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Monday, December 21

ハプスブルク家についての文献を読もうと思って図書館で借りてきた本を机に積んで、積んだ光景を眺めてきょうは寝る。

朝、たまごサンド、珈琲。
昼、弁当。
夜、白米、ほうれん草と長葱の味噌汁、卵焼きとかいわれ、キムチと豆腐、小松菜と人参の白だし炒め、豚肉の胡椒炒め、ビール。

Tuesday, December 22

会社からの帰り道、クリスマスに食されるドイツの菓子パン、シュトレンを買う。はじめて食べるシュトレン。

毎度KIKIが表紙を飾る情報誌『OZmagazine』は認めるとしても、ケータイ小説ブームの火付け役であるスターツ出版など良識的な読書家たちは完全に無視してかかっていると推測されるが、そのスターツが発行する都内の地下鉄各駅に置かれたフリーペーパー『メトロミニッツ』について、流行りの飲食店紹介を主とするごく普通の冊子だとの認識だったのに「どうも様子がおかしい」という話になったのは今年の6月号あたりでのことだ。「地中海料理という、暮らし方。」と題された特集に目をとおすと、飲食店紹介がメインなのは変わらないのだが、驚くのは地中海料理を説明するのに地中海の歴史をぎっちりページを埋める文字数で説明していることである。よく読めば一般向けの啓蒙的文章が載っているだけといえばだけなのだが、しかしフリーペーパーでそこまでのエネルギーをそそぐ意図がまるでわからない。

やがて古代ローマ帝国は約200年の平和な時を過ごした後、西ローマ帝国と東ローマ帝国(ビザンツ帝国)に分裂します。しかし、西ローマ帝国は100年も経たぬうちにゲルマン人の侵略を許し、滅亡してしまいます。その侵略は右の地図のように、西ローマの領地内に、5世紀前半にはイベリア半島に西ゴート王国が、北アフリカにはヴァンダル王国が、他にもフランク王国や東ゴート王国などのゲルマン人による新国家が次々と誕生。476年、西ローマ帝国は滅亡へと導かれます。その時が「中世」の幕開けとされることが多く、ヨーロッパ混迷の時代の始まりです。

広告収入で成立する商業の匂いたっぷりのフリーペーパーに記される内容だろうかこれは。雑誌全体をじっくり読むと、ところどころ推敲の余地のある文章構成に粗さを感じるものの、それにしても地中海料理を紹介するのに世界史の総復習をやる意味がわからない。フリーペーパーで。

ローマは「パンとサーカスの都」とよく言われます。地中海沿岸全域を統治するまでの国家に成長する間に、敵国から搾り取った富がローマ市にはどんどん入ってきました。しかも、その富は市民に分けられ、ローマ市民はお金がなくても食べるには困りませんでした。穀物の配給制度があり(パン)、コロッセオで行われる剣闘士競技や競馬などの娯楽(サーカス)を市民はタダで楽しむことができたのです。一方、貴族の宴会と言えば、贅を極めた料理を夕方4時頃から夜中まで延々と食べ続け、食べるために「吐く」という文化も備えていました。牡蠣、ウニ、伊勢海老なども珍重されていたそうです。養殖も盛んで、エスカルゴを東京ドームくらいの広さの水槽で育てていたことも。そんな食事の席では、やはりワインが欠かせません。少なくとも80種類の国産ワインがあり、それを水割りにして飲むのが普通でした。

「吐く」文化があるなんてうっかり勉強になる。ところでこの文章、参考文献がまったく掲載されていないのが気になるが。

朝、くるみパン、茹で卵、りんご、珈琲。
昼、弁当。
夜、ポークシチュー、バゲット、サラダ、シュトレン、赤ワイン。

Wednesday, December 23

キリスト教圏でないのをいいことに降誕祭の前に日本の祝日を利用してのクリスマスパーティー。新宿伊勢丹の地下食品売場に向かう。bigoteでディアボラチキン、ローストポテト、フォカッチャを、Raibleでサーモントラウトとクリームチーズのディップを、RF1でサラダを、資生堂パーラーでケーキを買う。すごい人出で伊勢丹は戦場だった。華やいだ食卓を前に赤ワインをあける。日本の暦からすれば、本日の乾杯はまるで今上天皇の誕生日を祝っているかのようであるが、しかしテーブルにならぶのはどれもが西洋料理。食事をしながらジョナス・メカスの『Walden』(1969年)のDVDを流す。本日23日はメカスの誕生日であるとの報せがtwitterで流れてくる。日本語版Wikipediaもメカスの誕生日は23日となっている。しかし英語版Wikipediaの注釈によるとパスポートには23日と記載されているが実際には24日とのこと。ともかく、キリストでも天皇でもなく、ジョナス・メカスの誕生日を祝いながら御馳走を口にはこぶ。

朝、シチューとバゲット、シュトレン、珈琲。
昼、ディアボラチキン、ローストポテト、フォカッチャ 、サーモントラウトとクリームチーズのディップ、サラダ、ケーキ、シュトレン、赤ワイン。
夜、鶏肉とトマトとほうれん草のグリル、フォカッチャ 、サラダ、ケーキ、赤ワイン。

