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Monday, August 28

カール・ヤスパース『戦争の罪を問う』(橋本文夫/訳、平凡社ライブラリー)を再読する。

Tuesday, August 29

ロヒンギャ問題の対応で晩節を汚している感のあるアウンサンスーチーだが、彼女がずっと軟禁状態であったならばその「名声」はずっと保持されただろうというのは、なかなかの皮肉である。

Wednesday, August 30

『図書』9月号(岩波書店)で新刊案内を確認すると、梨木香歩と師岡カリーマ・エルサムニーの往復書簡が単行本として刊行される旨とあわせて、木寺紀雄の撮影した梨木香歩の姿が載っている。梨木香歩の相貌をはじめて見た。

Thursday, August 31

岩波文庫が創刊90年ということで岩波書店が積極的に関連フェアをやっているが、岩波文庫で思い出すのは『季刊思潮』誌上でおこなわれた浅田彰・柄谷行人・蓮實重彦・三浦雅士による座談会のことで、つぎのようなやりとりが繰り広げられている。

三浦 円本もそうだけど、大衆化現象に関してもう一言いっておくべきなのは、岩波書店の基盤というのもまさに同じものだ思うんですよね。
蓮實 そう、岩波文庫は昭和二年ですよね。
浅田 昭和十年頃に川端康成が純文学の敵は岩波文庫だと言ったという逸話があるでしょう。つまり岩波文庫というのは大衆化ということなんですね。
柄谷 それは岩波書店が知っておくべきことだ(笑)。
(『近代日本の批評Ⅰ 昭和篇[上]』講談社文芸文庫)

上記のくだりをよく憶えているのは、このあとみんなで寄ってたかって三木清をボロクソに叩いているからで、三木清の叩かれっぷりがあまりの叩かれっぷりでとても印象ぶかい。

三浦 三木清が書いたと言われている岩波文庫の発刊の辞は、大衆化現象に関する言及でしょう。
浅田 しかもそれを大正教養主義で糊塗しようとした。それはいまの岩波書店にも継承されているけれどね。とにかく、三木清のは、マルクス主義も大衆文化も大正教養主義に包み込んでしまうという最悪のパターンですね。
柄谷 最悪だと思う。小林も三木についてボロクソにやっつけている。この人は唯物論じゃないよ。
浅田 ないです。解釈学ですよ。
三浦 さっきの蓮實さんの文脈で言えば、林達夫とか戸坂潤の場合はかなりしっかりしているように見えるわけね。三木は全然そうじゃない。
浅田 いま名前が挙がった林達夫にしても戸坂潤にしても、大正教養主義の延長ではあるにせよ、そのなかでしかし三〇年代の諸問題を深刻に受けとめて、ある種ドグマティックになったり解釈学批判=イデオロギー批判をしたりして頑張っているのに、三木清はすべてを「人間の顔をしたマルクス主義」に回収してしまうというのんきなことをやっている。
三浦 シェストフに関しても、河上徹太郎はぼくは全然だめなんじゃないかと思うんだけど。三木清のシェストフに関する言及も、ぼくはほとんどこれはひどいなという感じがする。やっぱり亀井勝一郎とか、保田與重郎とかああいう連中のほうが読んでて面白い。切り込んでくるというか、それなりに読ませるという気がするけれど、それに比べると本当に三木清は表面的だね。
蓮實 亀井勝一郎も、戸坂潤もまあそうかもしれないけれど、書かれている内容というより、その言説のあり方で魅きつけるということを体得しちゃった世代ですよ。「意匠」がひとを読むことへ向かわせることを体得した最初の世代なんです。そのころから写真が出始めるわけでしょ。フランスから帰った東郷青児が最初の個展のポスターに自分の肖像写真を使ったってことは有名ですが、要するにイメージの増幅作用というのを彼らはほとんど意識的に活用していますね。『文学界』のほうはそれをやってないんだ、むしろ。
柄谷 昭和八年の転向、プロレタリア文学の壊滅のあとにシェストフ的不安とかシェストフ的現象というのがあった。中野重治がそれを嘲笑しているけど、ほんとにそう思う。
浅田 この連中は芥川龍之介ほどにも不安がっていない、と。
柄谷 それの中心が三木清でしょ。

Friday, September 1

東京オリンピックの開会式にあたる2020年7月24日を祝日とする祝日法改正案が国会に提出されるという。交通規制や警備が必要となるためとその理由が説明されているが、であるならば、開会式だけといわず閉会式も祝日にしてもらいたいし、なんならオリンピックの期間中ずっと祝日にしてもらって構わない。その期間に東京を離れて旅行に行ける。

Saturday, September 2

昼すぎ、原宿から表参道を歩いてエスパス ルイ・ヴィトン東京へ。ダン・フレイヴィンの展覧会を見る。散歩がてらにキャットストリートを歩いて渋谷へ。渋谷から恵比寿に山手線で移動して、東京都写真美術館で「TOPコレクション 平成をスクロールする 夏季 コミュニケーションと孤独」と「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017」と「エクスパンテッド・シネマ再考」を見てまわる。夜、恵比寿にて夕食。恵比寿にはたくさんの飲食店があるので開拓したい気持ちはあるものの、結局Rue Favartに来てしまう。