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Wednesday, October 4

田中純『歴史の地震計 アビ・ヴァールブルク『ムネモシュネ・アトラス』論』(東京大学出版会)を読了。

Thursday, October 5

ノーベル文学賞の受賞者がカズオ・イシグロに決まったとの報せ。ノーベル賞のなかで文学賞と平和賞は剣呑な議論を呼ぶだけなのでさっさと廃止したほうがよいと思うが、それはそれとして、カズオ・イシグロが受賞するのであれば村上春樹にあげない理由がよくわからない。ハルキ受賞に強く反対する者がスウェーデン・アカデミーのなかにいるのだろうか。

今年のノーベル賞の賞金は、ノーベル財団の財政状況が改善したとの理由で、100万SEK引き上げて900万SEKになるという。あいかわらず悧巧なノーベル財団の財テク術。

Friday, October 6

日本経済新聞の朝刊を読んだら、カズオ・イシグロのノーベル賞受賞の記事が、「文学賞、日本出身の英国人」との見出しで一面に掲げられ、総合面では「専門家の見方」として鴻巣友季子と藤井光の分析が掲載され、社会面には訳者の土屋政雄のインタビューや早川書房社長の記者会見が載り、挙げ句の果てにはカズオ・イシグロが通っていた長崎市にある幼稚園の担任のコメントまでが出てくる光景には呆れる。豊かな思考やら感受性やらを培う場として「文学」の存在をアピールしているくせに(それも幻想だと思うが)、ノーベル文学賞をめぐるお祭り騒ぎの頭の悪そうな感じはどうにかしたほうがいい。カズオ・イシグロが日本で生まれたというそれだけの理由で例年の報道より文学賞受賞者についての話題が過多なのが、頭の悪そうな感じを増幅させている。

だがそれにしても、このグローバライズされた地球にあって、人はなお、ノーベル賞受賞者の国籍がたまたま自分と同じであることに悦びを見出さずにはいられないほどはしたない存在なのだろうか。(蓮實重彦『随想』新潮社)

夜、『歌うつぐみがおりました』(オタール・イオセリアーニ監督、1970年)を見る。

Saturday, October 7

中央線沿線の街歩きを目論み、国立駅下車。開店時間にあわせて入った「ダバ☆クニタチ」でカレーを食べる。ほぼカレーを食べるためだけに降り立った国立。駅併設のショッピングモールにある「Tour de Brain」という店でマフラーを買った。三鷹駅に移動。三鷹市美術ギャラリーで「届かない場所 高松明日香展」を見る。今年の「VOCA展」の選評で画力の問題を指摘する向きがあったかと記憶するが、その論評に同感しつつも、なんとなく人を惹きつける絵を描く人だと思う。図録を買う。「パレード」を訪れて中古レコードを物色。Weather Report「Sweetnighter」とDaryl Hall & John Oates「Private Eyes」を買う。駅の反対口に向かい、開店間もない頃に訪れて以来となる「古本 水中書店」へ。飯島耕一『港町 魂の皮膚の破れるところ』(白水社)を買う。荻窪駅に移動。ひさかたぶりの「ささま書店」。パスカル『パンセ』(前田陽一・由木康/訳、中公文庫)と山下肇『ドイツ・ユダヤ精神史 ゲットーからヨーロッパへ』(講談社学術文庫)を買う。高円寺駅に移動。暮らし系の道具や雑貨の店「cotogoto」に立ち寄って買いもの。当初予定していた西荻窪駅下車は疲れたので端折った。本日の移動中の読書は、魯迅『阿Q正伝・狂人日記』(竹内好/訳、岩波文庫)。

Sunday, October 8

鎌倉へ。絶好の行楽日和といえる好天で、鎌倉は大変なことになっているだろうと思ったら予想どおり大変なことになっていた。人だらけ。報国寺と旧華頂宮邸をめぐり、左可井で昼食。穴子丼と鎌倉ビール。鎌倉駅近辺にバスで戻って、ジャム専門店「Romi-Unie Confiture」で買いもの。かまくらブックフェスタに立ち寄ってから稲村ヶ崎へ。江ノ電の混雑に辟易する。古道具店「R antiques」を覘いてから海岸を歩く。海をのぞむ「Restaurant MAIN」でコロナビールを飲んで休憩。鎌倉駅に戻る。ふたたび江ノ電の混雑に辟易する。夕食は移転後はじめての訪問となる「Osteria Comacina」にて。