Thursday, December 24

会社帰りに本日もまた伊勢丹という名の戦場に赴く。前日が戦場だなんて発言を撤回したいくらい大変な状況になっていた。ケーキ売場には「最後尾」の看板があふれる。「最後尾」はいいとして「中継地点」という看板も掲げてあって、恐ろしい。異様な活況を呈する売場でささっとチキンだけを買って、這々の態で帰宅。

朝、くるみパン、ブルーベリージャム、茹で卵、珈琲。
昼、弁当。
夜、チキン、トマトとオニオンと青菜のグリル、オニオンスープ、バゲット、シュトレン、ベルンのミルフィユ、スパークリングワイン。

Friday, December 25

録音しておいたJ-WAVEの番組「沢木耕太郎 MIDNIGHT EXPRESS 天涯へ」を聴く。作家とは思えないまとまりのない話を毎年楽しみにして聴いている。沢木耕太郎については、まず好き嫌いでわかれ、好きのなかでも今も好きと昔好きだったにわかれ、それはおそらく作家の側ではなく読者の側の変遷による。沢木耕太郎自身は、むかしからほとんど変わっていないように思える。ところでこの人の幅広い交友関係はいつも謎で、番組を聴いていたら、このあいだユニクロの柳井正と会食をしたとさらっと語っていて、いったいどういうつながりで食事をすることになるのか。

今年最後のお弁当を会社に持参。来週の月曜日も出勤するが、納会を無視して午前休で帰る予定。クリスマス当日の朝昼晩の食事は、豪勢な洋食つづきて胃に負担がかかってきたのもあって、反クリスマスの様相をおびた。

朝、たまごハムサンド、珈琲。
昼、弁当。
夜、たまごうどん、キムチ、熱燗。

Saturday, December 26

『& Premium』(マガジンハウス)の特集「ふだんの食卓。」を読んだら、細川亜衣が「目玉焼き」と題するシンプルにもほどがあるレシピを紹介している。

〈材料〉
卵・・・人数分
オリーブオイル、粗塩・・・各適量
〈作り方〉
1 グリルパンを熱してオリーブオイルをひく。
2 卵を割り、好みの加減に焼いたら火から下ろし、粗塩をふる。

コメントに「新鮮な卵を使用するのが一番のポイント」とあるのだが、そりゃそうだろうよとしか言いようのないレシピだ。しかし、細川亜衣は以前から喧嘩を売っているように思えなくもないレシピを成立させてしまう人で、2009年刊行の『イタリア料理の本 2』(アノニマ・スタジオ)を見返してみると、つぎのようなレシピが載っているのだった。

・さくらんぼう
・氷

氷の上にさくらんぼうをのせて供する。

昼食を済ませてから外出。恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで「ニァイズ」を入手し、G/P galleryで「港千尋 HOLE EARTH CATALOG」、MEMで「アントワン・ダガタ Aithō」、地下室に降りて「梅津庸一 ラムからマトン」をそれぞれ鑑賞。併設の書店で尾仲浩二『あの頃、東京で・・』(KAIDO BOOKS)を買う。恵比寿駅に戻る途中、ひいらぎでたい焼きを食べ、アトレのCUiSiNE HABiTSで徳利とお猪口を購入。山手線で品川に移動し、キヤノンギャラリーで「野口里佳 夜の星へ」を見る。ふたたび山手線で有楽町まで。ギャラリー小柳で「野口里佳 鳥の町」、ポーラミュージアムアネックスで「原田美砂 HATS OFF!」、シャネルネクサスホールで「石川直樹 K2」、ソニーイメージングギャラリーで「ないとうようこ In between」を遊覧。銀座のシャネルはギャラリーへ向かう入口をしばしば変えるのだが、これはシャネルの製品を買う気のないギャラリーへ向かう者たちにトラップを仕掛けているのだと考えられる。

朝、バタール、ブルーベリージャム、珈琲。
昼、牛肉ステーキ、ミニトマト、しらすサラダ、バゲット、赤ワイン。
夜、ちよだ鮨、青梗菜と葱のお吸いもの、熱燗。

Sunday, December 27

昨晩日本酒を飲みすぎて二日酔い気味なので、ドラックストアで買ったソルマックを飲み干す。

梨木香歩の連載(師岡カリーマ・エルサムニーとの往復書簡)がはじまった『図書』1月号(岩波書店)を読み、図書館で借りてきた石川美子『青のパティニール 最初の風景画家』、河野純一『ハプスブルク三都物語』、浅野和生『ヨーロッパの中世美術』、江村洋『ハプスブルク家』、岡田淳子『ハプスブルク家の食卓』をそれぞれつまみ読み。

渋谷のツタヤで年末年始に見る映画を借りてから、寒風吹きすさぶ天王洲アイルで下車し、T.Y.HARBORへ。夜の天王洲アイル周辺はほとんど人影ないのだがT.Y.HARBORは賑わっている。不思議な場所。今年一年の読書やアートを振り返りながら、食べて飲む。

朝、ヨーグルト、珈琲。
昼、しらすのおかゆ、緑茶。
夜、T.Y.HARBORにて。