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Thursday, November 26

朝方、音を立てて雨が降る。Twitterを開いたら原節子の訃報。夕べ報道があったらしい。Twitterもインターネットも見ずに寝たから知らなかった。さすがにこれはショックで、ついに…、という感じだ。今年、古書ほうろうで買った写真集『写真集 原節子』(マガジンハウス)を引っ張り出す。一日中、Twitterでみんなの原節子に対するツイートをたくさん読んでいたら、ますますしみじみ寂しくなってしまった。きょうはだいぶ寒くて、ヒートテックを着て就寝。

Saturday, November 28

朝一番で田園調布へ。宝来公園から多摩川台公園まで歩く。多摩川台公園から多摩川をのぞむ。素晴らしい晴天で、富士山も見えた! 河川敷におりてしばらく散歩。ほどよい人出で気持ちいい。水辺は清々してよい。お昼になったので、駅前のPASTA R1でサルシッチャパスタ、サラダ、珈琲。美味しかった。お店でパスタを食べるときは大体フォークとスプーンが用意されるけれど、このお店はフォークだけでスプーンがなかった。それがなんとなくよかった。しかしスプーンがないとソースがやたらはねる、ということがわかった。

電車を乗り継いで六本木へ。オオタファインアーツで「チェン・ウェイ ナイト・パリ」、ワコウ・ワークス・オブ・アートで「ゲルハルト・リヒター Painting」、YKG Galleryで「藤田はるか winter」、Zen Foto Galleryで「北井一夫 抵抗 – カラー補足版 – 」を観る。大江戸線に乗って森下へ。久しぶりの古書ドリスをはじめ、界隈の古本屋をまわる。ANDO GALLERYで「リカルダ・ロッガン SPOT」を観る。きょう観た展示はどれも良かったが(まあ、大体いつもどれも良いのだが)、好みで言うと藤田はるかがとりわけよかった。この作者はまったく知らなかったけれど、写真集、ほしいなと思った。鑑賞者がわたしたちしかいなかったANDO GALLERYのはす向かいに新しくできた珈琲屋に行こうとしたけれど、こちらは大混雑で断念。みんなどこから湧いてくるんだ? 美術館とギャラリーに来た人? 古本屋に来た人? 地元の人? ママ友会とかやってるの? 不可解だ!(八つ当たり)

Sunday, November 29

石井桃子『新編 子どもの図書館』(岩波現代文庫)読了。子どものための私設図書室「かつら文庫」の軌跡を追うことに興味があったけれど、子どもたちが借りた本を、子どもたちが自宅でいつどのように読んだか、がドキュメント的に記録されており、いやがうえにも我が身を重ねてしまったりして、その部分が実に面白かった。ラストはなんと40年後のかつら文庫の同窓会ということで、石井さんが同窓会出席者のみんなに写真を送る手紙でこの本が締めくくられていて、ぐっとくる。あとがきで松岡亨子が、石井さんたちが試行錯誤しながら道をつけていった児童のための図書館教育が、いまでは施設や規則など見違えるほどに発展したけど、内実は残念ながら充実したとは言い難い、というようなことを書いていて、たしかにそうだろうなぁ、と思う。昨今の、図書館事業を稚拙な民間企業に任せた挙句の呆れた惨状を目にしているからなおさら。

原節子追悼ということで、数年ぶりに『山の音』(成瀬巳喜男監督、1954年)を観直す。『山の音』はわたしがいままで映画館で観終わった後、いちばん涙を流した作品だ。でもラストシーンを観て号泣するわたしはもういない、いまは冷静に観ることができるようになった。それでもやはり、あのラストシーンはこの上なく素晴らしい。「ビスタの苦心がしてあって奥行きが深く見えるんですって」という原節子の声、哀しみのなかの、さりげない会話。