と小葱と刻み海苔の海鮮丼、ほうれん草の味噌汁、焙じ茶。溜まった雑誌を少し整理してから、午後は読書。木村敏『からだ・こころ・生命』(講談社学術文庫)を読む。『週刊読書人』を定期購読することにしたので、早速届いた今週号に目をとおす。緑慎也と武田徹による立花隆追悼対談。夕食、黒毛和牛のバラ肉とモモ肉の焼肉、サンチュ、玉葱、ピーマン、卵とわかめの中華風スープ、キムチ、よなよなエール。
柄谷行人『日本近代文学の起源』(講談社文芸文庫)を読み返して、文学に関する話ではないのだが、あきらかに頓珍漢なことが書いてあると思ったのはつぎのくだり。
デュボスのいうように、「人間と微生物との闘争」というイメージは、まったく神学的なものである。細菌とは、いわば眼にみえない偏在している「悪」なのだ。たとえば、虫歯についてよく小悪魔の活動が図示されるが、それは錯覚を与えている。虫歯はほとんど遺伝的なものであって、歯をみがいてもむだだからである。ただ歯をみがくことには、別の文化的な価値があるにすぎない。(p.143)
虫歯になりやすいかどうかは遺伝的な要素が関与しているかもしれないが、「歯をみがいてもむだ」って大半の歯医者は聞いて呆れると思う。歯磨きは無意味という言説が過去流布していたのだろうか。柄谷行人は『日本近代文学の起源』を改訂して「定本」として刊行しているので、そちらはどうなっているのだろうと思って『定本 日本近代文学の起源』(岩波現代文庫)を図書館で借りて該当箇所を確認してみたところ、虫歯に関するくだりはバッサリ削られ書き直されていた。
Sunday, August 22
朝食、目玉焼き、サニーレタスとベーコンとトマトのサラダ、ミルクブレッドとクリームチーズとブルーベリージャム、ヨーグルト、珈琲。近所のドラッグストアで日用品を購入して、スーパーマーケットで食材の調達を済ませる。昼食、素麺、薬味(長葱、茗荷、生姜)、枝豆、焙じ茶。読書。先週末に会社帰りに本屋で購入した、村上春樹『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(文藝春秋)を読む。クラシック音楽のLPレコード紹介。サクッと読めるだろうと高を括っていたら、結構分量があって本日の読書はこの一冊のみ。いいレコードを安価で入手した記憶がこびりついているようで、100円だったとか1ドルだったとかのエピソードがやたらとでてくる。夕食、鱈と鶏肉とトマトとほうれん草のパスタ、オーストラリアの白ワイン。
今週Spotifyで聴いたもの。
– Due North/ Liam Kazar, 2021
– Songhai / Ketama, Toumani Diabate, Danny Thompson, 1988
– MADAME GOLD / Gavin Turek, 2021
– Head Of Roses / Flock Of Dimes, 2021
– A Fool To Care / Boz Scaggs, 2015
– Forest Of Your Problems / Snapped Ankles, 2021
– From Natchez To New York / Olu Dara, 1998
– Neighborhoods / Olu Dara, 2001
– CRATER / Booker Stardrum, 2021
– The Waiting Game / Tina Brooks, 2002
– A Beautiful Revolution (Pt1) / Common, 2020
– The word with in our bedroom / Drug Store Romeos, 2021
– The Fifth Avenue Band / The Fifth Avenue Band, 1969
– No Luscious Life / Golden Teacher, 2017
– Happier Than Ever / Billie Eilish, 2021
– 3:33 / Debi Nova, 2020
– Schumann: Symphony No.2, Op.61 & Symphony No.3, Op.97 / Leonard Bernstein & New York Philharmonic Orchestra, 2018
– Schumann: Symphony No.2, Op.61 / George Szell & Cleveland Orchestra, 2018
– Mozart: Piano Concerto No.25, K.503 & Serenade No.12, K.388 / Daniel Barenboim, Otto Klemperer & New Philharmonia Orchestra, 1968
– Mozart: Concertos No. 25 & 5 for Piano and Orchestra / Murray Perahia & English Chamber Orchestra, 1982