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Monday, May 16

蓮實重彦が三島賞の受賞会見で「まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております」と述べたという報道記事を読んで、これはエンタメの匂いがするぞと早速ニコニコ動画で会見の模様を視聴したところ、映像で確認しないと意味のない代物が展開されていた。終始不機嫌な蓮實重彦と凡庸な質問を浴びせる記者とのやりとりは、意地の悪い教師と愚鈍な生徒たちという教育的光景の戯画のように見える。会見の最後のほうで、今回の小説「伯爵夫人」にはいくつかのきっかけがあったとして瀬川昌久の話をするのだが [1]、あなた、つい今しがた小説執筆のきっかけは「ない」と強い口調で断定したじゃあないかと、言っていることの矛盾を指摘する記者があらわれてもよさそうなものだが、出現せず。その矛盾と横柄な態度に対して、偉そうにすんなと持参したノートパソコンなりを怒りのあまり壇上に向かって投げつける記者があらわれて、三島賞初の傷害事件発生というさらなるエンタメ度の上昇が期待されるも、出現せず。教師と生徒たちという構図のまま、会見は終わった。

朝食、トースト、ブルーベリージャム、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、浅蜊ときのこのバターパスタ、蛸とトマトとサニーレタスのサラダ、バゲット、赤ワイン。

茨城県南部で大きな地震。

Tuesday, May 17

前田裕之『ドキュメント 銀行 金融再編の20年史 1995-2015』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を読了。バブル崩壊後の日本の銀行の変遷について知る。

朝食、きゅうりと紫玉葱のベーコントマトピザトースト、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、白米、茗荷とかぶの葉の味噌汁、焼き茄子、豚肉キムチ、かぶと鰹節のサラダ、麦酒。

夜、鴻池朋子『焚書 World of Wonder』(羽鳥書店)を読む。

Wednesday, May 18

通勤の読書に江利川春雄『英語と日本軍 知られざる外国語教育史』(NHK出版)を読む。海軍機関学校の英語教師だった芥川龍之介が、長期入院で退学処分になりそうだった教え子を、教頭を説得して救うなど意外と学生想いの教師だったというのは知らなかった。

朝食、目玉焼きとかいわれ、トースト、ブルーベリージャム、珈琲。昼食、弁当。夜、牛肉のステーキ、トマトとほうれん草のコンソメスープ、新玉葱とサニーレタスのサラダ、バタール、赤ワイン。

いしいひさいち『鏡の国の戦争』(潮出版社)を再読。こんな名著が絶版とは何事。

Thursday, May 19

東京都知事の舛添要一による公費の私的利用が話題になっているが、舛添要一がせこいなんていうのは当然のことであって、もしも聖人君子のような人柄だったら相貌がねずみ男にそっくりという彼の唯一の長所がまったく生きない。

朝食、目玉焼き、ソーセージとほうれん草のグリル、バタール、珈琲。昼食、弁当。夕食、鶏肉と大根と長葱のうどん、麦酒。

夜、マーク・マゾワー『暗黒の大陸 ヨーロッパの20世紀』(中田瑞穂・網谷龍介/訳、未来社)を読む。

Friday, May 20

iPadでエコノミスト誌を読む。毎度見慣れない英単語のでてくるエコノミスト誌だが、今週の特集に抗生物質についての記事があって、tetracycline(テトラサイクリン)とかfluoroquinolone(フルオロキノロン)とか辞書を引かないとわからないを超えて、辞書を引いてもわからない単語が乱舞する。

朝食、トースト、ミニトマト、パプリカのピクルス、茹で卵、珈琲。昼食、弁当。夕食、白米、キャベツとわかめの味噌汁、卵焼き、こんにゃくのピリ辛炒め、ほっけ、大根おろしと茗荷、冷奴、ミニトマト、麦酒。

Saturday, May 21

朝早く近所のスーパーで食材の調達ののち、来週のお弁当用のつくりおきを怒濤の調理で一挙に仕上げる。

前田英樹『小津安二郎の喜び』(講談社)を読む。小津安二郎について論考として仕立てるのであれば蓮實重彦の存在を回避するわけにはいかないと思うが、前田英樹の小津論は蓮實重彦を無視しており、それは読み進めていると意図的に無視している、つまりは蓮實重彦という固有名詞を登場させないようにしている作意が窺えるのだけれど、あんまりうまくはないなあと思ってしまうのは、そのての「無視」が抜群に巧みなのが蓮實重彦だからだ。

朝食、目玉焼き、ソーセージとピーマンのグリル、バタールとパテ、珈琲。昼食、ベーコンサラダサンド、珈琲。夕食、美登利寿司・梅丘本店にて。

Sunday, May 22

今月号でKIKIが表紙を飾るのは最後だという『OZ magazine』(スターツ出版)の特集がピクニックで、掲載されている商品情報にある折りたたみ式のローチェアを買ってみたのだが、これが抜群に座り心地がよくて、ブランケットの上にずっと寝っ転がっていることからくるピクニック後のどっとでる疲労感から解放されて [2]、大変快適なピクニックが可能となる。座って読書もできる。ただ結構重いので、これを担いで代々木公園までいくとだんだん肩が痛くなってくるのは問題ではあるが。持参したサンドイッチとサラダと赤ワインの昼食ののち、しばし読書。越川芳明『あっけらかんの国 キューバ 革命と宗教のあいだを旅して』(猿江商會)と沼野充義『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』(講談社)を読む。

『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』に「悲劇か、喜劇か?」という章があり、チェーホフがどうして『桜の園』や『かもめ』を「喜劇」と銘打ったのか問題について、沼野充義による解答が登場かとわくわくしながら読んでみると、つぎのように書いてある。

「喜劇」をめぐって、言葉の意味の吟味から文芸学的・哲学的アプローチまで、あれこれ検討をしてみたが、チェーホフが自分の「真面目な」戯曲をどうして「喜劇」とわざわざ呼んだのかについては、答えはまったく出ていない。率直なところ、この問題についてはもう30年以上意識して、折に触れて考えてはきたものの、いまだ自分なりの気の利いた解答を持ち合わせているわけではないのだが、・・・・・・

ないのか!

朝食、ヨーグルト、珈琲。夕食、野菜と牛肉のカレー、りんご、麦酒。

  1. 会見では瀬川昌久という固有名詞を出さずに「現在93歳になられる日本の優れたジャズ評論家」という言いかたをしている。ここで発言している内容については、『瀬川昌久自選著作集1954-2014 チャーリー・パーカーとビッグ・バンドと私』(河出書房新社)所収の大谷能生を司会に据えたふたりの対談に詳しい。 []
  2. 寝っ転がっているだけなのに疲れるのはなぜだ。 []