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Monday, February 26

筒井清忠『戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道』(中公新書)を読む。

田中内閣は、一般に言われるように張作霖爆殺事件だけが原因で崩壊したのではない。張作霖爆殺事件は諸要因の一つであり、またその処理に際して昭和天皇は、後年東京裁判対策のために自ら語ったメモにあるように個人的意思で行ったのではなく、宮中のアドヴァイザーに相談しつつ田中を叱責したのであり、広い意味では宮中の力は大きなものなのであった。
さらに宮中に近い貴族院と新聞世論もその背後にあった。田中内閣の倒壊とは、天皇・宮中・貴族院と新聞世論との合体した力が政党内閣を倒したということである。しかし、「腐敗した」内閣であっても政党内閣は野党によって倒されるのが健全な議会政治の道なのであり、これは不健全な事態である。「政党外の超越的存在・勢力とメディア世論の結合」という内閣打倒の枠組みがいったんできると、「政党外の超越的存在・勢力」が入れ替わることにより、それと「メディア世論の結合」による政党政治の崩壊が起きやすくなるからである。実際。後の章で見るように「軍部」「官僚」「近衛文麿」などと形を変えてそれは再生されていき、政党政治は破壊されることになるのである。

Tuesday, February 27

松岡洋右のポピュリズム外交を手厳しく批判する筒井清忠『戦前日本のポピュリズム』(中公新書)を読み終えたあとに選んだつぎの本は、「松岡に甘い」加藤陽子による『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)。こちらは再読。

Wednesday, February 28

ベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが監督した『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』(2104年)を見る。映画としては洗練されているとは言い難い荒削りな仕あがりだけど、憎めないキュートな作品。

Friday, March 2

清沢洌『暗黒日記 1942‐1945』(山本義彦/編、岩波文庫)を再読する。これまで培った教養と外部から得られる情報とを掛け合わせて新聞を批判的に読むという、新聞を読むひとつの理想的な姿がここにある。

Saturday, March 3

廣松渉『〈近代の超克〉論 昭和思想史への一視角』(講談社学術文庫)を再読。

川崎市市民ミュージアムで「MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958」を鑑賞。みうらじゅんと山田五郎が一緒に展示をまわっている映像で、いい加減なことをもっともらしく澱みなく喋る山田五郎の話術に感心する。

Sunday, March 4

『サウルの息子』(ネメシュ・ラースロー監督、2015年)を見る。カンヌ国際映画祭でグランプリを獲り、アカデミー賞では外国語映画賞を受賞し、クロード・ランズマンやジョルジュ・ディディ=ユベルマンが賞賛したという映画だが、見て損をするような作品ではもちろんないけれども、それほどの感銘は受けず。