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Wednesday, February 21

ラジオでピーター・バラカンが絶賛していた『人生タクシー』(ジャファール・パナヒ監督、2015年)を観た。びっくりした。まったくもってびっくりしてしまった。言葉を失うほどに、もの凄く、面白かった。前情報を一切入れずに観たのもよかったかもしれない。観ているあいだにいろいろ謎で、でも謎は謎のままで、どこまでも面白い。前提をわかっていれば180℃違っていたかもしれないが、知らないので、なぜあのような撮り方をしているのかずうっと謎で、妙な緊張感や不穏な空気にも狐につままれたような感覚で、それがかえってよかった、面白さが増幅されたこととなった。こんなすごいものを観てしまうと、人間の凄さ、なんて安直に言いたくないけれど、そういうものを感じてしまうな。

Twitterなどで『人生タクシー』について調べていたら寝床のなかで大杉漣の訃報を知り、これまたまったくもって驚愕してしまった。これは…ちょっと、まさか、という思い。そりゃないよ、と。タイムラインが大杉漣だらけだ。いろんな作品に現在も出演中で、この先どうするのだろう。最近では『シン・ゴジラ』の総理が記憶に新しいが、わたしにとって大杉漣はやはり『アベックモンマリ』だな。ズボンを脱がないと用を足せない夫役が素晴らしかった。本当の“エロ可愛い”とはあの役の大杉漣のことを言うのだ。

Saturday, February 24

お昼は国立新美術館内のBRASSERIE PAUL BOCUSE Le Museeにて、バゲットとリエット、帆立貝のフリカッセ、クリームブリュレ、赤ワイン、紅茶をいただく。その後、「20th DOMANI・明日」展を観る。よかったものとよくなかったものの差が激しいな。よかったのは、最初の田中麻記子と、最後の中谷ミチコ。中谷ミチコは最初墨のドローイングかな、などと思っていたら途中で彫刻と気づき、驚いた。気づくのが遅くて、わたしって間抜けだなと思った。物販コーナーに並べられていた田中麻記子の絵のハンカチーフがカラフルで可愛らしかったので購入した。

渋谷に移動し、CASE TOKYOで「鈴木理策 Water Mirror」鑑賞。大好きな水鏡シリーズ。辛抱たまらず写真集『Water Mirror』を買ってしまう。

Sunday, February 25

『あなただけ今晩は』(ビリー・ワイルダー監督、1963年)、『三十九夜』(アルフレッド・ヒッチコック監督、1935年)を鑑賞。ビリー・ワイルダー大好き。そしてどうしても聞こえてくるのは「あなただけ今晩は、悲しみよこんにちは、そして武器よさらば」。映画のおともは、ベルンのミルフィユと珈琲。

今週は、ラーナー・ダスグプタ『ソロ』(西田英恵訳、白水社)を読み終えた。小説を読む歓びにたっぷり浸った。